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NAMELESS GRIMOIRE   作者: 神無月 雪華
二章 共有√
9/11

対戦の申し込み(1)

攻略試験の二日後の休日。


「うぬー?」

「ぽぺー?」


幽とリエルの部屋にリエルと瑞桜の唸るようなよく分からない声が響く。


「分かるかー!!だいたいなんで学力テストなんてものがあるんだー!!しかも攻略試験の1週間後って!!」


ついに不満が爆発した瑞桜と頭から真っ白い煙出してるリエル。

そう、テストである。

一部の学生からしたら地獄のテストである。

そしてこの現状はテスト勉強の最中である。


「勉強苦手な瑞桜ちゃんはわかりますがリエル先輩がダウンするとは思いませんでしたね。」


参考書やノートを開いてペンを走らせていた莉桜が呟く。


「まぁ、予想はついてたな。アメリカと日本では魔法の細部に違いがあるからな。」


ベットに腰掛けてお茶を啜りながら二人を眺める幽。


「違いってなんだ?幽。」

「ん?些細なことなんだけどな?魔法理論の魔法陣に用いられているスペルがアメリカと日本だと微妙に違うんだよ。どちらでも発動するし、魔法陣なんざほとんど使わないけれど学園だと必須科目だしな。で、うちの魔法理論担当が日本寄りのスペル採用してんの。」


その言葉を聞いてビクンッと机に突っ伏していたリエルの体が跳ねる。


「ううぅ、なんで違い作ったのよ。世界共通でいいじゃないの。」

「お国の定めだよ、諦めろ。」

「もうやだぁ。間違い探しみたいで滅茶苦茶神経使うのぉ。助けてゆー君。」

「上目遣いで瞳うるうるさせても手伝えないぞ。そこ暗記しかないから。」

「うえぇぇぇん!」

「遊んでないで勉強するぞ、幽、リエル。」


不意に瑞桜が、ガバッ!と頭を上げる。


「不公平だと思うんだ。なんでお兄ちゃん勉強しないで寛いでるの?」

「勉強する必要ないからです。」

「なんでそんなに余裕あるのさ!なんで毎回学年トップなのさ!」


喚く瑞桜にフッ、と鼻で笑う幽。


「頭の出来が違うからだろ?」

「イラァァァァァァァァア!!もう切れた!その脳みそ抉りとってやる!」

「その前にその問題解けよ。」

「解けたら苦労してないよ!」


兄妹喧嘩を眺めながらリエルは教科書を睨みつけ、蒼は問題を解き、莉桜は瑞桜の為に参考書をわかりやすくまとめてあげていた。

ノックがし、波香がビーニル袋を持って入ってくる。


「やぁ、やっているね。飲み物とお菓子だ。お金は後輩幽持ちだけどね。」

「遅かったですね波香先輩。」

「いやなに、少し何を買うか迷ってしまってね。」

「ヒャッハー!お菓子だ!」


諸手を挙げて喜ぶ瑞桜に笑顔で莉桜が声をかける。


「このページが終わったらね?」

「あっはい。」

「どこやってるんだい?ああ、戦術理論か。あの教諭テスト内容変えないから一年の一学期最初は陣形と基礎さえ抑えとけば何とかなるよ。後輩リエルは、やはり魔法陣のスペルか。頑張りたまえ。そこは暗記しかないから。」

