どうしても
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?毎日の投稿は少しきついですね。感想・意見ありましたら。励みになるので。
「記憶が・・・ない?」
「……うん」
カイは床に腰を下ろして、俯いている
メリルは今までカイが寝ていた自分のベットで胡坐をかき、頬杖をついている。食べ物をもって戻ってきたメリルにカイは自分の今の状態を説明しているのだ。
「自分が、カイって名前だったのは覚えてる。けど、それ以外はさっぱりだ」
気付いたら、そこのベットで寝てて……メリルが現れたのだ
「あ~~~俺っちも経験があるぜ。オウロ熱は小さい頃にみんなかかるんだ。カイぐらいの歳でかかるなんて珍しいんだぞ?そんでな…すげー熱だろ?だから一時的に記憶が飛ぶことがあるらしいんだ。安心しな。記憶が戻らなかったなんて聞いた事ね~~。何かのきっかけで戻るってもんだ」
はむはむっと持ってきたパンを食べながら、答えるメリル。明らかにカイの分のパンも胃袋へと入れているが、そんな事に構っていられない。
それを聞いて、少し安心したが……やっぱり不安な事には違いない
「ねえ…俺は何者なんだ?…………メリルなら分かるんじゃないか?」
「キキキキ……確かに見当がつかない訳じゃね~な~」
「ほ、本当??」
とメリルに詰め寄るカイ。自分の事に繋がる情報があるなら、どんなものでも欲しい。
それを手で制すメリル。
「まぁ~まぁ~。落ちつきなよ……っと!!」
といいながら、メリルが殴りかかってきた。凄まじい速度の手刀がカイに迫る
「!!!」
それを瞬時に腕でガードし、バッと後ろに跳び間合いをとる。だがギンっと鎖に引っ張られ、たたらをふむ。
メリルは、ふむふむっと何やら確認しているようだ。
「やっぱりな。カイ…お前には武術の心得がある。しかもだ、無意識のうちに身体向上の魔法まで使ってる。そんなお前が一般人だなんてありえねー」
「俺が??」
「ああ……俺っちには分かっちまうのさ。う~~ん……なぁカイの魔法を見せてくれよ」
「えっと……魔法は…………多分こんな感じでいいのかな?」
カイは自分の右手を見つめて、体の中にあるであろう魔力を右手に集めるようなイメージする。
すると……ボっと黒いオーラの球体が浮かび上がる。
できたっと安堵するカイの横では、それを見たメリルがピョンピョンっと驚いたように飛び跳ねている
「すげー!!闇の魔法だ!!」
「え?それは凄いの?」
「闇は凄く珍しいんだ!!俺っちも母ちゃん以外で初めて見た!!」
へぇ~~っと感心しながら自分が浮かべている球体を見つめるカイ。
メリルはピンっと何かを閃き、キキキキと不敵な笑いをもらす。
「…………おいおい……俺っちはやっぱり頭の回転が速えーや。もうお前の正体をわかっちまったんだからな」
「何だって!!お、俺は誰なんだ!!」
それを聞き、ベットの上に立ち上がりふんっと胸を張るメリル。
「キキキキ……俺っちがカイを助けた時の状況…武術の心得…そしてこの無数に持っていた針。これらを総合的に考えれば答えは一つしかない!!」
ゴクっと固唾をのんで聞いているカイ。
そして―――――――――――――――
「お前は…………………………………盗賊だ!!」とビシっとカイを指さす
「と、盗賊??」
カイは予想外の答えに少し戸惑っている。だがそんなカイにお構いなく喋り続けるメリル
「そうさ!!いいか?お前はあのリザードマン族の小城へと盗みに入った・・・だけど馬鹿だから捕まっちまった。そして牢屋に入れようとしたら、発病した。他の囚人にうつす訳にはいかねーから、あの部屋で寝てた。だから逃げ出さないように、警備の者をつけていたって訳さ!!」
「・・・・・・・」
(つ、捕まってた?……じゃあ本当に俺は盗賊だったのか。なるほど…それなら武術心得があったり、魔法をつかえたりするのも頷ける。そうか……うん?…じゃあ)
「じゃ…メリルは俺を病気の時と、そのリザードマン族の城の時と二度も助けてくれたって事?」
「キキキキ……そうなるな」
それを聞き目から涙がこぼれそうになった。メリルが助けてくれなければ、盗賊として縛り首になってもおかしくないはずだ。
「ありがとう……本当にありがとう」
「よせやい!!……照れるじゃねーか!!」
と嬉しそうにしている。そして何かを思い出す。
「おう…そうだ!!後な?お前の名前はカイじゃねーー」
「え?いや…でも」
「まぁ……待ちな。いいか?カイ・リョウザンってのは最近誕生した魔王の名前だ。そしてお前は盗賊として偽名を使っていた。それしか覚えてね――って訳さ。」
「……じゃあ…俺は名前すら覚えてなかったのか」
「キキキキ…まぁ…めんどーだからカイって呼ぶぞ」
「うん……分かった」
「そうか…お前は盗賊だったって訳か……う~~~~ん」
とメリルは腕を組んで何かを考えている。そしてチラっとカイを確認するメリル。
(…ふんふん…盗賊で…俺っちと同じ黒髪で……母ちゃんと同じ闇の魔力……それに俺っちはこいつが気に入ったしな……うん!!決めたぜ!!)
「な、なぁ……カイ」
とメリルがもじもじと恥ずかしそうにしている。
「何?」
「その…だな……あ~~~お前がどうしてもっていうんならな?…俺っちの子分にしてやってもいいぞ?」
「子分?」
「そうさ!!俺っちは凄腕の盗賊なんだ!!だからなお前に色々教えられるぞ!!」
ピョンっとベッドから飛び降りると、しゃがみ込んでカイと同じ目線になるメリル。
「……子分…それになると俺はどうなるの?とりあえず鎖は外してもらえるの?」
と自分の腕についた鎖を見せるカイ。メリルはやれやれだっと呆れた表情をする。
「ハァ…カイは馬鹿だな。鎖をしてる子分なんかいる訳ないだろ?もちろん……子分なんだから家事もするんだ!!そして…俺っちの事を影から支えるんだよ!!」
「………影から支える」
(どうしてだろう…………何だかやけに心がざわつく)
カイは自分でも分からない…もやもやを感じていた。だが、それが何なのか思い出すことができない。
「なぁ…どうすんだ?」
と少し不安そうにしているメリル。カイは少し考えてみた。
(……正直な話…俺にはメリル以外に頼れる人がいないし、盗賊としても未熟らしいから色々と教えてもらえるのはありがたい。今までの自分と似たようなことをしてれば記憶が蘇るかもしれないし。それに……………それに、何だかメリルを見てると少し懐かしく感じるんだよね~~)
うんっと自分なりの答えを出すカイ。そしてメリルをじっと見る。
「……俺はまだまだ未熟かもしれないけど、メリルの子分として一生懸命頑張りたいと思う。よろしくお願いします!!」
と頭を下げ、手を差し出した。それを見てパーと不安な表情を吹き飛ばし、満面の笑みを浮かべるメリル
「本当か!!キキキキ……子分か……えへへへへ……じゃあ俺っちがカイの親分だ!!」
二人は手を出し合って、ギュッと握りあった。
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