これからの日常
試験翌日の昼休み。
試験の時のメンバーに加え波香とリエルが混じった幽達は学園にある広場の木陰で昼食を取っていた。
リエルが波香含めるメンバーにこれから宜しくと交友の握手をすると波香が口を開く。
「いやぁ、しかし、まさか後輩幽に金髪オッドアイ巨乳美少女の知り合いがいたとは驚いた。」
波香の発言の意図を汲めずポカンとするメンバー。
「開口一番に何いってんですか先輩。」
「いや、だって君の知り合いロリペッタンと小盛りと普通じゃないか。」
ピキッ!
そんな音を幽は確かに聞いた。
それを言うのが小さい(何がとはいわない)人なら問題無かったのだ(きっと)。
しかし、波香はデカい(何処がとは言わないが)のだ。
うわぁ、と小さくぼやく幽は我関与せずを貫き通すことにした。
「・・・波香先輩、私だって好きでロリでいるわけでもペッタンコな訳でも無いんですよ?」
「お姉ちゃんが持っていかなければ私だって・・・不公平だよ!」
「普通と言うが私だってもう少し、いや私が悪かった、瑞桜、莉桜、その目をやめてくれ。」
それぞれが文句を言い始める。
蒼は文句を言おうとして小さい一年の二人に睨まれたのだが。
二人の目はそれだけあるのに何言ってんですか?普通のくせに何が不服なんですか?と雄弁に語っていた。
「ちなみに、だ。リエル、瑞桜の身体的特徴を馬鹿にすると数日学校来なくなって来たら来たでロリペタ教信者になるんだぞ?いや昔実際にいたんだよ。そいつ元は巨乳好きだったのにな。」
「洗脳?」
「まぁ、そんな感じだ。」
「恐ろしいわね?お茶飲む?」
「ああ、貰うわ。」
幽とリエルはその光景を他人事として見、のんびり食事を摂っていた。
「それで、結局のところ後輩幽はどのサイズが好きなんだ?」
なんでこの人は流れる様に爆弾を投下するんだろう、それは幽の偽り無い本心だった。
そして、波香の発言に我関与せずだったリエルまで反応する始末。
「・・・ノーコ」
「「「「答えてください(もらうよ)?」」」」
「・・・好きになった人のサイズを好きになると思います。」
「ふむふむ、つまりオールオッケイの素質有りか。」
「それでいいですよ、もう。」
そんな風にワイワイしていると波香が何かを思い出したような顔でリエルの方を向く。
「そう言えば、後輩リエル。君は今日何をやらかしたんだい?」
「何ってなんですか?」
「いや、二時間目からちょくちょく君と後輩幽の話と言うか陰口を聞くようになってね。」
その一言でさっきまでの巫山戯た雰囲気は一瞬にして消え去った。
そして、リエルから発せられる殺気。
ここに居る誰かに向けられたものではない故になんとか冷静を保てている蒼達だが震えているのは容易に見て取れる。
「どんな陰口ですか?伯霞先輩?」
「波香で構わないよ。陰口だが、確か・・・後輩幽はセラトエラ嬢をどんな方法かは不明だが誑かした不届き者だったかな?」
「まぁ、転校の挨拶でリエルは『私はゆー君の剣よ。故にゆー君を侮辱し、蔑むのなら私はあなた方に容赦無く鉄槌をくだすわ。』とか言ったからな。あと休み時間にリエルが幽にくっついて男どもから嫉妬されてるのもあると思うぞ。」
蒼の、説明を聞き波香はふむ、と頷き幽に同情するような視線を向ける。
「君も苦労するね、後輩幽。魔法使いって物は自分の力にプライドを、持つものだ。しかも、上位の魔法使いならなおのこと。」
「それが魔法の使えない俺にゾッコン、そらぁ、俺がなにかしたんじゃないかと思われますよねぇ?。まぁ、憎悪嫌悪妬み怨み嫉妬は慣れてますし。」
