おかしな仲間達(1)
学園長室を後にして、寮に帰った幽。
「あ!お兄ちゃん、今帰ったところ?」
寮に入ると赤髪ツインテールの小柄な少女が声を掛けてくる。
少女は幽の義理の妹である斑鳩麒 瑞桜である。
あのアルフェからどうやって産まれたのかは学園七不思議に語られるほどの謎である。
瑞桜の身長は普通より少し小さいと言うくらいである。
「瑞桜か。おう、学園長に呼び出されて雑務押し付けられたけど今帰ってきたところだ。」
瑞桜は憐れみも混じった目線を向けて言う。
「あ〜。何時も大変だね。そう言えばお父さんがお兄ちゃんが帰ってきたら管理人室に来るように言ってたよ?」
「火蔵さんが?わかった。これから向かうよ。」
火蔵はこの寮の管理人をしており、アルフェと同室でいちゃついているのはもはやこの寮の風物詩となっている。
魔法の腕前は日本の中でも屈指の筈だがそんな風にはこれっぽっちも見えない夫婦である。
管理人室と書かれたプレートのある部屋の前につくと幽は鞄から棒を取り出し棒でノックをする。
すると中から男の声がする。
「アルフェは?」
幽は溜息をつくと呟くように言う。
「・・・天使。」
答えるとすぐに男の問が帰ってくる。
「瑞桜は?」
「・・・・・・女神。」
怒りに震えながら必死に答える幽。
「幽君は?」
「・・・・・・・・・地獄の底の光。」
「さすが幽君!瑞桜なら途中で恥ずかしがって言えないのに!!」
扉が開き中から黒髪の無精髭を生やした三十そこらの見た目の男が笑顔で出てくる。
幽は手にしていた棒を強く握り、息を吐くと。
「いつもながらそのクソみてぇな合い言葉をやめろよ!いい歳したおっさんがよ!俺も嫌だよ!嫌々仕方なくいってんだよ!」
叫びながら棒を男の腹に叩き込む。
「ごふっ!・・・いい打撃だ。」
この男こそロリコン疑惑を掛けられていた(今も掛けられている)管理人であり、学園長のアルフェの夫である斑鳩麒 火蔵その人である。
だいぶ頭のネジが飛んでいるので可笑しい言動をするが対処法は無いらしい。
因みにアルフェは完全に適応しており二人揃うと幽と瑞桜の胃が死ぬとのこと。
「あの暗号は僕の宝物を語ったものだから!仕方ないのさ!」
1人の時でも幽と瑞桜は胃が死んでいるが。
要はこの男、親馬鹿であり阿呆みたいな愛妻家なのだ。
「これはもう病気だよな。」
またも溜息をつく幽。
「それで?俺を読んだ理由をさっさと話してださい。」
割と全力の打撃を喰らったのにピンピンして笑顔の火蔵。
「実は今度新しい人が来るから部屋分けの関係で幽君のところにもう一人入る事になったのさ。部屋を片してもう一人分のスペースを確保しといてくれないかい?」
「分かりました。要件はそれだけですね?では。」
踵を返して管理人室を去ろうとする幽に火蔵が声をかける。
「あ!ちょっと待ってよ!幽君に渡し忘れてたものがあった。」
「なんです?」
火蔵は部屋に入り少しして包装された箱を持ってきた。
「これだよ。今日届いた君宛の荷物だ。」
「ああ、ありがとうございます。そう言えば頼んでたっけ。」
包を受け取り管理人室を後にする幽。
彼の内心としては一刻も早くここか去りたいだった。
「やぁ後輩幽じゃあないか。なんだい?包抱えて急いでるようだけど。中身はエロ本かい?」
幽はズッコケそうになるのを堪え声をかけてきた主を見る。
「いきなり何ですか、波香先輩。」
彼女は幽の先輩であり幽が所属している部活の部長でもある伯霞 波香。
黒髪ロングの美少女でスタイルも良いのだが、下ネタぶち込んでくる変人なので黙っていれば美人として有名である。
人と話す時は人の名の前に後輩とか同級生とかを付ける癖がある。
「いや、思春期の少年が包を抱えて急いでいるとなるとエロ本かな?と思うわけだ。」
「急いでいたのは純粋に管理人室から遠ざかりたいだけですよ。包はそもそも、貴方に頼まれたものですし。」
幽は持っていた包を波香に手渡す。
「おお、例の物か。助かったよ。」
波香は笑みを浮かべながら包を受け取り
「ではまた明日だ。後輩幽。」
スキップ気味で部屋に帰っていった。
「本当に黙っていれ美人なのにな。言っても無駄か、この学園まともな人間探す方が難しいな。トップがあれだし。」
ユーリガル学園は優秀な生徒が多いことで有名だが、それと同じように変人が多いことでも 有名だった。
そして幽もまた、変人の内の一人であるが本人は全力で否定している。
メインヒロインが登場するのは多分次の話だと思うんだ。
あとこの作品エロゲとかギャルゲみたく共有√のあと個別√になっていきます。