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パートナーは聖竜  作者: みるちゃん
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第1章


「・・・ん・・・もう朝か・・・。」


目が覚めてテレビをつけた。


「ワアアアアアーー。」


テレビをつけた瞬間、部屋中に大歓声が鳴り響いた。


彼女はこの世界で最も名を轟かせているスーパーアイドルである。しかし、彼女は普通の歌手ではない、普通のアイドルでもない。髪の毛は透き通ったピンク色で目は青く輝いていて、体は普通の人の3倍はある。肌はもふもふの真っ白な毛で覆われていて、大きな耳に四枚の美しい翼。そう、彼女は人間ではなくドラゴンであった。


「以上、人気No.1のフィアネちゃんでしたー。」


歌が終ると同時に、沢山の記者が彼女のところへと群がっていった。


ザワザワ・・・。


ここは、人間とドラゴンがお互い共存しあっている世界。

僕は今日、とある免許証を取りに行く日だった。ただの免許証ではないドラゴンとパートナーを組むことが出来る特別な免許証である。普通の人間なんかでは手に入らないものらしいが、何故かいきなり変なフードを被った男に素質があると言われ、推薦状を貰い、その試験を受ける事を決意した。なぜ僕が選ばれたのか? それを知るためでもあった。


「おーい、シィア、早く行こーう。」


「あ、おはよー、ディル。」


シィアとは僕の名前である。そして僕の名前を呼んだ彼の名前はディル。僕と同じ18歳の男の子で昔からの友達である。


彼は既に免許を持っていて、パートナーまでいる。これから僕が免許証を取りに行くのでそれについてきてくれるのである。


「シィア、もうあんまり時間ないよ?早く急がないと!」


「え?」


時計を見ると、残された時間はあと30分しかなかった。

シィアは急いでテレビを切ると、家を飛び出した。 すると、ディルの横には大きな黒いドラゴンが立っていた。


「・・・でか。」


「自転車じゃ遅いので、早くお乗りください。」


「あ、うん・・・。ありがとうノール。」


ノールとは、ディルのパートナーのドラゴンのことである。灰色のもふもふの毛と、鋭い爪と睨まれたら今にも食べられてしまいそうな...と迄は言わないが、キリッとした青い目をしており、忠実で優しく、ディルとはとても仲が良い。


「振り落とされないように気をつけくださいね。」


それにしても、いつみてもデカイ・・・ホントの事言うと、今にも食べられそうだ・・・。


「ん?。どうかしましたか?」


「いいや、何でもないよ。」


感づかれたかと思い、少しひやっとした。


「あはは、大丈夫ですよ。食べたりなんかしませんよー。」

(あ、気づかれてた・・・。)


シィアとディルはノールの背中に乗り、ノールは大きく翼を羽ばたかせ、大空へと舞い上がった。


「こいつに乗っていけば5分で町に着くはずだよ。」


ディルは自慢気に言った。


町に着くと、シィアは会場へと向かった。地図を見たところ場所はここからかなり近い場所であった。


「まるでお城みたいなところだなぁー。・・・いけないいけない、早く入らないと!」


会場の扉を開けると、そこには何百人もの人が群がっといた。


「これ・・・みんなそうなのかな?」


すると、奥から一匹の大きな黄色い雌のドラゴンが此方の方へと歩いてきた。


(な、なんだろう・・・。)


