第4話 影
クレナイ「とりあえず、数こなせばいいだろ。」
釘打ちの修行。
釘に面は円形、半径は1cmにも満たない面の、中心を捉えなければならない。
俺は釘に向かって鋭い蹴りをする、
ドン!
鈍い音が響き渡り、
コトン、
木が揺れる。
止まっていた小鳥たちは、一斉にはばたく。
実った木の実は、俺の真横に落ちてきた。
当然ーー
クレナイ「全然刺さってねぇ、」
ラリス「魔力での身体強化の特訓じゃぞ。魔力なしで刺さるわけなかろう....」
クレナイ「もう一度だ!」
ドン!!!
次は釘が刺さったが、
バキバキバキバキ!
ラリス「強すぎじゃ。相変わらず、力加減が苦手なようじゃな。」
幹の直径が50cmもある大木が、
釘を中心に真っ二つだ。
ラリス「あんまり魔力使いたくないんだが、次は壊さないようにな。」
ラリスは、どこからか木の杖を取り出す。
そして、杖の周りで紫色の魔力がさらに濃く、
渦巻いていた。
折れた木は、緑色に光り出す。
ゆっくりと元の形へと戻っていき、光がおさまった。
クレナイ「再生魔法、一体どんな固有スキルなんだ...」
ラリス「感心してないで、はよやらんかい。」
俺は、もう一度心を落ち着かせる。
同じように、空気も静まりを取り戻す。
クレナイ「自分の身体の中の魔力を...」
ラリス「やっぱ余裕か、」
ラリスは視る。
クレナイ「いける!」
ドン!!
空気は一切揺るがない。
だがーー
その蹴りは、完璧ともいえる軌道、威力であった。
クレナイ「どうだ、ラリス。」
ラリスは、微笑む。
ラリス「感覚を掴んで自分のものにする。恐ろしいほど成長が速いようじゃな、」
クレナイ「次だ、」
ラリスはまたどこかを指差す。
そこは、木に吊るされた、無数の刃物。
ちょっとした広場。
ラリス「この不規則の動く武器たちを、全て避けるのじゃ。目を閉じてな。」
刃物にも濃い紫色の魔力が渦巻いている。
これ、絶対ラリスがなんかやってるな。
俺は、何事もないように装い、広場の中心に立って、目を閉じる。
クレナイ「こい!」
ラリス「死なないようにな。」
俺は当然【鑑定】を使う。俺の鑑定は、【創造神】で創ったもの。
故に、性能は“コスト”が許す限り、後付けできる。
今回は、元から才能で身についている、気配察知を、さらに強化するような形で使う。
ヒュン!
ナイフが頬をかすめ、
シュッ!
槍の鋭い突き、
シュン!
剣の一振り、
ダン!
刀の柄が迫る、
どれもまるで、人を相手にしているようだった。
修行は続きーー
ラリス「お疲れ様じゃ、あの修行を、初見で傷ひとつか...」
ラリスの目に映るのは、俺じゃない。
広い空を眺めるような目、何かを思い出したようにーー
だが、俺はそのことについて、触れなかった。
というか、疲労でそれどころじゃない...
ラリス「今日はもう帰ってよい、学校自体は終わっておらんが、お主だけ特別じゃ。」
クレナイ「はあ、、はあ...」
早く息を整えろ、
せっかく早く終わったんだ。
下校時間まで、まだまだ修行できる。
~夕方〜
ラリスは1人、旧校舎の廊下を歩く。
ラリス「?」
思い立った次の瞬間にはーー
ラリス「この魔力...まずい!」
ラリスは、何も考えず、走り出していた。
『夢幻の社』に向かってーー
クレナイ「よし、もう完璧に避けれるようになったな。それに、避けるだけじゃなくて、攻撃を受け止めることもできるようになった。ラリス、驚くだろうなぁ。」
俺はまだまだ修行を続ける。
シュン!
ヒュン!
ドン!
様々な武器が飛び交う。
でも、もう見えている。
クレナイ「?」
異質な何かを感じ取った。
“影”
ラリスじゃない。
ーーでも。
あの時と同じ空気、背中を伝う冷や汗。
喉の奥が、ひゅっと狭くなる。
ヒュウウウウン!!!
一瞬だけ見えた。
魔力を纏ったナイフ。
空気が裂ける。
次の瞬間ーー
グサッ!!!
ほんの紙一重だった。
クレナイ「なんだあいつは、」
地面に刺さったナイフを見て、少し疑問に思うと、
なんだかじんわりと頬に、熱を感じる。
ピチャ、
足元を見る。汗と一緒に落ちる赤い液体。
クレナイ「血?俺は避けたはず...」
さりげなく頬をさすり、そこで俺はハッとなる。
俺が見ていたものは、
クレナイ「残像か、」
ナイフが速いんじゃない。俺が追いつけていない。
改めて、地面に刺さったナイフを見る。
ナイフは地面深くに刺さり、
木には、ナイフが一本通るサイズの穴ができていた。
そして、ナイフに、残っている魔力。
ラリスとほぼ同じ濃さ。
血のような色の、赤黒い魔力だった。
さらに、ナイフには、赤黒い魔力が、びっしりとついた紙が、くくりつけてあった。
クレナイ「手紙か?そういえばあいつ、敵意はガッツリあったが、殺意を一切感じなかった。俺に読ませるため?いや、試すためか?」
少しして、ナイフの魔力が、急に無くなる。疑問はまだまだ多い。
俺は紙を手に取り、内容に目を通す。
「ラリスは弟子を殺したい。
俺が....のが.... 」
所々血が滲み、読めない。
どういうことだ。ラリスが、弟子を殺す?「俺」っていうのは、あいつのことか?
旧校舎側、この山を登る草の音。
ラリスがくるーー
そう思い、 俺は咄嗟にその紙を燃やしてしまった。




