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「君を愛するためではない」と子どもを押し付けてきたのに、なぜか物陰から仲間にしてほしそうに見つめてくる。




「この結婚は、君を愛するためではない」


 結婚当日に面と向かってそう言い放った人物を見あげた。

 スラリと背が高く、誰が見ても美丈夫と言われそうな整った顔立ち。

 くっきりとした二重に、雲ひとつない青空のような瞳。ゆるやかにウェーブした金色の髪は、肩まで伸ばして斜めに掻き上げている。

 なんというか、本当に目が潰れそうなほどのイケメンなのだ。


「娘にはまだ母親が必要だ」


 つまりは、夫婦として求婚したのではなく、母親を雇いたくて結婚したのだろう。

 私の見た目――赤髪のストレートロングと緑色の瞳が、駆け落ちして事故死した娘の母親に似ているから。




◇◇◇




 ことの始まりは、働いていた貴族向けのカフェに出勤しようと裏口に向かっているときのことだった。


 三歳くらいのご令嬢が「ママ!」と叫びながら私に抱きついてきた。そして満面の笑みで私を見上げて、一転。泣き叫ぶ手前だった。きっと、違うことに気が付いて驚いたのだろう。

 地面に膝をつき、ご令嬢と目線を合わせる。


「お嬢様、お名前は?」

「ひぅっ……ローザリンデ」

「ローザリンデ様、お母様じゃなくてごめんなさいね。ローザリンデ様のお母様は一緒に来ているのですか?」


 綺麗に梳られた、ふわふわ金色の髪の毛。何よりも、着ているドレスから、明らかに上級貴族といった雰囲気。対応を間違えれば、一発で首が飛ぶ。物理的に。それがあるのが貴族だ。

 まぁそれはそうとして、泣きそうな子どもがいるというのは、さすがに心が痛む。

 ていうか、なんで一人きりなのよ。


「ママ……おかあさま、ずっとまえに、いなくなったの」


 あー、これは聞いたらダメなヤツだった。


「そうなのですね。ローザリンデ様は凄いです。私なら毎日毎日ワンワンと泣きわめいて、みんなを呆れ顔にしている自信がありますよ!?」

「っ、ふふっ! わたし、クラインベックけの、むすめだもの! つよいの!」


 わぁお、クラインベック家ってあのクラインベックよね?

 政治的な問題を強制的に解決するために、四大侯爵家の二つの家が政略結婚した。それが、クラインベック家の当主とブルクミュラー家のワガママ一人娘だった。

 去年、そのワガママ一人娘が駆け落ちの途中で馬車の事故によって相手の男とともに死んでしまったことと、クラインベック家の当主が心を病み後を追ったのも、有名な話だ。まさか、あのワガママ一人娘を愛していたのか、という方向で。

 

「ところで、ローザリンデ様はどなたかとこちらのお店に来られたのだと思いますが。お連れの方はどちらに?」


 たしか、今は前当主の弟が引き継ぎ、子どもも引き取ったとか噂で聞いた。


「ここにいる」

 

 頭の上から降ってきた、ずずんと重たい声。

 ローザリンデ様がハッと上を向いて、小さな声でごめんなさいと謝っていた。


「いい」


 騎士団で辣腕を振るっていたのに、いきなり侯爵家を継ぐことになり退団。しかも娘までも引き取った『残念イケメン』と噂のクラインベック家当主ヴェンデル様がそこにずずんと立っていた。


 ――――でっか。


 一八〇センチより高いとかなんとか聞いた気がする。一五〇センチの私からすると、もう巨人のようなものだ。見上げたら首がもげそう。


「マ……おねえちゃん、なまえなに?」

「私ですか? リア、と申します」

「リアおねえちゃん……わたしのママになれる?」


 ぬぐほっ。なんてことを聞くんだ、ローザリンデ様。私は、この可愛い可愛いご令嬢を、これ以上傷付けずにどう回避するかだけを考えていた。

 パニックに陥りそうな頭を、めちゃくちゃフル回転させていた。


「ローザリンデ様。私の身分は低く、クラインベック家の使用人にもなれない程です。きっとご当主様がローザリンデ様のお母様に相応しい人を見つけてきてくださいますわ」

「おぢさま、ほんと?」


 ――――おぢさまっっ!?


