攻略試験(2)
その少女は美しい金髪をしていた。
その目はすべてを見透かすような藍と紅のオッドアイ。
何処か幻想的な雰囲気を纏った風貌。
そして、圧倒的実力を示すかのように放出されている魔力。
その手に持っている魔導剣は使い古されているがその具合から剣の腕も高いと推測が出来る。
彼女はこの場の強者だった。
そのオーラに皆が息を呑む。
「おお、凄いオーラだ。昔は私もああやってブイブイ言わせてたものだよ。」
「学園長、傍から見たら子供の見た目だろうに。幼女がこれより上のオーラ出してるとか恐怖以外の何者でもないぞ。」
・・・訂正。
ロリババアと幽を除いてである。
この二人はこの程度では驚かない。
「お兄ちゃんとお母さんは思考回路と言うか感覚が可笑しい。」
「近くで平然としてるとこちらが恐怖してるのが恥ずかしくなる。」
「と言うか何で先輩は平気なんですか。」
呆れて先程までの緊張と恐怖が薄れた蒼達。
そして、溜息をつく少女。
「シリアスな雰囲気を一瞬にして壊さないでくれたら良かったのだけど?」
「ハハ、そりゃ残念だったな。お前の魔力の高さと戦意にウチのパーティーメンバーがびびってたから和らげてやっただけだ。シリアスがシリアルになったのは謝らんぞ。」
これっぽっちも悪びれず笑う幽。
「まぁいいわ。それで?誰が私と戦うの?チーム全員でも各それぞれでもいいわよ。」
それぞれパーティーメンバーを見る幽達。
「俺は戦闘無理よ?3秒掛からずに終わる。」
「私も無理だぞ?私の魔法はバレット魔法オンリーだから魔法障壁の破壊は苦手なんだ。」
「それを言うなら私だって!瞬間魔力量が人より少ないんだからあの障壁は壊せるだけの威力ない。」
「そもそも支援系魔法が主なので主戦闘が苦手で。」
「「・・・・・・。」」
アルフェや少女も絶句していた。
「よし、じゃあ私やるよ。」
「!!じゃあ私が。」
「いえいえここは私が!!」
「・・・・・・。」
「いや私が!(チラッ)」
「いえ、私が(チラッ)」
「いえいえ、私が(チラッ)」
「・・・俺がやるよ。 」
「「「どうぞ、どうぞ。」」」
「覚えてろぉぉぉぉぉお!!」
茶番である。
◇
「あなたが私の相手ね?」
「最初に言っておくぞ。魔法障壁突破出来ずに瞬殺される。」
「戦う前から何で敗北宣言するのよ。」
「出来ない事はしない主義でな。」
「まぁ、いいわ。始めましょうか。」
少女が手に持つ魔導剣を構える。
「失望させる一歩手前までは頑張るよ。」
対する幽も腰につけていた鞘に収められていたダガーナイフを二本抜き構える。
「双方共に準備はいいね?じゃあ始め!」
アルフェの開始の宣言と同時に少女が飛び出し幽に『魔法を纏わせていない』只の魔導剣で切りかかる。
幽はそれを受け流そうとする。
「っ!?」
刹那、少女の剣は炎を纏った。
「そう来ますかぁ!?」
一瞬で構えを解き回避に全力を注ぎ何とか高温の剣を避ける幽。
「熱!あっつ!?」
しかし、無傷とはいかず左腕に火傷を負う。
「避けても無意味よ。けど受けようとしなかったのは正解。この剣は使用者の魔法の効果を受けないから平気だけど炎の温度は1000度は軽く超えるわ。」
「『超高温圧縮魔法 灼熱炎華』か。そんな高等魔法使うとか予想外でしょ普通。こっちの武装は魔法使えない性で唯の鋼材ダガーだぞ。溶ける溶ける。」
左腕に持っていたダガーを少女に投げつける。
「無駄よ。」
少女は飛来してくるダガーを剣の炎で容易く溶かす。
いや、正確には蒸発か。
溶けたダガーは少女に向かう前に消え去っていた。
「無駄は承知、危険は理解。左腕の火傷は割と大きく使用不可、ならさっさと賭ける短期戦ってなぁ!」
その直後少女の背後に幽が現れる。
「速い!?魔法を使わずにこの速度と言うの!?」