すると、立ち止まった一匹のドラゴンはゆっくりと口をあけた。


「みたところ、あなたは一般の方じゃないですね。推薦状をもって此方の方に来てください。」


シィア不思議そうに問いかけた。


「ど、どうして、推薦状の事が分かったの??」


「・・・見たら分かります。」


ドラゴンはそう言うと、奥の扉へと案内した。


扉の向こうには、先ほどまでとは違う空間が広がっていた。長く細い道、壁は全てガラス、床は大理石でできていた。

ドラゴンとシィアは奥へと進むと、一人の男が机越し立っていた。


「あ、あれは・・・?」


フードを被った男はゆっくりとシィア方に歩いてきた。


「久しぶりだな・・・私が渡した推薦状は持ってきているな?」


「あなたはいったい誰なんです? 推薦状はたしかに持ってきましたが、他の人のものは違うのですか?」


すると、ドラゴンはシィアに説明をした。


「彼は、ここ人間界と異世界の狭間を守っている守護官ですよ。」


シィアは、ドラゴンが言った言葉を理解することが出来なかった。


「えっと・・・異世界が守護官・・・??」


「まあいい、その内わかるだろう。」


シィアは戸惑いを隠せないでいた。それもそのはずで、この世界意外にもうひとつ異世界と言うものがあるとは、誰も思ってはいないだろう・・・少なくともこの男意外は・・・。


シィアは頭の中を整理した。


「そこで・・・お前に渡した推薦状で他の者は違う特別なベールライセンスを渡す。」


「べーるらいせんす?」


「ベールライセンスがあればこの世界と異世界を自由に行き来出来るようになりのですよ。」


「私やその他のドラゴンは人間と違い、ライセンスが無くても世界を行き来出来る権利を持っています。」


「ただし、異世界の事を他人に口外してはいかんぞ?もしそのようなことになれば・・・わかっているな・・・。」


シィアはごくっと息を飲んだ。


「それで・・・僕は何をしたらいいんですか?」


「異世界に行ってそれからお前と気の合うパートナーを見つてくるんだ。まあ、お前だったら直ぐに見つかりそうだが・・・。」


「なぜ直ぐに見つかるんです?」


「行けばわかる・・・。」


フードの男は怪しげな扉を指差した。


「あの扉は異世界へと繋がっている。」


「ちょ、ちょっとまだ心の準備が・・・。」


シィアは慌てて答えた。


「なんだ、怖じ気づいたのか?まぁ、今から行けと無理はいわん。」


ハードの男から、シィアはベールライセンスを受けとり、ポケットにしまった。


「明日、またこの場所に来るのだ。それを持ってな・・・」


シィアは一通りの話を聞き終わると、その場をあとにした。外ではすでにディルが待っていた。


「お?なんかはやかったなー?」


「あ、うん、なんか直ぐに終わっちゃったよー。」


「テスト難しかったよねー。」


「テスト?・・・あ、ああ、うん、結構難しかったよー・・・。」


どうやら、普通のライセンスの場合はテストがあったらしい・・・。話を聞くとかなりの難問が出題されたみたいだった。


「一回で合格するなんて流石シィアだねー。」


「そ、そうかなーははは。」


ディルとノールに嘘をつくのがつらい・・・。


「これからどうする?」


「そうだねー。あ、そう言えばパートナーを探せって言われたんだけど、ディルはどうやってノールをしったの?」


「それなら交流所にいったらいいんじゃないかな?」


「そうですね。そこならパートナーも直ぐに見つかるかもしれませんよ?僕たちもそこで出会いましたし。」


シィア達は、人とドラゴンがパートナーを見つける事の出来る交流所へと向かった。


交流所の広場には、たくさんのドラゴンが居たが、人間はドラゴンに比べてごく僅かだった。人間には生まれた時から、魔力を宿しているが、その中でもパートナーを組める人間はごく僅かで、その魔力の数値が高ければ高いほど、ドラゴンに得られる力は大きく比例する。