 当主を継ぐ前は、騎士団一の美丈夫だとかなんとか言われ、ご令嬢たちとの華やかな噂で持ちきりだった人が、おぢさま。

 吹き出すのを全力で我慢した。


「…………あぁ。そのうちな。それよりも、ケーキが食べたいんじゃなかったのか?」

「あっ! うん!」


 ローザリンデ様が明るい笑顔になり、おぢさまの手を握って早く早くと急かしながら、私の勤めているカフェに入っていった。

 中でまた会うのいやだなぁとか思いつつも、出勤した。




◇◇◇




 まさかあの出会いから二週間で、家に手紙が届くとは思わなかった。

 しかも内容は、クラインベック侯爵家に妻として迎えたい。という内容。子爵である我が家、従うしかない。


 まぁ、いつかは誰かと結婚するのだろうとは思っていた。とんと恋愛に興味もなければ、そんな相手が湧いて出ることもなく…………いや、なんかもっとゴツいのが湧いて出て、こんなことになっているけども。


 とにかく、そんな感じで二十歳を超えてカフェに働きに出ていたのだから、両親はどえらい玉の輿だと大喜び。


 ヴェンデル様に会ったのはカフェ以降は全くなく。二度目は、今日。というか、結婚式でだった。

 そして、クラインベック家に到着早々に、君を愛するためではない、とか言われたわけだ。

 いや、そんなのは分かりきってますよ、という気分だった。だから言ってしまった。


 はいはい、分かっています。

 なんなら他所に女でも作ってください。そのほうがこちらとしても楽です。

 私も実家も、ヴェンデル様にただただ従うだけです。

 お嬢様のことは可愛く思っていましたので、しっかり愛しますよ。


 きょとんとした顔で見られた。なぜ――――!?




「リアちゃん、まってよ!」

「本気でやってってローザが言ったじゃないの」


 クラインベック家の屋敷は広い。お城かと思うほどに広い。なので、かけっこに最適な廊下がいたるところにある。

 ローザリンデはもうすぐ四歳。体力は無尽蔵だ。女の子らしくない? そんなことは関係ない。こういったことで体力を奪わないと、疲れて夜寝てくれないのだ。

 この家に来て三ヵ月、私は学んだのだ!


「リアちゃん、ドレスなのに、どうやってはしってるの?」

「えっとね――――」


 ドレスのときは、大股で走ってはいけない。なぜならスカートが足にまとわりつくのだ。少し腰を落として小幅でカサカサと足を擦り気味で動かすのがコツだ。


「こう!」

「キャハハハハハ!」


 誰もいないからいいだろうと、スカートを膝まで持ち上げて、動きのお手本を見せていたら、ローザリンデが大笑いしだした。


「なによ? 速く走れるのよ?」

「おぢさまが、あたまかかえてる!」


 ローザリンデが笑いながら指差した方を見たら、廊下の端にいたヴェンデル様が片手で目元を覆っていた。あれは確実に見て呆れ返ってる反応だろう。

 ってか、最近よく見かけるのよね、ヴェンデル様。暇なのかな?


「なんか怒られそうだし、遊戯部屋に行こうか?」

「うん! ママ! あ…………」

「おっ? ローザ、呼びたかったらそう呼んでもいいんだよ? ママ・二号とかでもいいけど」


 ローザリンデはとても聡い子だと思う。淋しい気持ちも、悲しい気持ちも、とにかくグッと耐えてしまう。そして、時々それが溢れ出して、夜に部屋で一人で泣いていることがある。

 だから私は、彼女が甘えに甘えて、何でも言える相手になろうと決めた。


「…………よんでもいいの?」

「え? 二号って?」

「ちがうっ! ママ!」

「なぁに?」

「っ……ママ。ママッ!」


 ローザリンデが透き通った水面のような瞳から、ボタボタと大粒の雫をこぼし、抱きついてきた。

 床に膝をつき、ローザリンデをそっと包み込むように抱きしめた。

 



 その日以降、ローザリンデは私をママと呼ぶようになり、これまで以上に甘えたり気持ちを伝えてくれるようになった。


「これきらい」

「ニンジン? おいしいのに」


 ローザリンデがお皿の隅に追いやったニンジンを横から取って食べたら、ヴェンデル様にめちゃくちゃ睨まれた。いやまぁ、貴族としてはなしの行動よね。普通に残すのもったいないなー、と食べちゃった。