「慣れていいものじゃないよ、お兄ちゃん。」
「ちょっと陰口言っていた人達を教えてください。闇う・・・お話して来ますから。」
「待て、リエル今、闇討ちって言おうとしたろ。」
「だってゆー君を侮辱するのよ?」
さも当然のように言うリエルを見、改めて幽が何をしたのかが気になったメンバー。
「何でこんなに好かれてるんだ、幽。何やったんだよ。」
「・・・何と言われてもなぁ?」
「ナニしたのかい?」
「先輩、下ネタやめて下さい。」
記憶を思い返すように空を眺めながら一息つく幽。
「俺は、ただコイツの可能性を示して、コイツがその通りに結果を残せただけなのにお礼すると言って聞かなくてですね。めんどくさくなって魔法剣渡してこれを使って『超高温圧縮魔法 灼熱炎華』を習得できたらお礼でも何でも聞いてやるって言ったら・・・まぁ、約束させられまして。」
「その約束が私がゆー君の剣となり隣にいる、というものなの。」
「恋愛感情を後輩幽に抱いているんだろ?何せ10年越しだ。並半端な覚悟じゃ無理だからね。」
「ほら、ゆー君の意思を尊重して恋人は自由にってことで。もし私がゆー君を惚れさせられなくて他の人とゆー君が恋人になったら私は身を引いて愛人で行こうと思ってるから。」
「それ身を引いてないぞ!?」
「お兄ちゃん、恋する女の子の思いはそれ程なんだよ。それになんで惚れなかったの?ホモなの?お兄ちゃん。」
「ホモじゃないです。まぁ、あの頃はなぁ、色々あって精神的に恋愛感情を抱けない以前に他人に一定以上の感情を向けれなかったから。」
はは、と乾いた笑みを浮かべる幽に女性陣からは冷めた目を向けられる。
「リエル先輩に失礼だと思うんですよ。先輩。」
「いやいや、私は気にしてないよ。だってあの時のゆー君見てたら嫌でも分かるもん。まず第一に目が死んでたから。」
「ホントなぁフィンのおっさんにも『餓鬼がする目じゃねぇな。お前は。』って言われたしなぁ。」
「世界トップクラスの魔法使いに言われるって凄いことなのかな?てか、お兄ちゃん、おっさん呼びは問題なのでは?」
「本人は巫山戯てお義父さんでもいいぞ。とか言ってたな。7~8歳の餓鬼にいう言葉じゃねぇと思うが。」
昨夜管理人室でアルフェに言われたことを思い出し苦虫を噛み潰したような顔で答える幽。
こうして昼休みは過ぎていった。
◇
「食後すぐ戦闘訓練あるとか地味に辛いよな。」
闘技場での戦闘訓練の授業の最中、幽は呟く。
「でも余裕よね、ゆー君。」
「まぁ、身体能力は鍛えてるからな。余程のことないとお前との戦闘の様な速度出さないけど。」
「なんでなの?」
「使い過ぎると筋肉痛が、な?」
「なるほど。」
話しながらの癖にリエルは容赦なく幽に火球を投げ飛ばす。
幽はそれを何とか躱し、リエルとの距離を詰める。
「接近しても障壁突破出来ないけどな!」
「大丈夫よ。魔導剣だけで対処するから。」
「いい加減修理か改良しねぇとな、その剣。」
「そろそろガタが来てるからね。」
「・・・それ、一応20年はもつ設計なんだけどなぁ。」
何時もならガデルや取り巻きが幽に嫌味を言ったりしてくるのだが今日はリエルに対戦を申し込み、その際に
『あの様な無能相手でなくこのガデルこそ相手に相応しい』
と言ったので擁護室に取り巻き含め搬送されたので静かだった。
「話してる内容は日常的なのになんでリエルは、目視出来ない斬撃を幽に叩き込んでるんだよ。」
「あら?大丈夫よ。だってゆー君避けてるもの。」
