②みたらし団子とカレ
中一の春から夏に変わる頃、外は穏やかな風が吹いていて学校の中庭の芝生みたいな所で、わたしは堂々と風呂敷を広げて丸いおはぎを頬張っていた。
甘い物が主食と言ってもいいかもしれない。それくらいわたしは甘い物に目がなくて、数か月経った辺りでクラスの友達はわたしを甘ちゃんと呼ぶようになっていた。
いたって普通の体に、どうしてこうも甘い物をとり続けるのかなんて、ラインでみんなが議題に上げたくらいに。それでいて虫歯でもなく、ぶくぶくでもなく……欠点と言えば、男子は近寄ってこないくらい。
そんなこんなで、外の中庭で大好きなおはぎを口にしようとした時、数人の男子たちが物珍しそうにわたしを見ていた。知らない風に話していたからたぶん、先輩だと思う。その中に、カレがいた。
「なぁ、あの子見ろよ! スゲー甘そうなモン大量に食ってんぜ? ありえねー」
「可愛いけど、オレは甘いの無理だな。残念だ……」
「……あれ? もしかして、桜月さん?」
いつものことだけど、見世物のようにからかいの言葉が聞こえて来ていて、1人だけ違う人がいることに気付き、そしてカレ、行きつけの和菓子屋さんのカレがそこにいた。
「えっ?」
「やっぱり! 桜月さんだ。こんにちは、今日もウチのおはぎを食べてくれてありがとう」
「こ、こんにちは。あの、先輩だったんですか?」
「うん、そう。って言っても一つだけの先輩だけどね。桜月さん、今日の帰りにまたうちに来れるかな? 一緒にお団子でも食べよう? みたらし団子、好き?」
他にも先輩男子がいたこともあって、無言で何度も頷いてたわたし。先輩だったんだ……これって、何の運命なんだろ? その前に、先輩の名前を聞き出さないと駄目だよね。お店に寄ったら聞いてみなきゃ。