①始まりは甘いもの
好きなものは我慢が出来ない! それって、普通の事でしょ? わたしは一にも二にも、甘いものが大好き女子。好きすぎて、ケーキ屋さんや、和菓子屋さん、アイスクリーム屋さん……そして、駄菓子屋さん。その全てが常連となっている。
気付けばいつも何かを口にしている。それがわたし、一之瀬桜月13歳!
常連のお店の中であまりに印象を与え過ぎたのか、お店にいた男子に気に入られて友達になれた。付き合うとかそんなんじゃないけれど、その人を見るたびに恥ずかしがって照れていたら、それが彼にとってよかったのかすぐに接近してきた。はにかんだだけなのにね。
「桜月、新作食べていく?」
「新作!? た、食べたい! それって、粒? こし?」
「はは、今回は粒の方かな。ちょっと苦手なんだっけ? やめとく?」
「と、とんでもない!! 新作ってだけでもう……あぁ……」
わたしはどちらかと言うとこしあん派。粒あんは気分次第で選択する感じ。新作なら何でも来い! かな。
「桜月っていいね。そうやって美味しく食べてる姿がすげー可愛い」
「いやぁ~それほどでも……」
実は彼の名前をまだ知らないわたし。食べることを優先してるし、聞く前に食べることを優先しているから。彼の名前をいつか聞くときは、わたしの味覚はもっと鋭い甘さでいっぱいになっているのだろうか?
そんな彼とは、同じ学校で偶然にも出会うことになる。年上と年下。会ってる時は常に何かを口にするわたしを見て笑顔になるカレ。そのうちお菓子じゃなくて、彼だけを見ていくのかな?
彼はわたしが口しているお菓子を優しく奪い取り、甘える……そんな変な恋の関係になっていく――




