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NAMELESS GRIMOIRE   作者: 神無月 雪華
二章 共有√
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幽の眼


オレンジ色に染まった夕暮れ時、学園より少しばかり離れた草原に爆音と炎があがる。


「どうしたの、お兄ちゃん?まだまだ行くよ!」

「ゼロ距離爆破はやめろって言ってんだろ!!地形破壊もやめろバカ!」


その中心地に槍を構えた瑞桜とその攻撃から逃げる幽の姿があった。


事の発端は今日の昼休み。

波香の

「なら今日から特訓をしようか。」

という一言から始まった幽の訓練タイム。


「むう、お兄ちゃんさっきから逃げてばかりで反撃してこないじゃん!それに奥の手ってのも見せてくれないしさ!」

「馬鹿野郎が!お前が砲撃しかして来ねぇから接近出来ねぇんだよ!しかも奥の手ポンポン使うアホがいるか!」




その光景を見ていた蒼はボソリとこぼす。


「幽の言ってる事が少しも間違ってないし行動としても正しいのに何故か違和感を感じるな。」

「そうね、ゆー君ならこの程度避けてから回し蹴りくらわす位なら出来る筈なのに。」

「まぁ、後輩幽は魔法攻撃と物理攻撃に対する対応に幅があるから何とも言えないけれどね。癖というかあれは何なんだろうね?」

「なんで皆さん平然と解析してるんですか?瑞桜ちゃんハイテンションで抑え効かなくなってますけど。」


その言葉に思考していた三人は幽の方を見る。


「ヒャッハー!お兄ちゃんは焼却だ!」

「テメェ!人が怪我させちゃいけないと思って手加減してたら調子乗りやがって!許さん!」

「手加減してる方が悪いんですー。瑞桜ちゃんはお兄ちゃんの為を思って行動してるんですー。」

「イラッ。」

「あ、やべ。」


瑞桜の煽りに幽の堪忍袋が切れた。

そもそも最近はガデルがしつこく言ってくるのでストレスが溜まっている幽。

それを調子に乗って煽った結果、瑞桜の顔からは血の気が引いていた。


「瑞桜ちゃんの顔、真っ青だねお姉ちゃん。」

「いつも人をおちょくる私が言うことじゃないけど、あれは彼女が悪い。加減を見極めて的確に切れないギリギリで煽らねば意味がない。」

「それは間違ってるのでは?波香先輩。」

「でもゆー君、本気は出してないわね。」


波香の発言に蒼が顔を引きつっていたがリエルの言葉に意識を戻される。


「どういう事だ?リエル。」

「だって私との対決の時なんて強化していた五感を上回って私の背後をとったのよ?それだけの身体能力を持っているのに魔法相手だとその精度が落ちてるもの。」


可笑しいでしょ?と問いかけてくるリエル。


「まるで、魔法が見えてないみたいだよね。なんて有り得ないか。」


その莉桜の言葉に皆ハッとする。


「え?どうしたの?」

「まさか、でも私の火球(ファイヤーボール)はギリギリで回避してたし。見えてないわけじゃない?」

「いや、だが一年前にうっかり私が撃った氷弾(アイスバレット)は避ける素振りすらせずに直撃したぞ?正面からモロに。」

「モロに受けた?後遺症や傷痕が無いならそこまで強い魔力じゃ無い?だとすると、可能性としてもしや・・・試してみるか。」


波香が幽を呼び幽が瑞桜に対するお仕置きをやめて皆の方に来る。

その幽に波香は何食わぬ顔で魔法を発動しぶつける。


「ゴフ!?」


その〘目視〙出来たはずの魔法は幽を吹っ飛ばす。


「やはり、か。今のは初級魔法の空気の球(エア・ボール)だ。魔力量も低めだからせいぜい直撃しても吹っ飛ぶ位で怪我は与えない威力。」


波香は指先から火を灯し、幽に尋ねる。


「この火は、『何色』だい?」


そこ言葉に、問に幽は一瞬思考する。

波香はその一瞬を見逃さなかった。


「赤でしょう?」

「いいや、この火は『青色』だよ。」


実際は赤色の火だが、これは波香の張ったブラフ。

幽の顔が強ばる。


そして、その様子を見て確信した顔で波香は告げる。


「君、魔力が、魔法が見えてないんだろ。この火は『赤色』だよ。」


魔法を使うという事は魔力を持つと言うこと。

それ故に自他共に魔力を感知できるのが当然となる。

正確には魔法発動時や放出された魔力を魔法使いは目視できる。

それは風であったり、炎、氷、光と様々。