「ローザリンデ、それは農家の人が苦労して作ったものだ。そして、料理人たちが私たちの栄養を考えてメニューに組み込んでいる。食べなさい」

「…………やだっ! きらいなの!」


 頬を膨らませて、ぷいっと横を向くローザリンデ。幼児の頬ってなんでこんなにプニッと丸くなるのだろうか。ツンツンと突いたら、ローザリンデの口から「ぶひゅー」と空気が漏れた。


「ぶふっ……変な音っ」

「ママッ!」

「ごめんごめん。お詫びに明日は美味しいケーキを作ってあげよう」

「ほんと!? ゆるしてあげる!」


 その後は、ローザリンデはちょっと嫌そうな顔をしつつも、ニンジンもちゃんと食べていた。


 ローザリンデを寝かしつけた後、私室に戻ろうとしていたら、ヴェンデル様に呼び止められ、部屋に来るよう言われた。


 食事のときは、私とローザリンデが話していて、ローザリンデが時々おぢさまに話しかけて、私とヴェンデル様はほぼ会話なし。

 なので、めちゃくちゃびっくりした。まぁ、呼び出された理由はなんとなく分かっているけど。


 ヴェンデル様の部屋は私の部屋の隣にある。が、入ったことは一度もなかった。

 なんというか、当主というわりには質素な感じだった。壁飾りも特になければ、なんだかよく分からない壺や花瓶もない。

 ほへぇ、と部屋を見ていたら、何か気になるのかと聞かれたので、部屋綺麗ですねと褒めておいた。


「……使用人が掃除しているからな」


 ――――おや?


 なんだかその言い方は、散らかし魔の臭いが。そもそも、そういう意味では言ってないのだけど。


「それよりも、本題に入っていいか?」

「はい」


 ヴェンデル様が言いたかったのは、ローザリンデをあまり甘やかすなということだった。

 いつか婿を取り、クラインベック家を切り盛りすることになる。五歳になれば、そういった教育も始まるそう。

 それなら、余計に今のうちに日々の楽しさを知っていたほうがいいじゃないの。

 色んな楽しみ方を知っていたほうが、何かしらで行き詰まったときに息抜きができるじゃない。


「それから、好き嫌いのこともだ」

「横から食べてすみませんでした。確かにあれはマナー違反ですね」

「ん、あ、あぁ。分かってくれたならそれでいい」


 なぜそこで言葉に詰まったんだろうか。もしや私が会話するとは思っていなかった? いや、かなり少ないけど普段から会話はするし、一応朝晩の挨拶もしているから、それはないか。


「ケーキは作らなくていい」

「はい?」


 なんでそんなことまで指図されないといけないのだろうか、という少しのモヤりから、語気が強まってしまった。


「あ、いや……大変だろう? 料理人に作らせればいい」

「それじゃ意味がないんですよ」

「なぜだ」


 ヴェンデル様がこてんと首を傾げ、さらふわの金色の髪を揺らしていた。

 なんかエロいなと思った私は悪くない。今でこそ残念イケメンと言われているが、残念でもイケメンはイケメンなのだ。見た目はいいっ!

 負けるな私っ。


「明日のお楽しみです。気になるようであれば、三時のおやつの時間にダイニングにいらしてくださいね」

「明日の三時か……」


 ヴェンデル様が懐から出した手帳を見ながら、眉根に皺を寄せていた。

 まだまだ引き継いだばかりの爵位。いまだに各貴族への挨拶まわりや、領地の視察などで予定はいっぱいのよう。日中は屋敷にいないことも多い。


「…………それから……いつから『ママ』と?」

「先日からですよ」

「なぜ」


 ――――なぜ!?


