表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
支配する魔法使い  作者: 星野 葵
1/7

プロローグ

色々と考えているうちに、思ったより早く案が浮かびました。読んでいただけたら嬉しいです。

魔法使いが住む大陸、カロスト。その昔、若い女性の魔法使いがその大陸のとある国に住んでいた。その女性にはひそかに想いを寄せる相手がいた。その男は顔立ちが整っていて、魔法の腕もあった。


ある日、女性は胸に秘めた思いをその男に伝えるべく、男が普段よく寄っている公園に足を運んだ。男がやってくるかは分からない。よく寄っていると言っても、毎日寄るとは限らないのだ。女性は待ち続けた。しかし男は現れない。


「遅いな…。」


女性はぼそりと呟く。もしかすると今日は来ないのかもしれない。また明日にしようかと思って公園を後にした時、女性は見た。待っていた男がやって来るのを。


声をかけようとして、女性は近づいた。


「あの…。」


そう声を出した、その瞬間だった。どこから現れたのか、一人の女性が横からやってきて、男に声をかけたのだ。


「あのっ…!」


彼女の顔は赤くなっていて、何も聞かずとも、何を言うのか予想できた。女性は、愛する人を目の前で奪われた衝撃と屈辱で、何も言えなかった。何も聞かなくて済むように急いで後ろを振り返り、まっすぐ来た道を戻った。


憎かった。自分も、もう少しでこの思いを告げることができたと言うのに。ほんの少しの時間の差で、愛するあの人は自分の手の届かないところに行ってしまった。


(なんで…なんでこんなことにならなくちゃいけないのよ!私だって彼を愛していたのに!)


女性は現実を受け入れることができなかった。だから、女性は彼女に呪いをかけた。


呪いは魔法の一種だ。特別な命令を与えた魔力を相手に刻みつけて効果を発動し、かけた者が解かない限りは効果が発動し続けるものを言う。しかし、それは当時、恐ろしい魔法ではなかった。呪いは別に相手を苦しめるためにあるのではなく、相手を幸せにするためにも用いられていたからだ。例えば、戦いのたびに傷を負ってしまう戦士には傷を癒す呪い、治らない病気を持つ者には咳を止める呪いと言うように、使い方は様々だった。その上、呪いには人を死に追いやるほどの力はない。


女性が使った呪いもそうだった。少し相手を不幸にする、というだけなのだ。転ぶ回数が少し増えたり、そこがたまたま水たまりだったり、という程度の、子供のいたずらのようなものだ。それに、やめたくなったらいつでも呪いを解くことができるのだ。女性は軽い気持ちで呪いを作り、バレないようにこっそりと、彼女にその呪いをかけた。


その日以降、女性は呪いをかけたということ以外は普通の日常を過ごした。たまに彼女を町中で見つけては嫌な気分になったが、彼女が転んだり、水をかけられたりすると気分が良かった。


ある日、女性は商店街で彼女を見た。しかし彼女は一人ではなかった。あの男と一緒だったのだ。女性はそれを見せつけられているようで気分が悪かった。


(また何か、不幸なことが起こればいいのよ!)


そう思った、その瞬間だった。突然、彼女が前を通っていた店の商品棚が倒れたのだ。その棚は人よりも大きく、中には重たいものがいくつも並んでいた。彼女はそれを直撃することになったのだ。彼女は棚が倒れる瞬間、小さな悲鳴を上げたが、棚の下敷きになってからは声がしなかった。棚をとがそうと必死になっている男の足の隙間から、血が流れているのが見えた。


これは小さな不幸が重なったにすぎない。偶然にも棚が倒れて、偶然にもその前を通っていて、偶然にもその棚が重かった。それだけだった。その後棚がどかされ、彼女は病院に運ばれて行ったが、その時の姿はどう見ても、すでに死んでいた。女性は震えた。


(そんな…どうして?呪いには人を殺すほどの力はないはず。ならなぜ、彼女は死んでしまったの…?)


女性は家に帰り、すぐに参考書を読みあさった。どこで間違えてしまったのか、女性は分からなかったのだ。そして女性はついに、自分が間違っていた箇所を見つけ出した。


《注意!》

呪いをかける際は、呪いをかける対象に、怒り、悲しみ、憎しみなどの負の感情を持たないようにしましょう。その感情が呪いの効果を変え、予期しない事態が起こる可能性があります。もしそのような状況で呪いをかけてしまった場合は、すぐにその呪いを解くようにしましょう。


そしてその文は、こう続いていた。


そのような状態で呪いをかけると、その効果は自分に返ってきます。特に、相手を傷つけるような内容の呪いをかける際は注意しましょう。


女性は本を閉じた。


(私が…彼女を憎んでいたから…。)


自分が人を殺してしまった。いたずらするだけのつもりが、人の命を奪ってしまうなんて。そして、女性は恐ろしくなった。


(効果が、自分に返ってくる…?つまり、自分も死んでしまうということなの?)


そう思った瞬間だった。大きな地震が起きた。その地震はあまりにも大きく、女性の家はあっけなく潰れてしまった。そして女性は、その下敷きになって死んだ。


その地震は国全体を襲ったが、潰れた家は女性の家だけだった。被害者もその女性だけだった。それは間違いなく、呪いの反動だった。これは、人を呪わば穴二つ、などという言葉が生まれるよりずっと前の話である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