探偵事務所への入社
一巻とても短いです。注意してください。
ジリリリリとけたたましく鳴るアラームに陸斗は毎朝のことながら夢の世界から引き摺り下ろされた。薄っぺらい布団の中からスゥーと腕が伸び目覚まし時計の頂にある1日のスタートボタンをカチリと押した。その数秒後、陸斗はようやく朝が来たことを理解しむくりと体を起こし、ふぁーと眠そうにあくびをしながらリビングへと足を運んだ。リビングのソファーにはトーストを手に取りいつもながら楽しそうにフンフーンと鼻歌を歌う銀髪の短髪で落ち着いた感じの妹の梢の姿があった。
「お兄ちゃんおはよう、朝ごはん…できてる。急がないと入社1日目から…遅刻…。」
少し機械じみた口調で梢は話しかけてくる。
『えっ、今何時?』
「七時半…。」
『出社時間まであと30分じゃねえか!』
「そう…みたい…。頑張って!」
ドタバタと出社準備をする俺に優しく微笑みかけてくる梢。まぁ”頑張って!”の一言でなんとかなる話じゃないんだが…いやなんかこのなんとも言えない笑顔を見ると少し気持ちが落ち着いてなんとかなる気が…っていやならないならないヤバい普通にヤバいなんというか純粋にヤバい。
「じゃあお兄ちゃん、先、行くね…。」
制服姿の梢はよくわからんクマのキーホルダーが吊り下げられた制カバンを肩にかけた梢がツンツンと革靴の先端を床に打ち付け靴を履いていた。
『ちょーっと待ったー。俺も行く。』
新調したスーツに乱れたネクタイ、急いでいたため中身がぐちゃぐちゃのカバンを身につけ梢の元へとお駆け寄った。
そんな俺にコクリと頷く梢と共に玄関を出た。エレベーターに乗り込み、ドアを閉めようとしたその瞬間、待って〜という声と共に女性が一人こちらに向かってきた。その女性ははぁはぁと息を切らしながらエレベーターに乗ってきた。
その後ガーとドアを閉めた。
「ありがと〜。おっ、君、いい顔してるねー。」
その女性はそう言って俺の顔を舐め回すように見てくる。
『なんだ突然…てかあんた誰だ。』
「私は706号室の岸辺 千夏たけど」
『706号室っつーと…』
「お兄ちゃん、お隣さん…。」
『マジか…そういやあんまり近所の付き合いとか無かったもんなー。』
「という訳で、私決めた。私今日はあんたから離れないから。」
うん。何言ってんのこいつ…。
『迷惑です。』
エレベーターのドアが開き俺は背後から聞こえる待って〜という声を聞こえなかったことにして目的地へと駆け出した。梢を置いてきてしまったがまぁ仕方ないだってあいつ完全にヤバいやつじゃん…。
しかしそれでもまだ付いてくるというかだんだんと距離を縮めてくる…てかあいつどんだけ足早いんだよ…。
『っしゃーねー』
俺は目的地に着くため兼あのキチ*イから逃げ延びるためという二つ目的の為最終手段をとることにした。
<植物のSC>発動。
<SC>、それはこの世の少数の人が生まれながらに与えられた特殊能力のことだ。
俺の足に体から出てきたいくつもの植物が巻きつく。その後木の表面のようなコーティングがなされ、俺の体はその植物と一体化する。
俺はすぐにジャンプし、地上から近くのビルの屋上へ飛び乗った。そこから建物の屋根、屋上を伝って目的地へと急ぐ。少しスピードを上げすぎてしまったのか向かい風の勢いが強い。そんな風に戦いを挑むかのように向かい風の中を突き進み目的地を探して行く。俺の目がその目的地を捉えた。それは<国立SC探偵事務所>、通称National SC Detective Office の最初の二文字の頭文字をとって<NS>と呼ばれている。この国唯一の国立の探偵事務所ゆえに武器の所持なども認められている。それだけあって、基本的にはかなりの能力を持っていないと入社できない。
すぐさまそのビルに飛び移りそのビルから飛び降り一階の受付へと向かった。
『すみません。新入社員の千葉 陸斗です。まに間に合いましたか?』
するとクスクスと微笑みながらその受付の人は答えた。
「えぇ、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。」
そうですかとホッと胸をなでおろす俺に深めの茶色の髪をした男性が声をかけてきた。ライトブラウンの髪の毛の陸斗に対し落ち着いた雰囲気を漂わせていてカッコイイ。
「やぁ、新しい新人というのはお前か」
『は、はいっ。』
「俺は、夜埼 裕也だ、よろしくな。まぁわからんことがあったらなんでも聞けや。」