 なぜと聞かれても、私には分からない。ローザリンデがそう呼びたいと思ったからというのが一番大きい。


「なんとなくじゃないですか?」

「そ うか…………下がっていい」

「はい。失礼いたします」


 ヴェンデル様の部屋を出てから、『下がっていい』と言われて素直に部屋を出てきたけど、なんか変だなと思いつつも、脳内は明日の計画でいっぱいだった。




「さて。ローザ、今日のおやつは何でしょう?」

「ケーキ! ママのてづくり!」

「せいかーい!」


 ダイニングテーブルに置いていた銀色のフードカバードームに手を伸ばした瞬間、バーンと大きな音を立ててドアが開いた。


「っ、ハァ。間に合った…………」

「おぢさま、どうしたの?」

「いや……気にするな」


 んな無茶な。とツッコミたいけれど、たぶん急いで帰って来たのだろう。私が何をするか確認したくて。


「よっ、じゃじゃーん!」


 フードカバードームをパカッと持ち上げ、焦げ茶色のシフォンケーキをお披露目。


「わぁ! おっきい!」


 ホールのまま置いているのには理由がある。目の前で切り分けることで、さらに驚きが増すのだ。

 ナイフを手に取り、ローザリンデの目の前で切り分けていく。


「オレンジあじ?」

「残念!」

「えー? なんのあじなの?」

「食べてのお楽しみです!」


 ローザリンデのお皿にどどんと切り分けたシフォンケーキを横倒しで置き、そこにホイップクリームをたっぷりと添える。

 ヴェンデル様と自分の分も用意し、準備万端。


「ローザ、食べてみて」

「うん!」


 一口でいけるかな?というくらいの大きさのシフォンケーキをフォークで刺し、クリームを付けてあむり。ほっぺにクリームが付いているのがものすごく可愛い。


「どお?」

「おいしぃー。ママすごーい!」

「んははは! もっと褒めてくれていいよ? あ、ヴェンデル様もどうぞ」


 彼が一口食べたのを確認して、私もぱくり。

 シフォンには甘さはあまり加えていない。その代わりに、ホイップに砂糖を加えて泡立てたあと、ハチミツを加えて甘みを少し強めにしたので、かなり食べやすいと思う。


「…………美味い。これは、ニンジンか?」

「はい!」

「えっ、ウソ! あまくて、おいしいのに」

「ニンジンはね、元から甘いんだよ」


 調理方法にもよるけど、おかずにもお菓子にもなるのがニンジンだ。栄養もいっぱい入っていて、かなり万能食材だ。


「ほんとに、ニンジン?」


 ローザリンデが首を傾げつつ、シフォンケーキをぱくり。その様子があまりにも昨晩見たヴェンデル様とそっくりで、ついつい笑ってしまった。


 この日から、ローザリンデは嫌いなものはどうやったら食べられるか、他の料理にしたら食べられるかなどを聞いてくるようになった。

 ついでにヴェンデル様も。

 え? ピーマン嫌いなの? おこちゃま!? って思っちゃったよね。ピーマンは確かに苦いけど、ピーマンは下処理をするだけで甘くなるし、食べやすくなる野菜だ。


「ママはなんでもしってるね!」

「なんでもは知らないけど、知ってることは知ってるのだよ」

「んー? いみわかんなーい」

「私もー」


 ローザリンデが楽しそうに笑いながら、ニンジンが入っていたサラダをぱくり。楽しく食事できるって大切よね。




「ママー、あそこ、いる」

「…………いるね」


 クラインベック家に来て半年。

 ここ最近、ヴェンデル様の行動が怪しすぎる。物陰からずっとこっちを見ているのだ。

 初めのころはなにか用があるのかと聞きに行っていたが、毎回挙動不審になりながら「特にないっ、少し確認していただけだっ」と言われるので、放置することにした。


「どう見ても、仲間にしてほしそうに見てるよね?」

「うん…………パ……おぢさま、つれてきていい?」

「いいよー」


 いま、ちょっと『パ』って聞こえた。もしかして『パパ』って言いそうになってたとか?

 ヴェンデル様って、そう呼ばれたらどういう反応するんだろう? 見ていて思うのは、ローザリンデの後見人風に立ち振る舞っているけど、彼は『娘』って言ってるのよね。

 そこのとこ、ちょっと気になる。


 ローザリンデは、ヴェンデル様を仲間に加えるミッションを失敗していた。


「おしごとがあるって」

「……暇そうに見てたのにね?」

「ねーっ?」


 


