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3S探索者の代理人  作者: かんだ
第十五章 代理人、高校生と二度目の春を過ごす

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11. 不死鳥狩り 1

 「いえーい!久しぶりのダンジョン探索だぜ!」

 と当夜がダブルピースでダンジョン前で叫んでいる。薫は苦笑いだ。


 当夜は当初ダンジョンは嫌いだと言ってたのだが、いつの間にかこんな事に。最もあの言い分は料理人のジョブを得た兄の邪魔にならないようにだったのだろうけど。

 

「当夜、どこで修行してたんだ?ダンジョンじゃないのか?」

「ダンジョンですけどぉ、修行と本番は違うっつーか。地獄の特訓だったので」

 ごにょごにょと当夜が言い訳する。

「ヨナさんの師匠に修行つけてもらったんでしょ?」

 と秋人が尋ねる。すると、当夜はぶるぶると震えた。

 

「いやね、アークエンジェルさんとこも康子さんと桜子さんの二人がSランクになったじゃないですか?それで後衛職のリサさんはともかく、久美さんとヨナさんは自分たちもレベルアップしなきゃってことになったらしくて…」

 特にヨナはタンク役なのでもっと力をつけたいとのことで、師匠の元に帰って修行すると宣言したらしい。それに当夜も便乗させてもらったのだ。

 

「ヨナさんの師匠は元Sランク探索者(シーカー)、日本がダンジョン混乱期でボロボロだった時代の救国の英雄、剛田文治さん。今でも矍鑠とした恐ろしいジジイでした」

 当夜は遠い目をする。その視線の先にこの一ヶ月の恐ろしい修行の時間が浮かんだ。

「毎日、死ぬかと思いました」

 それに比べたら秋人との打ち合いなど、まるで遊戯だ。

「命がかかってないと、本当の実力はつかない」

 というのが剛田の言い分で、ヨナと当夜は文字通り命懸けの修行に励んだ。

 

「おかげでヨナさんはAに、俺はSに上がることができました」

 その時剛田に言われたのが、当夜は探索者(シーカー)のセオリーから離脱した動きをものにしているので、それを大事にしなさいとのことだった。おそらく、この規格外の二人と進めてきた探索の成果だろう。

 

「兎にも角にも、俺も覚悟は決まってます。救世来神教(エルミネイト)だろうが、異界の神様だろうがどんとこいですよ」

 ニヤリと笑って見せてから、秋人の頭をぐりぐりと撫でた。

 

「当夜…」

 秋人は当夜が自分のためにパワーアップを望んだことを知って複雑だった。

 今でも、ここに自分がいていいのか不安に思うことはある。かろうじて、あの誕生日の薫とのやりとりが均衡を支えている状態だ。

「俺のことも少しは頼りにしてくれよ」

 と当夜が笑う。

 自分は本当に恵まれている。そのことを秋人は痛感するのだった。

 

 

「でさ、その人誰?」

 当夜が指さす先ににこやかに微笑む美女がいた。

「こんにちわ。わたし、レオネア。秋人の祖母です」

「うそお」

 当夜が秋人と薫を見る。二人は苦い顔だ。

「ああ、なんというか遺伝的にはそうなる感じ」

 と薫が仕方なくそう解説すると、秋人もげんなりした。

「正確には曽祖母なんだけど、今ちょっと事情があって今回一緒に来たいって聞かなくて」

 と秋人が付け加えた。

「・・・・・マジか」

 と当夜は呟いて、チラリとレオネアを見た。


 どう見ても30をいくらもすぎてないような女性で、銀色の髪が美しい外国人だ。当夜はしばらくその女性を見ていた。魔力の量はかなり多い。おそらく彼らの行動についてこられるだろう。どっちかというとお付きの青年の方が大変そうだ。

 

「おし!難しいことは考えないことにする!」

 と当夜が宣言したので、秋人と薫は「それがいい、それがいい」と頷いた。

 

 

 秋人がGWの連休に不死鳥狩りに行きたいと言い出したので、薫と当夜は首を傾げた。

「不死鳥狩りとはなんぞや?」

 と当夜が尋ねると、秋人は何でもないかのように

「千葉第二ダンジョンの奥に隠し通路があって、そこに不死鳥の居住区があるから、そこで不死鳥狩りをする」

 と端的に説明した。


「なんで不死鳥?」

 と薫が尋ねると、もじもじしながら

「美香にプレゼントする魔石が、綺麗なピンク色が欲しいから」

 と言うではないか。

 桜子の婚約指輪に使った魔石の件もあり、薫は協力するのはやぶさかではないし、当夜も実戦で己の実力を試したい。

 というわけで、連休初日に千葉へ行くことになったのだが、届けを馬鹿正直に出したのが失敗だった。

 

