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私たちは

あらすじ・題名を変更しました。

旧題「数こそ力なり!! おかしくなった世界の魔物使い」

 私はここで死ぬのだろう。

 空腹で身体を動かすことも難しい。


 一週間前の深夜12時に突如として『救済プログラム』なるモノが始まり、私たちの日常は崩壊した。

 何も出来なかった。


 巨大なうねりの如く家にデカい蟻が大量に押し寄せ、私たち家族をここに運んだ。

 当然抵抗した。


 私の家は剣術の道場で幼少の頃から稽古をしているし、高校のインターハイでも優勝した事もある。


 だけど彼らの身体は硬くて攻撃が通らなかった。

 巨大な顎で胴を挟まれては抵抗も出来ない。


 なされるがままだった。

 最初の数日は恐怖で頭がおかしくなりそうだった。


 周囲には私たちを監視するように大量の蟻がいる。

 いつ殺されるのか分からない時間が延々と続き、あいつらの足音に怯えて寝るのもままない。


 不思議なこともあった。

 蟻は私たちに食料品を持ってくるのだ。

 最低限死なないように気を使っているのだろうか。


 生モノも多く、適当に持ってきているのが分かった。

 蟻に優しさなどはない。


 数百人が一斉に脱出を謀ったことがあった。

 確か捕まって四日が経っていたと思う。


 一人も外に出れずに半分が死んだ。

 1匹の蟻も倒さずに逃げることを優先したようだ。


 いや、違う。

 彼らは戦いもしなかった。


 武器を持たず、ただ逃げるだけだった。

 殺されるのが分かっていたのに何でそんなことをするのか理解できなかった。


 私たちは全員助からない。

 なぜ分からないんだ。


 飲み物しか喉を通らなかったが、その飲み物さえ喉を通らなくなった。


 あぁ、餓死で死ねれば苦しまないかな。

 あの蟻に殺されるよりはマシだろう。


 早く死にたい。

 そう思って目を閉じた。


 だが、今日は少し違和感を覚えた。

 蟻の移動が多いのだ。


 カタカタと足音がすると眠るに眠れないんだ。

 目を開けるとそこにはおかしな光景があった。


 一人の男性が立っていたのだ。


 今この場で立つことが蟻たちにどんな意味を与えるのか知らない者などいない。


 なにより異常なのはこの者の表情が笑顔なのだ。


「安心するといい。助けにきた」


 その言葉は最初理解できなかった。

 頭の中で何度も反復し、理解できた。


 それを理解できた私の身体は震えが止まらず、涙が止まらずに声を上げて泣いてしまった。


――――――――


 女性を泣かせてしまった。

 俺のせいではない。


 恐怖から解放されて今まで我慢していた感情が溢れてしまったのだろう。

 そう思おう。


「お前ら、周囲の状況はどうだ?」

『ギシャギシャ』


 順調と言っているようだ。


 まさか戦闘もせず、ここを占拠出来るとは思わなかったな。

 蟻の統率の高さが仇になったってことか?


 昨日、一日かけて数多くの蟻を仲間にした。

 そいつらをバレないように行動させ、今日の朝にここの見張りと順次交代させた。


 俺の仲間になっている蟻とそうでない蟻の区別が出来ないらしい。

 あっさりとここを占拠出来た。


 野球会場の周囲を含め、俺の仲間になった蟻が警戒をしている。

 何かあれば連絡は来るし、襲ってきたらアンデット部隊を召喚するだけだ。


 さて、始めようか。


 メガホンを取り出し、大きな声でハキハキト喋る。


「皆さん! 助けに来ました!」


 隣で泣く女の子以外の音がしない。

 全員死んでいるじゃないか?


「あ、蟻がいるじゃないか」


 どこからかそんな声がする。

 アレが怖いのか。


 気の良い奴らだよ?

 まぁ冗談だが。


「彼らは私の仲間です。今、あなた達を守っているのが彼らです」


 ザワザワし始めた。


「現在、ここは安全です。あなた方は助かったのです!」


 ザワザワが大きくなっていく。


「ですがこの建物の外にはまだ数多く蟻がいます」


 ザワザワが小さくなった。

 面白いな。


「私の仲間になっていただければあなた方を安全な場所に移動できます。ですが仲間になっていただけないのらここに置いていきます。時間があまりなので速やかに考えて行動してください」


 みんな顔が引きつっている。

 置いて行かれたらどうなるか考えれば分かるもんな。


「仲間になる意思のある人は私の元に来てください。動けない方は後回しにします」


 結構スムーズに仲間にすることが出来た。

 喋ることも押すことも走ることもせずに他者を押しのけたりもせずにゆっくりと着実に移動を開始出来た。


 どうやらテイムは人にも有効らしい。

 ダメだったらここに置いておくしかなったから助かる。


 使役者のスキルでセバスチャンがいるキャンプ場に飛ばす。

 まぁキャンプ場とは言っても川のほとりなのだがな。


 俺もここに来る前に川に入って身体を洗った。

 ついでに仲間も入れた。


 あいつら臭いんだ。

 特にアンデット部隊。


 今ではフローラルな香りになっている。


 意外だったのがデュラハンの生身が意外にナイスバディーだったことだ。


 どうでもいいか。


 そこではセバスチャンが温かいご飯を作って待機し、周囲をアンデット部隊が安全を確保している。

 セバスチャンは人の姿をしているので問題ないだろう。


 問題があれば連絡があるはずだ。


 さて、動ける人は移動させたが、問題は動けない人たちだ。

 今だと十分な医療を受けられないからな~。


 ま、ここまでやって見捨てるのも後味が悪い。

 あっちに送るか。


 こうして半日をかけて人々を救出し、こちらの損害はなし。

 蟻を300匹ほど仲間にしてむしろプラスだったりする。



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