「ここがドラゴンの交流所なんだねー。初めて来たよ。」


「ライセンスを持っていても、パートナーがいない人間もいますからねー。」



「そうか・・・。魔力が少ない人は当然ドラゴンからも選ばれないのか・・・。僕は大丈夫かなあ・・・。」


「でも、シィアさんなら心配ないですよ。シィアさんなら直ぐに見つかるはずです。」


「どうして僕なら直ぐに見つかるの?」

すると、一匹の赤いドラゴンが此方の方に向かって飛んできた。


ドスン・・・。



うわ・・・。



ドラゴンはシィアの近くへと舞い降り、辺り一面に砂煙が立ち込めた。すると、シィアの顔をまじまじと見つめた。長い爪に無数に揃う歯、ノールと同じで、身体はもふもふの毛で覆われており、人間で言う胸のような所もふっくらと浮かんでいた。なによりシィアの3倍以上はあるので、シィアは立っているのがやっとだった。するとドラゴンはゆっくりと口をあけた。


「ねぇあなた、見たところパートナーはいないみたいだけど、もしかして一人?」



雌のドラゴンもいるんだなぁー。僕より大きいけど、可愛らしい・・・。



「そうなんだ!今日初めてここに来たらばかりで、パートナーを探しに来たんだよ。」


「あら、めずらいしわね〜。あなたほどの人間ならここに来る必要はないと思うのだけれど~。」


「どういうこと?」


「私たちドラゴンは人間に秘められている魔力をはかる目を持っているわ。あなたは相当な量の魔力を持っているみたいね。そうねぇ...パートナーを組める人間の魔力のおよそ...4倍くらいかしら?」


僕は彼女の言っている意味がよくわからなかった。すると、僕の辺りには沢山のドラゴンに囲まれていた。


「うわっ・・・!?」


「お前・・・パートナーいないのか? 俺とパートナーになってくれないか?」


「凄い魔力だね!!私とパートナーになってよー。」


僕はこの時、どうしたらよいかわからなかった。だんだん近寄ってくるドラゴン達に恐怖を感じた。


「シィアさん。一度ここから離れましょう!」


「え?」


ノールは低空飛行でシィアの身体を掴み、その場から離れ、飛び去った。


「大丈夫かシィア?」


「びっくりしたよ・・・いきなりあんなに沢山の来られたら・・・やっぱりいきなりのパートナー探しは難しいんだねー。」


「ゆっくり探せば良いですよ。」



確かにノールの言う通りだけど、でも僕は他の人と違って今日中にパートナーを見つけなきゃいけないんだよなぁ~。この事はディル達に・・・いや、駄目だ。話してはいけない約束だったんだ・・・。



「そうだねー・・・。今日は疲れたからもう帰るよ。悪いけどノール、ここでおろしてもらえるかな?」


「わかりました。 ここで大丈夫ですか?」


ノールはゆっくりと地上に下降していった。


「いいのかシィア?家まで送るよ?」


「ううん、今日はここでいいよ。たまには歩いて帰りたいからさー。」


僕は歩きながら、ふとあの竜が言った言葉を思い出した。


「・・・・・。僕には何か特別のものがあるのかな・・・普通の人間なのに・・・。魔力が多いだけじゃないような感じだったけど・・・。」



気がつくとシィアは知っているはずとは別の知らない山奥へと入って行ってしまっていた。


「あ、あれ?ここは・・・?迷ったのかな?」


シィアは来た道を戻ろうとしたが、帰り道すらわからなくなるほど奥へと進んでいた。


「気づかないうちに案外森の奥まで入ってしまったのかな?どうしよう・・・いつも通り慣れてる道のはずなのに戻れないよ。」


1時間ほど山奥を歩いていると、シィアは不思議な木を見つけた。それはとても大きな木で、葉っぱは一枚一枚、風の靡く音で僕の心に話しかけるような気がした不思議な木だった。


「・・・・・。」


「あれ? あなたどうやってここへ来たの?」


「え!?」


大きな木がいきなり喋りだした!?