「三年と二年の学年トップに同じこと言われた!」


波香と幽はそれぞれ学年トップの学力なのだが本人達曰く

「魔導具作るには理論構築とか設計図精製とかいろいろ頭使うから」

とのこと。


「まぁ、リエルは一夜漬けで何とかなるが瑞桜はもう少し本気で勉強しろよ。学園長の娘だろ、お前。」

「無理、体動かしてた方が楽しいもん。」


液体みたいに机に突っ伏す瑞桜の肩に莉桜の手がのっかる。


「瑞桜ちゃん、頑張ろ?」

「莉桜ちゃん!!」

「補修の勉強は手伝いたくないから。」


瑞桜はビシッと石像のように固まり、他の全員は同じことを思った。


「辛辣だな、莉桜。波香先輩すらオブラートに包むぞ。」


そしてその思いを幽が代表して口にする。


そんなこんなで休日のテスト勉強は過ぎていった。














「ふふふ、燃え尽きたぜ。真っ白にな。」


テストが終了した日。

瑞桜は言葉通り燃え尽きていた。


「しかぁし!もうテストは終わった!」


が、すぐさま起き上がりガッツポーズをする瑞桜。


「二ヶ月有るか無いかでまたあるけどな。」

「oh…no。」

「先輩!瑞桜ちゃんのライフはゼロです!やめて下さい!」


半日なのでいつも通りとなったメンバーで集まり広場で昼食をとっていると偶然通りかかった折戸が幽の方を見て駆け寄って来る。


「ちょうど良かった。斑鳩麒君、学園長室まで来てください。学園長がお呼びです。」

「マジです?」

「マジですよ。」


互いに譲らぬ想いで見つめ合う。

が幽が先に折れ溜息をつく。


「めんどくせぇけど了解です。」


昼食をかっ込み立ち上がる。


「じゃあ行ってくるわ。」


そして折戸と共に立ち去る幽の後ろ姿を眺めながらリエルがぼそっと口にする。


「後着けて見る?」

「のった!」


反対意見は出ず、幽の後をつけ学園長室まで来た一行。

中からはアルフェと幽の会話が聞こえる。


『それで?何の御用ですか?学園長。』

『テスト明け早々ごめんね?用事は一つ、君に対戦の申し込みが来た。』

『は?』

『相手は・・・の前にどうする?』


アルフェが少し言いずらそうに言葉を濁す。


『入れていいですよ。聞かれて困る話でもないでしょう?』

『そうなんだけどね?』

『という訳で。』


聞き耳を立てていたリエル達一行は突如扉が内側に開けられたことにより支えを無くし、学園長室に倒れ込む。


「全く、もう少し気配を上手く消せよ。特に莉桜と瑞桜の二人。あと三人はあと少しって所か。」


中では呆れた顔の幽とニヤニヤ笑っているアルフェの姿があった。


「いつからバレてました?」

「最初から。」

「うわ、私たちの隠密スキル低すぎ?」


アルフェはその光景を微笑ましく眺めていたが、幽が舌打ちをしながら向き直ると話を始める。


「対戦の申し込み相手は幽のクラスメイト、我が校の上位ランクの真宮(まみや) (じん)君だよ。」

「たいして会話した記憶すらろくにありませんが、なぜ俺に対戦を?」

「さぁ?」

「さぁってのも、どうなんですかね?」

「彼が心の底から君と戦いがっているように見えたからね。それなら舞台は用意するのが私だよ。役者がどうするかは役者が決めることだしね。」


それに、好きだろ?そうアルフェの眼は語っている。


「君は、望んでいるのだろう?強者との戦いを。」


そして、生きるか死ぬかの駆け引きを、口外にそこまで言われたのなら引き下がれるはずも無く、幽は笑みを、心の底から楽しそうな笑みを貼り付けながら宣言する。


「受けますよ。ええ、全力の対決を望みます。日時、ルール等は真宮に決めさせてください。」


それだけを言い終えると学園長室を出ていく幽。


「全く、魔法を使えない故に弱者と見られ、その心は強者のそれと来た。

(そして本人はそのすべてをどうでもいいと思っているか。)」


アルフェのつぶやきを聞いてリエル達はアルフェの方を見る。


「君はまだ探しているんだね。それが、君の願いなのだものね。」


その瞳は悲しみを潜めていた。








「ああ、まだ探しているさ。」


学園長室の前で拳を握り決意を固めているかの様にしているのは、いつものような何処か適当に過ごしている幽とは掛け離れていた。

その瞳は光を見ずに虚ろを眺めているかのようだった。


筆が進むがネタは尽きる。

シリアスとギャグを的確に使い分けたい。

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