「応よ!俺は速度は魔法を使った連中とタメ張れるんだぜ!」
少女に斬りかかろうとし腕を振るう幽。
「けど残念ね。その一撃は障壁を破壊できるかしら?」
甲高い金属音が響きわたる。
少女の魔法障壁が幽の全力の一撃を防いだのだ。
「・・・やっぱダメか。しかし、とんでもねぇな。高等魔法を容易く扱い、その魔法と知覚強化魔法を同時使用出来る。しかも障壁展開も可能。化け物もいい所の性能だな、おい。」
元々、幽は学園でも最弱と言われており戦闘技術はあってもそれにあった威力の攻撃手段を持ち合わせていない。
対人戦に限らず魔法使いは魔法障壁を使用する。
幽は魔法を使えないのでこれを壊せる手段を持ち合わせていない。
相手が当たり前に使えることを幽は使えない。
「どうしたもんかねぇ?まぁ出来ることをやりましょうか。」
しかし、彼は魔法理論に関してはトップクラスの成績を誇る。
魔法を使えないが魔法の理論や構築式は熟知している。
魔法障壁を壊せるだけの威力の攻撃手段を持ち合わせていないが対処法は知っている。
走る。
その速度を持ってただ前進する。
少女が捉えるより早く障壁に干渉する。
瞬間、その一瞬。
幽は吹き飛んだ。
それはもう綺麗に。
ギャグ漫画みたいに。
「あべし!」
ベチャアみたいな効果音がしそうな感じに地面に落下した幽。
「あ、つい。ごめんなさい。」
「つい、で魔法障壁の反射とか言う高等技術使うなよ!?てかお前その魔法苦手だったろ!」
「あら、私だって日々精進してるもの。」
鼻の頭抑えて喚く幽とそれを笑って謝る少女の光景に一同は言葉を失っていた。
「なんか、幽の奴転校生の子と仲良くないか?」
「なんと言うか昨日今日の仲じゃないよね。」
「知り合い感凄いですよ。」
「ていうか知り合い確定だね。」
「「「「という理由で説明プリーズ」」」」
「いやどういう理由だよ。」
「ていうかお母さん。そちらの方は名前なんて言うの?聞くに聞けなかったからあれだったけど。」
少女の方を見ながら瑞桜が他のメンバー(幽を除く)が気になってたことを聞く。
「彼女はリエル、リエル・セラトエラ。学年は幽君と一緒だね。」
「セラトエラってまさか!?」
「そう、そのまさかさ。彼女はフィン・セラトエラの娘。世界有数の実力者に連なる者の一人さ。」
「そんな人がなぜこの学園に?」
「それはこれから彼女に聞くのさ!」
「ついでに幽との関係もだな。」
人この状況を尋問と呼ぶ。
危険を察知した幽は逃げようとした。
しかし、回り込まれた。
幽は諦めた。
「諦め早くないかしら?」
「うるせぇよ。それで?リエルはなんでこの学園に来たんだ?」
少女、リエルは首を傾げて唸る。
「学園長から聞いてないの?」
「俺に用があるとしか。」
「簡単よ。借りを返しに来たのよ。」
「お兄ちゃん、何か恨みでもつくったの?」
「ちげぇよ!こいつに恨まれることしてねぇよ!?」
リエルはクスクス笑いながら説明をする。
「借りと言うか約束、かしらね?十年前に私はゆー君と約束したのよ。」
「え?あの約束?本気で?忘れてる物だとばかり。」
幽が意外そうな顔でいると横の女性陣がチッチッチッと指を振りながら幽を見る。
「お兄ちゃん?乙女の純情舐めたらいかんのよ?それで?どんな約束なんですか!?」
リエルは微笑みながら語る。
「ゆー君の剣となる。それが、私とゆー君が交わした約束。互いに忘れること無く、誓い続けているプロミスよ。」
リエルの笑顔はとても美しく、同性でも見惚れる程のものだった。
そして、その笑顔は幽にだけ向けられている笑顔だった。
約束を果たすべく少女は少年に会いに来た。
この日。
この時を持って。
世界は、運命は少しづつ変わり始める。。
斑鳩麒幽と言う少年を中心に。
水着ナルメアが欲しい。