 秋人の正体はまだ隠している状態なので、できる限りその日は他の探索者(シーカー)とダンジョンでかち合うのは避けたい。この前の新潟の時はそれを考慮しなかったが、やはり少し噂になっていた。なので、今回は後藤に頼んでメンテナンス中ということにしてもらったのだ。


 不死鳥の魔石は希少価値も高く、パワーも強い。美香に使用する以外のものをいくつか納品すると約束したら、後藤は二つ返事で引き受けてくれた。

 しかし、そこからぐるぐるっと情報が経由して、レオネアの耳に秋人がダンジョンアタックするという情報が届いてしまった。

 彼女はブラフォードに

「一緒に行きたい」

 と駄々をこねた。そして、彼はまたも平身低頭、薫と秋人に彼女の同行を頼む羽目になったのだ。

 

「秋人とダンジョンに行けるなんて、嬉しい」

 にこにこと彼女が告げるのを薫も秋人も複雑な表情で聞いている。もっと複雑な顔をしているのは、レオネアの付き添いできているマヌエルだ。

 ブラフォードの叱責の後、島への帰投を命じられたが、そこを何とかと頼み込んで今回同行を頼んだ。秋人へ謝罪したいというマヌエルの言葉をブラフォードが信じた形になる。

 マヌエルが治療魔法に長けていること、神崎家が治療魔法師のメンバーがいないことも同行する為の口実になった。


 当然、薫は難色を示したが、当の秋人が

「いいよ、別に」

 とのことだったので、今回の形式になった。

 

 マヌエル自体は複雑な心境だった。

 形だけでも秋人に頭を下げれば、レオネアのそばにいられる。彼女の命が尽きるまでそばにいたかった。その為なら秋人に心から謝罪している風に装うことなど何でもないと思ったが、秋人自身が彼に対してまったく関心を持っていないことに、打ちのめされた。


 再会した時の秋人の挨拶が

「あ、どうも」

 である。それ以上でも以下でもなかった。徹底的な無関心。秋人にとってマヌエルの心情も能力も取り立てて注意する対象ではないのだ。

 その事に思わぬダメージを食らった形だ。それについては、むしろ薫の方が気にしていて、完全に敵を見る目で見られている。秋人の半径1メートル以内に近づいたら打ち据えて、その場に捨てていくと宣言されているのだ。

 マヌエルは意識して秋人から距離を取った。置いていかれるわけにはいかなかった。

 

 

「千葉第二ダンジョンは32階層。秋人が言う隠し通路は22階層のオアシスから横道だな」

「うん、そう」

 秋人が迷宮探索(マッピング)を唱えて出したダンジョンマップを見て確認していると、レオネアが驚嘆してその3Dマップに手を叩いた。

「すごいわ!秋人!こんな魔法初めて見たわ」

 とはしゃいでいる。その横でマヌエルがその魔法に空いた口が塞がらなくなっているのもお構いなしだ。

 

「本来なら48階層だから、このダンジョン、Cランクだね」

 と秋人が困った顔をしている。

「一応通路は封印してるけど、そろそろ見回った方がいいかなと思ってたんだ。赤城さんたちに不死鳥取ってこいって半年に一回くらい言われてたから、あの頃は半年に一回封印掛け直してたけど」

「わかった。これは後藤さんに後で相談しよう」

 薫が苦い顔で頷いた。

 

 不死鳥狩りの始まりである。

薫「不死鳥の魔石ってそんなに希少価値があるのか?」

当夜「そうっすね。たぶん昔は5年に一回マーケットに出たら御の字くらいの価値観だったと思うんっすけど…」

薫「秋人がこの5年間で頻繁に納品してたから、少し下がってるのか」

当夜「ええ、まあ。まさか群生地があるとか、あの連中どこまで秋人のこと食い物にしてたのか」

薫「巌さんたちには内緒にしておこう。血管ブチ切れそうだし」

当夜「(先生もね)」

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― 新着の感想 ―
誤字報告 あとがき 薫「秋人がこの5年間で頻繁に納品してたから、少し下がってるのか_ 少し下がってるのか」
最新話まで追いついてしまった。 めちゃくちゃ面白いです。
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