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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第六章 代理人、リゾートへ行く
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7. 夜の部活動

 泳いだり、バーベキューをしたりと楽しい一日を終え、明日が最後の一日である。

 朝から皆スケッチの続きをするというので、秋人は早々にベッドに入った。彼はこんなに大勢の人と騒いで過ごすのは初めてで、とても楽しかった。

 思い出してはくすくすと笑う。


 バーベキューは、薫や当夜、凛子、アークのメンバーも参加でにぎやかなものだった。ホテルが用意してくれた食材は高級品で、皆おおいに満足した。ダンジョンで焚火を囲って食べるのとは全然趣が違っていて、秋人には何もかも珍しかった。

 薫が焼きおにぎりを作ってくれたのも美味しかった。

「まじで料理上手いんだな」

 と部長と顧問が複雑な顔をしていた。薫は「何の事?」という風に秋人を見てきたが、秋人は笑って誤魔化した。


 でも確かに薫が女性だったなら、きっとものすごい美女になるだろうと秋人は思った。もちろん、男じゃないと保護者にはなってもらえないと思うので、女性だったらいいなとはこれっぽっちも思わないけれども。


 秋人はベッドにもぐりこんで5分もしない間にうとうとしだした。

 そこへ、ドンドンドンという激しいノック音がした。部屋には内線があるので、通常の連絡ならそれで行うはずだ。

 緊急のことだろうか?と秋人は思った。

「誰?」

 寝ぼけ眼で起きてドアに向かう。

「待て!如月!開けるな!!」

 部長が止めたが後の祭りだった。


「こんばんは」

 にこりと笑う鳥本華がそこにいた。

「部長、如月くん。出番です」

 座った目つきでそう言われて、秋人は困惑した。何が起こっているのだろうかと途方にくれていると、部長と共に捕獲され、二人はずるずると引きずられていく。

「女子の部屋に男が深夜に行くのはまずい」

 と部長がぼやくも、単なる言い訳なことは明白だ。



「助っ人を連れてきたわ!!」

 ばーんと音がしそうなほど堂々と華がドアを開ける。

「きゃーーー、本職じゃん。ラッキー。いつも絶対ドア開けないのに」

 歓声が上がった。部長は顔を抑えて呻いている。


「これはいったい…」

 秋人の困惑がさらに深くなる。そこへ、佐藤輝美が堂々と告げた。

「もうすぐ夏の同人誌即売会があります」

 華が秋人にそっと筆ペンを手渡す。思わず秋人は反射的に受け取ってしまった。

「どうじんしそくばいかい?」

 秋人がオウム返しに返す。それはなに?と秋人の表情が語っている。


「ちょ、華。如月くんはそんなの知らないわよ」

 いつもよりかなりヨレヨレの美香が抗議する。彼女の手にも筆ペンが握られている。

「今年はついうっかり準備が遅くなっちゃって、合宿最終日までに入稿しないと新刊が落ちてしまうのです」

「うちは美術部なので、伝統的に手作業での作画です。」

「伝統なので逃げるわけにはいかんのです」

 轟学園美術部の裏は、一部部員による壁サークルだ。島本華は裏の副部長、佐藤輝美は裏の部長である。ちなみに美香は完全に被害者である。


「如月君、無理しなくていいからね。」

 あわあわと美香が言うも、周囲の圧に押されてそれ以上口出しできない。

 秋人は筆ペンに加えて画板(カルトン)と原稿用紙を渡された。

「青鉛筆でぺけが描いてあるところを塗ってね」

「は、はい」

 あまりの迫力に素直に頷く。そもそも秋人はこんな風な人間の圧には慣れていない。


「部長、背景描いてください」

「お前ら、本職にアシ頼むとはいい度胸だな」

 部長はこう見えて月刊誌に連載している正真正銘の漫画家だ。

「売上の5パーセントお支払いしますから」

 との部員の言葉に、部長はしぶしぶペンを取った。


 しばし、2時間ほど全員でひたすら原稿用紙に向かう。秋人は今自分が何をしているのか、よくわからないが、全員いるので、部の活動なのかな?と思うことにした。

 美香がしきりと「ごめんなさい、ごめんなさい」と言っているのが可哀相だったのもある。


 少ししてから部長が厳かに告げた。

「如月、人数が足りん。お前んとこのメンバーも呼んで来い」

「え?」

 秋人が思わず腰を浮かす。

「薫と当夜?」

「おう」

「ちょっと!部長!!何言ってるんですか!?如月君、そんな事しなくていいから!」

 美香が止めるも部員の一人が後ろから口を抑え込む。秋人はそそくさと部屋を出た。いかに3S探索者(シーカー)といえども、怖いものは怖いのだ。


 薫の部屋はノックをするとすぐに開いた。

「あれ?どうしたの、あっくん」

 当夜の背後には薫もいる。二人はまだ寝る前だったらしく、服のままだった。好都合である。

「ついてきて」

 二人を連れて廊下を歩いていると、エステ帰りのアークのメンバーと出会った。

「あれ?三人で今からお出かけ?」

 リサが問いかける。

「えっと、先輩のお手伝いでどうじんしそくばいかいの原稿をやってるのですが、助っ人を呼んで来いって言われました」

 そこでようやくこの要請がなんであるかを薫と当夜は知った。「え?」という顔で薫が固まっている。彼の絵心は死んでいる。


「えー、何それ、面白そうじゃん」

 というのはヨナ。

「私たちも行ってもいい?」

 というのが久美。

「何をやるんだ?」

 と楽しそうなのが桜子。

「こらこら、お邪魔じゃないか」

 というのが康子。

「あ、人数多い方が喜ぶと思います。なんか全然間に合わないらしいので」

 と秋人が言うと、ぞろぞろと皆で例の修羅場を繰り広げられている部屋に戻った。


 秋人が連れ帰った助っ人の面子をみて、流石の裏部員たちも額に汗を浮かべることになる。

秋人「薫の焼きおにぎり食べたい」

薫「ん?分かった。ちょっと材料もらってくる」

女子部員「きゃーーーー////」

凛子「(あ、これもしかして腐ってる系の人々だ)」


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