『はいっ、よろしくお願いします。』
すると事務所の奥の方から声が聞こえた。
「夜埼、もしかしてそいつが二人目の新入社員か?」
「あぁ。」
『あのぉ、”二人目”ということはまさか、もう一人…。』
「あぁ。もう一人はすでに到着済みだがな。おいこっちに来い、佐沢。」
「ほーい。」
その後事務所の奥からにゅっと姿を現したのは見た感じ同じ位の年の金髪の少年だった。
「俺は、佐沢 蓮だ呼び方は蓮でいい。よろしく。」
『俺は千葉 陸斗だ俺も陸斗でいい。よろしく。』
「じゃあお前ら二人に最初の依頼だ。」
『早速ですか…。』
「まぁここはそういう所だからな。」
「で内容は…。」
「警視総監の護衛だ。」
『あっ、警視総監なら知り合いです。』
「千葉、それは本当か?」
『はい。あの人には昔からお世話になっていたので…。』
「それなら話が早い。すぐに二人で向かってくれ」
『はい。』「了解。」
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そんなこんなで俺らは警視総監である 尚頓 歳三の元に来ていて現在対面中だ。
「しっかし、護衛するのがお前とはなぁ、陸斗。」
『しっかり守ってやるよ。』
「で、そっちは?」
「佐沢 蓮です。よろしく。」
「あぁよろしく頼む。」
そこからごちゃごちゃ話した結果としては、今から総理との会合に出かけるところだったがそこへ総理や警視総監の命を頂きに来るとの脅迫状がこの国のトップの犯罪組織である<オペーク>から脅迫状が届いたので会合が行われる建物周辺の警備を依頼したいとのことだ。 そして今その建物に着いたところだ。まず、かなりデカイ自動ドアを通った先に高さが15~20mほどの高い屋根をもち広さも相当広い広間に着いた。高い天井には高級感漂うシャンデリアがいくつも取り付けられていた。さすが総理が会合する場所といった具合だ。その後その広間を通りエレベーターで10階まで上った後歳三は、総理と会合するためにある一室へと入っていった。今蓮は建物の外で、俺はあの広間で警備中だ。無事、会合は始まり安堵していてガあかラス張りの壁から外の様子を眺めていた。しかしその時、突然背後からうがぁという一緒に広間の警備をしていた警備員の呻き声が聞こえた。ばっと背後を振り返るすると、反対側の壁の方に血を出して倒れている警備員とそれを眺める警備員の姿があった。ガラス張りの壁は暗赤色に染まっていた。
『おい、何があった。』
陸斗がそう言うと、血だらけの警備員を眺めていた警備員が突如奇妙に笑い出した。
「命を頂きに来ると書いたら建物の外に警備を集中させ、中の警備を弱める。中に犯人がいるとも知らずに…。」
『お前、何者だ。』
そういって拳銃をそいつに向けた。
「名乗る必要も無いだろう…どうせ貴様も俺に殺されるのだから…。」
その男がそう言うとその男の周りにいくつもの鋭利な氷の欠片が生成され、そのまま浮いている。そして男は警備員の制服の帽子を取って投げ捨てた。男は銀髪で身長は同じくらいだった。男が指をパチリと鳴らすと同時にいくつもの氷の欠片が陸斗を襲ってきた。陸斗はそれらを素早く避けたり拳銃で破壊しながら防いでいく。避けて避けて撃って避けてを繰り返して氷の欠片の群体をかいくぐり男に銃弾を一発ぶちかました。しかし、その瞬間、男の足元から突如氷の壁が出来上がり銃弾を防いだ。
『くっそー、拳銃じゃ無理か…。』
「お前、今のを喰らって無傷でありながらなお俺に銃弾を一発かませるとはやるな。いいぜ、俺の名前、教えてやるよ。氷川 涼だ。お前は?」
『俺は千葉 陸斗だ。』
「千葉 陸斗か…。いいだろう決着をつけるぞ。」
『あぁ。』
俺は両手両足を今朝の様にコーティングした。
「まさか、その能力…どうやらボスにいい土産話ができたようだ。」
『どういう意味かは知らんがその”ボス”のこと、勝ったら詳しく聞かせてもらうぞ。』
こうして俺らが構えた瞬間、外の奴らが気づいたのかこちらに向かって来ていることに二人とも気づいた。
「クソっもう気づかれたか…まぁいい、今回はこの位にしておこう。このことはボスにもしっかり伝えなければならんしな。」
そう言って氷川は外の奴らが入って来る直前にドアを氷で塞ぎ非常ドアへと駆け出した。俺も慌てて追いかけたが奴が
外に出た後、非常ドアも塞がれ、ドアを壊して外に出た時には奴の姿はもう無かった。