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目覚め

あらすじ・題名を変更しました。

旧題「数こそ力なり!! おかしくなった世界の魔物使い」

 終電に揺られながらスマホでネット記事を読んでいるが頭には入っていない。

 仕事で体力と精神を酷使し過ぎて俺の脳は機能停止寸前だ。


 高校卒業後すぐに就職したのは東京のブラック企業だ。

 それを知ったのは入社してから半年経ってからである。


 まぁ金は貰えるからそれで良いと割り切った。

 使う時間は無いけど。


 電車内に人は皆無、顔を上げて外に目をやれば次々と過ぎる風景。


 あぁダメだ。

 眠い。


 ……っ。


『救済プログラムが開始されました』


 ……ん?


『ステージレベルを一段階上昇させます』


 ……何だって?


 何かアナウンスが流れている。

 駅に着いたかな?


 重いまぶたをこじ開けると同時に、電車がブレーキをかけて急停止した。


「おわぁ!?」


 座っていたがブレーキが急だったため身体がもっていかれてしまった。

 シートに倒れたので頭や身体にダメージは全くない。


 通勤で使うこの電車がこんな急ブレーキをするのとか入社五年で初めてだ。

 人でも飛び出して来たか?


「睡眠時間が……」


 自殺したいのなら人に迷惑をかけるなよ。

 何が嫌で自殺したのか分からんけど、死んでまで人に迷惑をかけるとはろくでもないな。


 睡眠不足と空腹とストレスでイライラしていると車内の電気が消えた。


 電気系統の故障か?

 ますます帰るのが遅くなるな。


 時間を確認しようとスマホを取り出す。


「ん?」


 表示された時刻は1100日00時00分。


 俺はこんな時間を設定した覚えがない。

 そもそも出来るのか知らん。


「てか圏外なんだが?」


 電波が届いていない。

 この辺の電波状態は良好だった。

 圏外になったことなど一度もないぞ。


「壊れたかな?」


 高校卒業と同じ時期に買ったスマホだからしょうがない。

 買い換えようと思ってたしな。


「復旧まだかな……」


 ふと外に目をやる。


「真っ暗だ。停電か?」


 これはまた大規模な停電だ。

 後ろも見たが明るい家は一つもない。


 はぁ……寝るか。


『ステージレベルの一段階上昇を終了。ステージレベル一になりました』

『続いてステージレベルを一段階上昇させます』

『ステージレベルの一段階上昇を終了。ステージレベル二になりました』

『続けてステージレベルを一段階上昇させます』

『ステージレベルの一段階上昇を終了。ステージレベル三になりました』

『ステージレベルの上昇を1100日後に再開します』

『カウントダウンが開始します』


――――――


 何やら物音がする。

 何かがぶつかる音だ。


「うっさいな……」


 ここはどこだ?


「あぁそうだ。電車だっけ」


 何時間寝たんだ?


 スマホを取り出すと画面には1099日19時間34分の文字が。


「そうだ。壊れてたんだった。連絡もできねぇ」


 脱力して座席に座ると同時に何かがぶつかる音がした。

 そういえばこの音で目を覚ましたんだ。


 やっと助けが来たか。

 そんな気持ちで音のする方に行くと誰かが電車の車体を棒のよなモノで殴っていた。


 電気が止まって開かないのか?

 近寄ってみると何やら喋っている。


「自分も開けるのを手伝います!」


 そう言って更に近づくと異変に気が付いた。


 外で電車を殴っていたのは人間では無かったのだ。


 身体は緑色をしていて牙のある口、醜悪な顔。

 身長は2メートルを超えている。


「ゴ、ゴブリン!?」


 いや、大きさからしてその上位種か!?


 何でこんな化け物がいるんだよ!


「に、逃げなきゃ……」


 腰が抜けてうまく移動できない。

 しかもどこに逃げれるんだ?

 外には化け物がいるんだぞ。

 逃げられる訳がない。


 反対側から下りて逃げられるか?

 この状態で?

 上手く走れもしないのにどうやって逃げるってんだ!


 スマホも壊れてつかえないし。


 突如ガラスが割れる音がした。


「ひぃいい!」


 ガラスの破片が俺に降り注ぐ。


 そして割れた窓から子供サイズのゴブリンが入って来た。

 いや、デカいゴブリンが小さいゴブリンを入れていた。


「ち、近づくな!」


 手で牽制をしても小さなゴブリンは笑いながら近づいてくる。

 数匹が一斉に俺に群がり、窓に引きずる。


 そして俺は電車の外に落とされた。


「かはっ!?」


 地面に背中から落ち、まともに呼吸ができない。


 逃げなくては。


 その一心で這いずるが、周囲には小さなゴブリンがたくさんいたのだ。


 助からない。

 殺される。

 死ぬ。


 デカいゴブリンが俺に一歩近づいた。


「はぁはぁはぁはぁ……」


 手が震え、足も震え、呼吸もままならず、それでもなお生きたくて逃げる。


 死にたくない。

 生きたい。

 命を。


「ギギギィ~~~」


 大きなゴブリンが笑っている。

 周囲の小さなゴブリンも笑っている。


 昔の記憶が走馬燈のように投影される。


 高校でイジメている奴らが俺に向けた目だ。

 誰も助けてくれない。


 笑って蔑むバカの集まり。


 死ぬ前に思い出すのがこんな記憶だと?


「ふ、ふざけんな!」


 クソ!

 笑いやがって!


 俺を笑って楽しみやがって!


 俺は手ごろな石を手に取って立ち上がった。


「ギッギッギッギ~~」


 何が面白いのか分からないが面白そうな声を上げて醜悪な顔を更に歪にさせている。


「ギャギャ」


 一匹の小さなゴブリンが目の前に立ちふさがった。

 まるでお前の相手は自分だと言わんばかりに。


「上等だよ!」


 そう言って俺は持っていた石を振り上げる。


 小さなゴブリンは余裕でそれを避ける。


 避けられるのは分かっていた。

 次にただがむしゃらに突進をかます。


 さすがに避けることも出来ずに揉みくちゃになるが、何とか俺がマウントを取り、手に持っている石で顔面を強打した。

 一発、二発と力の限り何度も降り下げた。


 そしていつの間にか小さなゴブリンが動かなくなっていた。


「はぁ……。はぁ……」


 呆然としていると突如声が聞こえた。


『モンスターを倒しました。経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』

『職業が変わりました』


 何だ、これは。


 混乱するさなか、周りにいたゴブリンが俺を取り押さえた。


「クソ!」


 油断した!


「ギギギ」


 大きなゴブリンの顔が怒りで真っ赤になっていた。


 仲間を殺されて怒っているのだろうか。

 だったら殺される前に助けてやればよかっただろう。


 大きなゴブリンは俺に近づき、棒を振り上げた。

 あれを食らったら流石に即死だな。


 悔しいな。

 あいつに一矢報いたかったのに。


「死ね! このデカブツ! 殺してやる! 誰かあいつを殺せ!」


 大きなゴブリンは俺の頭に棒を振り下ろした。


「はぁ?」


 だが、俺は死ななかった。


 何故なら俺は守られたのだ。

 俺を取り押さえていた小さなゴブリンに。

 

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