覚悟
あらすじ・題名を変更しました。
旧題「数こそ力なり!! おかしくなった世界の魔物使い」
野球会場に捕縛された人たち全員の救出が完了した。
ただ全員が生きていた訳ではなく、亡くなっている人もチラホラいた。
置いておいても蟻の餌にされてしまうのでアイテムボックスにしまい、時が来たら埋葬しよう。
最悪アンデットになってしまう恐れもあり、埋葬は必須だ。
こうして野球会場を後にしてキャンプ地に帰還した。
帰還してビックリしたのが給仕をしていたのがゴブリンだったのだ。
セバスチャンはゴブリンメイジ、デュラハンと共に料理を作っていた。
結構広い川のほとりが人で一杯になってしまった。
まぁここは一時的な拠点だから問題は無いだろう。
本拠地は近くの学校である。
モンスターはおらず、安全の為にアンデット部隊を数部隊置いている。
ここで身体を洗って新しい服に着替えてもらうのだ。
すぐにも行動してもらいたかったが、思った以上に疲労困憊のようで飯を食べて眠っている人がほとんどだ。
泣きながら飯を食べている人もいる。
ざっと鑑定を使ってスキルを持っている人がいないかを確認する。
結果はまさかのゼロ。
頭を抱えてしまった。
救出する口実の為に戦力となる人間がいると思っていたが、まさか一人もいないとは。
レベルが1でも良いから居て欲しかったよ。
幸先不安である。
しばらくしてゴブリンが食器を回収し川で洗っている。
捨ててもよかったが、洗ってくれるのならそれに越したことはない。
救助された人たちはみんな眠ってしまった。
まぁすぐにどうこうって訳にはいかないか。
救助民が学校に向かうのは二日経ったお昼だ。
一応は立って歩くことも出来る程度には回復しただろう。
彼らにはグラウンドに一旦集まってもらった。
理由は簡単である。
これ以上の恵みには対価が必要であると知ってもらう為である。
約1000人の食料は馬鹿にならず、たくさんあるとは言ってもこのままでは減る一方だ。
やはり労働と対価はセットではなくてはならないのだと、初めて思った。
俺は朝礼台に乗ってメガホンで声を大きくして話す。
「これからアナタたちに選択をして頂きます」
ザワザワが大きいな。
「俺の部下となり、俺の命令を聞き、俺の元で働くことを承知するのなら校舎の中へお進みください。拒否される方はここから去って下さい」
ザワザワがガヤガヤと大きくなった。
「あんたは俺たちを助けに来たんじゃないのか!」
「去れってどこに行けばいいのよ!」
「そんな横暴が許されるか!」
「お前は何様だ!」
そんな声があっちこっちからする。
予想通りだとはいえ、さすがに現状を理解してなさ過ぎるだろ。
ガヤは大きくなり、俺の声もかき消してしまう。
「黙れ」
命令を実行し、強制的に黙らした。
みんな何が起こっているのか戸惑っているようだ。
「お前らは世界がどうなっているのか理解していないのか?」
静かになって話しやすくなった。
「化け物共が跋扈した世界になり、人間の平和など土台から覆されて踏みにじられたのにお前らはまだそんな甘いことを抜かして生きていけるはずもないだろうが」
何も理解していないのなら事実を突きつけてやろう。
「俺がお前らを助ける前にゾンビと戦っていた。人間が死んで魔物化したモノと考えてくれ」
あれも数日前か。
結構昔の気がするけど。
「動く死体であるゾンビを俺は3万体以上も殺した」
正確には大半を仲間にしたのだが、仲間にして合成したりといろいろやっている。
殺したと言って良いだろう。
「夜に始まった救済プログラムだが、夜明までで3万人以上が死んでいるだぞ? その意味が分かるか?」
そう。
注目すべきは死者数でなく、時間だ。
「こんな世界になって9日も経っているが、生きている人がどの程度いるか考えたことはあるか?」
俺がいなければ助けたこの人たちも生きてはいないだろう。
「はっきり言うが戦えない者は要らない。使えない者も要らない。俺の考えが正しいとは俺自身も思ってはいない。だから選択しろ」
俺は一体のゾンビを出した。
ゾンビは棒立ちし、頭を垂らしてしる。
「戦う意思のあるヤツは武器を手に取ってこいつを殺せ。キレイごとを抜かすヤツは自分の意思を貫けばいい。否定もしない」
俺はゾンビの前に鉄バットを数本投げ捨てた。
「お前ら全員を仲間から除隊する」
俺はスキルで仲間にした人間全員を除隊した。
口がきけるようになったのに誰も何も発しない。
動きを見せたのは一人の女の子。
たしか俺が助けに来たことを伝えたら泣き出した子だ。
「私は死にたくない。だから戦う道を選ぶ」
そう言ってバット持ち、ゾンビの頭に叩き込んだ。
一度で即死とまではいかず、何度も頭に振りかぶる。
服がゾンビの体液だらけになろうが、何度も何度も。
頭の原型が無くなるまで叩きつけるとバットを投げ捨てた。
「これで仲間にしてくれるの?」
「あぁ、仲間になってくれるか?」
「もちろん。よろしく」
そう言って握手をした。
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