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NAMELESS GRIMOIRE   作者: 神無月 雪華
一章 共有√
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おかしな仲間達(2)

「あ!お兄ちゃん。おはよう。これから学園でしょ?一緒に行かない?」


寮の入り口の前のロビーで欠伸を噛み殺していた幽に階段からロビーに降りてきたアタッシュケースを持った瑞桜と見知らぬ少女が声をかけてきた。


「あ、あの斑鳩麒先輩、おはようございます。」

「おう、おはよう。それで瑞桜、その子は?」


挨拶をしてきた後輩の少女に目をやりながら瑞桜に問い掛ける幽。


「私と同室でクラスメイトの伯霞(はかす) 莉桜(りお)ちゃんだよ!名前が似てるからって話しかけて仲良くなったんだよ。」


幽は莉桜の方を向くと


「俺の事は幽でいいぞ。しかし伯霞か。もしかして波香という名の姉がいるのか?」

「お姉ちゃんを知ってるんですか?研究室と寮を行ったり来たりしかして無いお姉ちゃんを。」

「いや、研究室て呼ばれてるけど実際部室だぞ。」


莉桜は驚いた顔をしながら


「あの研究室じゃ無い、部室お姉ちゃん以外に人居たんですか。お姉ちゃんに会いに行く時は多々あるのですけど先輩を見たことなかったですから。」


幽は少し固まった後乾いた笑みを浮かべる。


「部室には時々顔を出すけど長時間は居ないようにしてるんだよ。実験に付き合わされるからな。」

「ああ、成程納得です。」


莉桜が神妙な顔つきで同意していると瑞桜が笑いながら


「一年生の噂には聞くよ?伯霞先輩の事。何でも研究室に巣食う幽霊とかなんとか。」


徹夜で部室に篭ってた次の日の朝に前髪をボサボサのままで来るとちょっとしたホラー映画に出てきそうという事は三年二年の間では周知の事実となっている。


「波香先輩ももう少しちゃんとすればモテるだろうに。」

「自分の容姿がそこそこ上なのを自覚しているからわざとそうしてるらしいですよ?お姉ちゃん。モテると面倒い、私の恋人は今はまだ研究だけでいい、との事です。」


どこまでも残念美人な波香であった。


「あの人らしいな。ホントに。」

「そう言えばお兄ちゃん。今日のタワーダンジョンの攻略試験って確かチーム組めるんだよね。私と莉桜ちゃんと組まない?」


タワーダンジョンとは、学園にある施設の一つで全25階層のタワー型のダンジョンのことで、攻略試験ではトラップの解除、チームワーク、実戦etcと様々なことに対応出来るかの試験である。


「ん?あぁ、蒼の奴が許可したらな。」


ふふん、と瑞桜は大きくないと言うか小さい胸を張って威張る。


「蒼さんには許可貰ってるんだよね!お兄ちゃんが許可したらいいってね。」

「それなら先に言えよ。」


的確に眉間にデコピンを食らわす幽。


「あう、ごめん。と、それよりお兄ちゃん、私のアルケプスの調整してくれない?」

「いやいや、アルケプスって何だよ。試作魔導槍に変な名称付けんなよ。。」


魔導槍、正確には魔導具と呼ばれる武装の一つで魔導武装というのが総称である。

魔法使いは魔法を扱えるが、それだけでは接近戦という弱点が存在するのでそれを埋めるために扱われたり、苦手な魔法等の補助として使われる。

武具の形をなす魔導具を魔導武装、装飾品を形取る魔導具を魔導礼装と呼称している。


「いいじゃんか、あれ作ったのお兄ちゃんなんだしさ。名前って重要だよ?」


幽は魔導具製作部という名の通り魔導具を作る部活に所属しており、彼の魔導具の製作に関してはそう言う専門機関レベルの腕をしており、幽の技術力を知っている者は決まって幽にメンテや製作を依頼する。