幽とリエルの戦闘訓練を見ていた蒼が苦笑いでリエルに声をかける。
ちなみにリエルの腕から先と魔導剣は幾つもの線を描き実体を目視できない状態になっていた。
幽はハ!ホッ!ヨット!と声を上げながらその斬撃を躱していく。
「あれ?幽ってそんなに動体視力良かったっけ?魔法戦だといつもギリギリ回避の様な。」
「これぐらいなら平気みたいだし、ギア上げていい?ゆー君。」
「いや、無理、今日の放課後なんか奢るからもう辞めて。俺の脹脛が痙る。さっき何故か痙り掛けてからヤバイ。」
「絶対よ?」
「任せろい!」
リエルの最後の一撃を避けた瞬間幽が固まった。
「おい、幽。まさか。」
「ああ、足痙った・・・。」
左足を抑えて蹲る幽。
「締まらないなぁ。幽、大丈夫か?」
「一分位ほっといてくれ。」
「なら、リエル。私と戦ってくれないか?接近戦主体の魔導剣使いとの戦闘経験は無いんだ。」
「構わないけれど、蒼はどんな魔導具を使うのかしら?」
蒼は白と黒の二丁拳銃を取り出す。
「コレが私の魔導具。バレット魔法専用の魔導銃、消滅と再生。」
「随分アレなネームね?」
「付けたのは私じゃないぞ?」
リエルが座って休んでいる幽の方をチラ見する。
「いや、俺じゃなくて波香先輩なんだな、これが。」
「え?」
「嘘・・・。」
「「「・・・・・・。」」」
「この話は今度にしましょうか。」
「そうだな。よし始めよう。」
互いに得物を構え、向き合う蒼とリエル。
「じゃあ、いいな?始め!」
開始の合図と同時に前に駆け出すリエル。
対する蒼は後ろに飛びながら黒色の拳銃・消滅の引き金を引く。
撃ち出される弾丸は黒い霧に包まれているのが『』目視』出来るのなら気づくだろう。
リエルは左から右、とジグザグに腰を低くしながら駆け銃撃を躱していく。
「・・・光を喰らう魔弾。」
リエルの呟きに一瞬、蒼の動きが止まる。
その隙を逃すはずもなく距離を詰め一撃を放つリエル。
蒼はそれをギリギリで避けるとすぐさま白色の拳銃・再生をリエルに向け引き金を引く。
それに対し、リエルは魔法障壁を展開する。
刹那、リエルの視界を光が埋め尽くす。
「消滅と再生はそれぞれ闇属性と光属性のバレット魔法の効果を上げるんだよ。」
蒼が撃ったのは光属性の閃光弾。
蒼はリエルに向けて二丁拳銃、消滅と再生の引き金を引く。
「見えなくても気配は読めるのよ!!」
目を閉じ、後ろに下がったリエルは魔導剣を地面に突き刺し叫ぶ。
「第一制御機関開放、火炎の壁」
リエルの周りから炎が噴き出し炎の障壁となる。
火炎の壁とは炎属性の障壁魔法の中間のランクに位置するものの一つであり、普通の魔法障壁と同様に防ぐことを目的としながらその炎により相手の武器の耐久を削るという対物理魔法障壁。
「おいおい、そんなの有りか。」
「有りよ。だって私炎属性魔法特化型だもの。」
「それ以外の属性魔法は?」
「初級なら使えるわ。けどそれまでね。貴方がバレット魔法しか使えないように。」
「私は汎用性高いんだぞ!?」
「あら、属性は偏りがあるけど攻防自在、遠近それぞれ対応可能と私も汎用性は高いわよ?」
「ぐぬぬ。」
「うぎぎ。」
互いに睨み合二人。
「なら白黒つけようじゃない。」
「望むところだ。」
その後二人共自分の魔法の汎用性を叫びながら戦い、仲良く折戸に説教をくらったのは別のお話。
水着玉藻の前は出たんです。
でも水着清姫は来なかった。
何でだろうか?
それが今の僕には分からない。
サブタイトル決めるのがめんどくさくなってきたのは内緒。