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森林浴  作者: satoda
1/3

林昌のぶらり散歩

とても短く大したオチもありません。連載とありますが2、3回で終わると思います。

ある夏の昼下がりのことであった。三畳一間の下宿から怒号が飛んだ。

「何んと憎らしいか!奴等の書く駄文の数々よ。こんなに惨めなモノが文芸誌に載っているのか意味がわからん。」林昌林昌(はやしまさる)は憤りを感じていた。

「下らない情事と主人公の自嘲だけで埋めたものがこんな賛美されているのか!奴等は自分をモノ書きの巨人とでも思っているのか?阿呆らしい」そう言いながら林昌は目を見開いて文章の粗を探した。

「はは、何だこれは女の心情と男の言い回しが全く変わらないじゃないか下らないこんな駄文を送るとはもう少し推敲をしたらどうだ。いや、そもそも推敲が出来ないんじゃないか貴様?」言いながら馬鹿にする様に大笑いをした。

これを皮切りに少しでも変わった一節があればそれを論って誰だかわからない作者を馬鹿にし卑下し自分を昇華した。

そうして文芸誌に載った新人を、批評家の様にバッサバッサと切り続け、心に虚しさを覚えると林昌は文芸誌を破り押し入れの中投げ入れ、そのまま雑に押し入れを閉めた。押し入れに寄りかかりあぐらをかくと林昌は少し思案した。(この惨めな自分をどうしてやろうか?自分を慰めるにはまだ日は高いし、酒を飲もうにも金が無い。また祐作から金を借りようか)そんなことで頭を使っていると、雑木林の方からセミの鳴き声が遠くから聞こえた。

「散歩でもするか」そういうと林は、寝間着のまま雑木林へと足を向けた。

雑木林は林の住む下宿先の裏手にある。おそらく近くに住む地主の私有地だろうが、今まで怒られた事がなかったのでこの日もいつもの様に雑木林の中へ入っていった。

小さな竹をかき分け中に入ると、いくつかの広葉樹を物ともせずに圧倒する竹達が日陰を作り、少しひんやりとしていた。土は少し湿り気があり、下駄が少し沈む。

いつものように奥へ奥へとけもの道を向かうと徐々に辺りが薄暗く、空気が澄んでくる。土は腐りかけた落ち葉が混ざり合いまだら色、その上をアリやゴミムシがそそくさと走り抜ける。それらを踏み潰さないように苦心しながら更に奥へと進む。 すると、一本また一本と、竹が減り続け、ついに雑木林は深い森へと姿を変える。

林はこの様にいつも畏れを抱きながらも不思議と心惹かれていた。しばらく森を散策すると大きな水たまりを見つけた。近くにはシロアリに喰われたであろう倒木があり、林は座ってみたい好奇心に駆られた。結果が分かりながらも寝間着が汚れるのを気におそろおそろと腰をかけた。

倒木は音も無く、少しだけへこむように折れた。林は穴にはまるような姿勢となり、その余りに滑稽な自分の姿に笑いが込み上げた。(たった一人この森でこの様なざま誰が見てるか)そう思い、深い森の中大笑いした。

寝間着はおねしょの様に濡れていた。

2、3回で終わると思います。

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