幽の腕前を知っているのは、義理の妹である瑞桜、魔導具製作部の部長である波香、幼馴染みの蒼、学園長のアルフェ、管理人の火蔵である。

ちなみに魔導具製作部は波香と幽の二人しか居なかったりするのだがそれは置いておこう。


「今日の試験に使うのだろ?流石に間に合わないぞ、調整の具合にもよるけどよほど軽度の整備でも無いとな。昨日だったら良かったけど。」

「それなら大丈夫だよ。だって、整備して欲しいのはブレードとブラストの切り替えの所だもん。」


瑞桜の使っている魔導槍は特殊な物で、槍としての機能の他に魔導砲としての機能も搭載しており刃と砲の切り替えが可能な試作器である。


「なら今渡せ、試験までに直しておくから。」

「やったぜ。じゃあよろしくお兄ちゃん!」


瑞桜は手に持っていたアタッシュケースを幽に渡すとくるりと身を翻す。


「学園遅刻するし、もう行こう?お兄ちゃんも莉桜ちゃんも遅刻したくないでしょ?」


時間には余裕があるが面倒くさそうにしている幽を見るのが嫌な瑞桜は逃げるように言う。


「だいたいお前のせいだけどな。」

「瑞桜ちゃん・・・。」

「やめて!そんな目で私を見ないで!?私がわるございました!」


幽と莉桜は二人でひとしきり瑞桜を弄ると学園へと向かう。




その影でこちらを覗いている存在に気づくことなく。


「十年ぶりね。あの時の借り、返すわよ。」


その影はすぐに踵を返し姿をくらました。







「お前はどうしてそう容易く魔導具を整備出来るんだ?私としてはそこが不思議だ。」


教室について瑞桜の魔導槍を整備している幽に隣の席に座っていた蒼が声をかける。


「どうしてと言われても、どうしてお前らはそう容易く魔法を使えるんだと俺が聞くのと同じ事だ。」

「容易くないぞ、出来ることを増やしているだけで・・・なるほど、そういう事か。」


納得という顔で頷く蒼から目をそらし、手元の魔導槍を見ながらSHRが始まるまで整備を進める幽。


「そんなところだ、と。こんな物か、瑞桜の奴定期的にメンテに出せというに。」


担任が来るより早く整備を終わらせアタッシュケースに魔導槍を戻しながら幽は蒼の方を向くと


「さっきのだが、実際は語弊があるけどな。お前は学ぼうとすれば出来るが俺は学んでも出来ない、この違いは大きいよ。」


そこへひとりの男が近づいて来る。


「ふん、毎日毎日無駄だとわからんのか。貴様如きの出来損ないがこの栄えある魔法学園にいた所で何も出来ぬくせに。」


男の言葉にクラスにいる他の生徒もクスクスと笑い出す。

蒼は静かに溜息をつきながら小さくぼやく。


「コイツらは幽に喧嘩を売らなきゃ気が済まないのか。」

「は!貴様はこのガデル・フィラティンによってぶちのめされこの学園を去ることになるだろう。」


高笑いしながら去っていく男をジト目で見ている蒼。


「幽、お前よくガデルの小言に耐えられるな。」


ガデル・フィラティン。

幽と蒼のクラスメイトだが魔法を使えない幽を、見下しており入学してから今迄ずっと幽に嫌味を言う。

実力は学年でもトップクラスなのだが性格に難アリとして教師からも問題視されている。


「簡単だぞ。頭の中でこう呟くんだ、存在しない、と。」

「・・・それは色々まずくないか?」

「冗談だ。なに、管理人と学園長のコンボよし遥かにマシというものだからな。」

「あの二人の対処とか私は無理だな。」

「安心しろ、俺や瑞桜でも無理だ。」


何処か遠くを眺めている幽に苦笑いしか出来ない蒼。

チャイムが鳴り担任の折戸が教室に入ってきた所では幽は現実に引き戻される。


「席に着きなさい。HRを始めます。」


何時もなら軽く注意事項を言って終わるHRだが、今日は少しばかり違った。


「本日の攻略試験ですが、少々ルールが変更となりました。詳しくは学園長からお話がありますからきちんと話を聞くように。」


そう言い残して教室を出ていく折戸。


「ルール変更か、面倒ごとじゃ無ければいいが。」


「同感だ。」


我先にと攻略試験の集合場所である闘技場に向かう生徒達を眺めながら幽と蒼は言葉とは裏腹に確信していた。

あの学園長の事だ、絶対面倒になると。

ちょっとギャルゲしてたら遅れました。

多分次から本格的に始動する物語・・・?

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