いや、木がしゃべったのではなく、木の後ろに誰かがいる・・・。

透き通った声をしていて、聞いていてなんだか落ち着く。

僕は恐る恐る大きな木の裏を覗き込んだ。そこには人間ではなく、ドラゴンがいた。

髪の毛は透き通ったピンク色で目は青く輝いていて、肌はもふもふの真っ白な毛で覆われていて、大きな耳に四枚の美しい翼だった。


「こんな所に・・・いったいどうやって来たの?」


「道に迷っちゃって、ここからどういったら町へと戻れるかな?」


「あら、道に迷ったのね。それならここを真っ直ぐ進んで、13番目の木を左にいくといいわよ。」


「助かったよー。どうもありがとう。」


「それより、あなたどうやってここに来たの?ここは普通に歩いて来られないような場所よ?」


「僕もわからないんだ。 ずっと迷ってて、気がついたらここに来たんだ。」


「おかしいわねぇ・・・。 」


「あはは!そうだね!!」


「・・・ねぇ、あなた、私を見て・・・何も思わないの?」


「え?・・・あ!思い出した!テレビによく出て歌を歌ってる子だよね。」


「うん・・・。」


「そっかぁ!! 大変でしょう?」


「・・・・。」


「ん?どうかしたの?」


「ううん、なんか他の人間と違うなぁーって思うわ。自分で言うのもなんだけど、私に近づいてくる人やドラゴンはそんな風に話したりしないわ。」


「そうかな?僕は僕だからねー。」


「見たところ、あなたはライセンスを持ってる見たいね。それに凄まじい魔力。私達のようなドラゴンとパートナーといろんな所に行ったりするんでしょう?そういうのとても羨ましく思えるわ。」


「え?」


「私ね、テレビとかにでて歌ったりしてるせいでパートナー探しとかしたことないし、友達もいないの・・・。沢山の人間が私の所に来たけど、みんなパートナー目的で来る人間ばかり・・・だからいつも私はこの木の半径一キロに人や竜が来ないように魔法をかけているのよ。」


「でも、僕はどうしてここに・・・。」


「それは、パートナー目的で来る人間や竜に対する魔法を使ったからなのよ。でも、あなたは今でもそうじゃないし、私を目の前にしても、驚いたり・・・その・・・やましい事考えてたりしないし・・・。途中でそんな考えをしたとしても、魔法が完治してくれるからわかるの。だから、あなたはパートナー目的で来たわけじゃないから、私の魔法に反応しなかったんだと思うわ。」


彼女は半面嬉しそうな顔で答えた。


「あ、さっき言いそびれちゃったんだけど・・・僕にはパートナーなんていないよ?」


「えっ!?」


彼女は驚いた顔で僕を見た。


「あなたほどの魔力なら、物凄いパートナーがいると思ってたわ。」


「それがねー、今日交流所って所に行ったんだけど、簡単には決まらなくって・・・。明日までには決めなくちゃいけないからまた行かなきゃいけないんだけどね。」


「明日まで?」


「うん、明日までにはパートナーを連れてこいって言われてるんだ。・・・あっ!そろそろ行かなきゃ。もちろん、ここで会った事は誰にも言わないよ。それじゃあ、またね。」


「あ、ま、待って!」


彼女は僕を止めた。

「どうしたの?」


彼女は何か言いたそうにしていた。


「あ、あの、名前・・・あなた名前は何て言うの?」


「あ、そういえば言ってなかったね。僕はシィア。そういえば、ごめんね・・・。僕あまりテレビ見ないから名前知らないんだ。」


「わ、私はフィアネ!」


「うん、わかった!これで僕たちは友達だね!それじゃあ、またねフィアネさん。」


「あ、うん。それじゃ・・・。」


シィアは暗くなる前に、その場を走っていった。


チャリーン



「あ、シ、シィアくん待って!ピアス落としたわよ。」


しかし、そこにはもうシィアの姿はなかった。フィアネのその手にはシィアが落としたピアス残っていた。


「・・・友達・・・。何だろうこの気もち・・・。私の事を初めて友達だって言ってくれた・・・彼は他の人とは何だか違う・・・このピアスも返さないと・・・。」




「また・・・会えるかしら・・・。」

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