攻略試験の際にリエルが行ったのは属性を与えずに外部に魔力を放出する言わば自己の魔力量の提示。

簡単に言えば魔力は原子、魔法はそれらが集まったもの。

原子や、分子と同じような物。


「正しくいえば一定以下の魔力量の魔法が見えないかな?」


その解答に幽は、深く溜息をつく。


「半分正解で半分不正解ですよ。」

「ほう?」


髪をガジガジ掻くと少し考えた後話を始める。


「正解は一定以下の魔力量の魔法は大気中にある『魔素』によって見えないです。俺の眼はそういう物です。」


幽と波香の話聞いていた瑞桜たちが声を上げる。


「『魔素』なんて聞いたことないしお兄ちゃんが魔法や魔力が見えないなんてのも初耳だよ!」

「そりゃ、言ってないからな。それに『魔素』に至っては普及してない極小数の理論だから一部じゃ否定されているしな。」

「私たちには見えないのか?」


蒼の言葉にニヤリと笑うと


「見えない、と言うか魔法使いにとってはそういうものとして認知されているため感知も目視もできない。頭がそうなってるのさ。」

「なら、なぜ君は見えるのかね。後輩幽?」

「それに関しては、まず魔素についての解説もしなきゃいけなくなりますよ。」

「構わないさ。そのことを知れば君の特訓に役立つ。」


そして幽は、魔素について話し始める。

魔素とは魔力、魔法の源で世界のあらゆる場所に存在しており原子と何ら変わらない『そこにあるが見えない物。』というわけになる。

魔素は感知されないが故に魔力が原子のように捉えられているが正確には分子のようなもの。

魔法使いは自身の体内に魔力を生成する器官を持つ。

それは魔素を他の微粒子レベルの物質と混ぜ合わせ魔力へと変えるもの。

魔素その物は純酸素と変わらず人体に悪影響を及ぼすもの。

呼吸器官と同じような仕組みが魔力を生成する器官なのだ。

「それが、魔素。酸素は見えないだろ?俺はその酸素が見える特殊な目を持ってるのさ。最も、魔素は色を絶え間なく変えるし魔法は魔素を吐き出すような行為の為を大気中の魔素と混ざり色が薄まるんだよ。」


高い魔力の魔法なら色その物が濃いためはっきりと目視できるが魔力が低いと大気中の魔素と混ざり合い色が見えなくなる。


「と言っても俺の考えだから何処か違うかもしれないけどな。俺以外に魔素が見えるのは・・・知ってる奴が一人いるがまぁ、会えないだろうな。」

「何故だい?」

「そいつはこの世にいないからだ。」


その言葉に皆沈黙する。

話自体が正しいのかさえ判別がつかず、証明ができないもの。

その上、もうひとりの存在はこの世にいない。


「正直この、三年トップと言うかそんじょそこらの学者以上な頭の出来の私ですら理解に苦しむ。なんせ証人は一人だけ。後輩幽の狂言とすら考えられるからね。まぁ、そういうものと捉えてやっていった方が楽だろう。」

「そうですね。」


波香の言葉に同意していく蒼達。


「となると、だ。後輩幽、君はどこまでの魔力量なら目視出来る?」

「中級魔法並みですね。下級魔法はもうギリギリまで近づかないと見えません。波香先輩のさっきの空気の球(エア・ボール)くらいの魔力量ならぶつかる迄目視できませんし感知も出来ません。」

「ガデルの奴が威力高い魔法ばっか使ってて良かったな。」

「本当それな。」


瑞桜が興奮気味に聞いてくる。


「じゃあ、奥の手ってその目のこと?」

「馬鹿か?奥の手っていうか、弱点に近いわ。」

「やっぱり?じゃあ、奥の手ってなに?」

「言ったらつまらないだろ?本番のお楽しみさ。」


その会話を聞いたリエルはふむ、と頷く。


「なら、これから試合まではゆー君の魔力を見える最低限を下げて下級魔法にも対応できるようにするかな?ゆー君身体能力は強化した魔法使いと並ぶから。ところで高等魔法はどう見えるの?」

「・・・なんと言うか、輪郭のぼやけたライトみたいな感じで周りにぼんやり魔力が見えて本体の魔法は揺らめいてる感じかな?」

「分かるような分からないような?」


この日は話をしていたらあたりが暗くなったのでお開きとなった。

グラブルで水着SSRなんて来なかった。

辛いね。

魔素とか魔力とかの設定は幽にとってと『今』の世界の考えなので途中で変化する可能性があります。

というか多分変わる(確信)

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