 その数日後も、さらに数日後も、ヴェンデル様は物陰からずっと仲間にしてほしそうに見つめてくる。正直ちょっとうざい。

 そんなとき、私の中の悪魔がちょっと角と尻尾と羽を出した。


 ――――やっちゃえ。


「そういえば、ローザは最近よく『パ』って言うよね。もしかして『パパ』?」


 おままごとをしながらそう聞くと、ローザリンデが恥ずかしそうに顔を俯かせてコクッと小さく頷いた。

 くっ、可愛いじゃないの。


「呼んであげたら?」

「…………おこられるもん」

「ヴェンデル様に? まさか。ほら見てよ、また仲間にしてほしそうに見てるよ? ヴェンデル様ゲットチャレンジしておいで。パパはなかなかいい攻撃になると思うよ」

「ほんと?」

「ほんとほんと」

「ママ、へんじがざつだよ?」


 バレた。いやでも、たぶん成功すると思う。だって、食事のときとかも、ヴェンデル様が私たちに話しかけようとなんかソワソワしてるもの。

 

 ローザリンデの背中を押してヴェンデル様ゲットに行かせた。

 私はゆっくりローザリンデの後ろをついて歩く。

 遊戯室の入り口からこちらを覗いていたヴェンデル様が立ち去ろうとしていたので、ちょい待てと手で合図したら、思いのほか読み取ってくれて、遊戯室の中に入ってきてくれた。

 いっつも気難しそうな顔をしているくせに、そういうところは凄く優しいのよね。


「パパも、いっしょにあそぼ?」

「っ――――」


 ヴェンデル様が大きく目を見開いて、その場に膝から崩れ落ちた。


「えっ、パパ!? パパ、だいじょうぶ」

「っ、あ……だい、じょうぶ、だ」

「どこかいたいの?」


 青い瞳から透明な雫が一筋、流れ落ちた。ヴェンデル様は、それを誤魔化そうと眉間をぎゅっと押さえていたけれど、涙は止まらなかった。


「ローザリンデ」

「なに?」

「お前の父になってもいいのか?」

「うん!」

「っ、ありがとう」


 ヴェンデル様がローザリンデを抱きしめていた。ローザリンデは苦しいよと文句を言いつつも、うれしそうにしていたし、お礼を言うのは自分じゃないのかななんて、ちょっと大人びたことも言っていた。




 その日の夜。ローザリンデをいつもどおり寝かしつけたあと、ヴェンデル様に呼び出された。


「なにかご用ですか?」


 用があるから呼び出されたんだろうけどね。なんでかつい聞いてしまう。


「今日は、恥ずかしい姿を見せたな……」

「そうですか? いつも仲間にしてほしそうに見つめてきていた姿よりは、断然格好良かったですよ」


 そういうと、ヴェンデル様が耳を真っ赤に染めた。


 ――――え。


 なにこの人、可愛いんだけど?

 そう思ったら、心臓がバクバクと脈打ち始めた。


「……言うな」


 顔を背けて、手の甲で口を隠している。本気で恥ずかしがっている。

 めちゃくちゃ可愛い!


「ふふっ。パパ、よかったね?」

「っ!?」


 からかうつもりでそう言ったら、ヴェンデル様の顔が急に真顔になった。

 やばい。日頃の恨みを晴らしすぎたかな?と慌てていると、ヴェンデル様がズンズンとこちらに近付いてきた。


「そうやって煽るということは……………………」

「……ということは?」


 あまりにも続きの言葉が来なかったので、聞き返してしまった。


「リ……」

「り?」

「リアも…………こっ、これから、私を…………パパと呼びたいんだな…………」


 そう言った瞬間のヴェンデル様の顔は、真っ赤を通り過ぎて、煙が出そうだった。

 なんだこの人。可愛いし、ヘタレだし、奥手なのかな?

 これは、私がリードしてあげないといけないのかもしれない。そう思って、ヴェンデル様の両頬を包んで引き寄せた。

 

 重なり合う唇…………からの、深まるキス。

 私はこの日、『ヤブヘビ』という言葉の意味を学んだ。


「もっとリアが知りたい」

「…………寝かせて……」

「もう少しだけ、ダメか?」

「ダメです! 仲間にしてあげませんよっ!」

「ぐぬぬっ」




 ―― おわり ――


 


閲覧ありがとうございます!

可愛いなヴェンデル、ヘタレじゃないかヴェンデル、もうちょっとグイグイ攻めろリア!そんな感じでブクマや評価をいただけますと……作者が小躍りして喜びますヽ(=´▽`=)ノ


パパを仲間にする方法、ネタ感想あれば!!

モ〇スターボール投げたり、餌を与えたり、罠を張ったり…………( ̄ー ̄)ニヤリ

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