チャングル山
え~~スギ花粉です。楽しんでいただけてるでしょうか?では、どうぞ~~
今…一人のギガン族の老人が祈りをささげている。
部屋にたった一人で、座禅を組み精神集中をしているのだ。
そんな時……その集中を乱す出来事が起きる
ドンドンドンっと扉が叩かれる。
「ラ、ラグナ―様!!」
と一人のギガン族の若者が血相を変えて入ってくる。
それでだいたいの状況を理解する。そもそも神官の祈りを邪魔してまで、呼びだす事など限られてくるのだ
(はぁ~~。またか……メリル。問題ばかり起こしおって)
「……どうした?」
「そ、それが……メリルが帰還したのですが。人間族の男を連れてきています!!ただ今オガン族長が必死に止めておりますが!!」
それを聞き、もう何度ついたか分からないため息を吐く。
「はぁ~~…………ワシが行かねばなるまいな」
よっこいしょと、ラグナ―は立ち上がった
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チャングル山……大陸の南にある大砂漠の中央に位置する山であり、ギガン族たちの聖なる山でもある。
彼らギガン族は、持ち前の強靭な爪で山に穴を掘り、そこを住宅として暮らしているのだ
砂漠にもいくつかの集落があり、そこで暮らしている者たちもいる。だが、砂漠で暮らしていたギガン族たちも、今はチャングル山に集まってきている。とある理由からだ。
そして、そのチャングル山の入り口付近に大勢のギガン族達が詰め寄せている。
「あ!!ラグナー様!!」
と何人かのギガン族が自分に気付き、さっと後ろに退き道をつくる。
そこをゆっくりと進んでいくと、褐色の肌に、珍しい黒の長髪をポニーテールのようにし、それにバンダナを頭に巻いている人間族の女性がオガン族長と何やら言い争いをしているのが見えてきた。
「…メリルや」
「おう!!ラグナ―……俺っちは今戻ったぜい!!」
と気さくに挨拶してくるメリル。この子はいつまでも本当に変わらない。
「き、貴様!!ギガン族の唯一の神官!!ラグナー様を呼び捨てにするなと何度言ったら分かるんだ!!」
と一人のギガン族の男が怒鳴り散らしている。
ギガン族をまとめ上げている10人の族長の一人………オガンだ。
オガンは、掟などに特に厳しい族長だ。だから、メリルとは特に合わない
「その肩に担いでるのは………何だ?」
とラグナ―はメリルを刺激しないように、話しかける。
「うん?あ、これ?いいだろ~~~……拾ったんだ!!」
と訳の分からない事を言い出すメリル。人間族の男をどうやったら拾えるというのか……だが一々説明を求めていたら話しが進まない。
「……それは人間族の男ではないか。ここはギガン族の聖なる山・・あまりギガン族の者以外を入れる訳にはいかんのだ」
それを聞き、ハァ~~とため息を吐き、やれやれっといった表情をする。
ラグナ―は少し嫌な予感がした。
「まったくラグナ―は。いいかい?落ちてた物を拾った。さぁ……これは誰の物だ?もちろん拾った奴のもんだ!!つまり……これは誰のもんだ?当然……俺っちのもんだ!!」
「いや…………そうではなく」
ラグナーはすでに話しの論点が変わっている事を指摘しようとしたが、メリルは止まらない。
「するってーと何か?俺っちの半月刀はダメなのか?この服は?…おいおい俺っちのもんを盗もうなんてやめといた方がいいぜい!!」
「・・・・・・」
(ダメじゃ…こうなったメリルに話は通じんじゃろ)
どうしたものか……と考えをめぐらすラグナ―。
「ラグナー様!!掟を忘れてはなりませんぞ!!人間族の男を入れるなど掟に反します!!」
とオガンが大声を張り上げた時……
「「「メリル姉!!」」」
とギガン族の子供達がわらわらを現れて、メリルを取り囲んでしまう。子供たちには、ギガン族の神官も族長も目に入らないようだ。
「おう!!ガキんちょ共!!」
とメリルが寄ってきた子供の頭をワシワシっとなでている。
「ねぇ~ねぇ~本当に盗ってきてくれたの!!」「早く見せてよ!!」
「当然よ!!俺っちは砂漠の女盗賊…メリルだ!!俺っちに盗めねー物なんてねーー!!」
というと、ごそごそを袋をかき回し始める
「えっと……リザードマンの族長の眼鏡だろ?後……貴族のスプーンとナイフとフォークだ!!
ほれ見ろ!!俺っちの言った通りだろ?金持ちでも、全部金ぴかになんかしてねーんだ!!他にも色々あるぞ~~~。だけどな………今日の目玉はこいつだ!!」
と担いだ男をポンポンと軽く叩く
「???・・人間族の……男?」
「見ろ!!この黒髪を!!お前らの魔王ごっこにうってつけって訳だ!!女の俺っちよりもいいだろ?」
子供達はその人物をジロジロっと興味深そうに見ている
そしてメリルは何かを思い出し、大きな袋から小さな袋を取り出す。
「おう!!そうだ!!ラグナー!!これはついでだ……受け取れ!!」
と袋を投げつける。それを手に取るラグナー。ズシっと重みを感じた
それを開けてみる………………そこには大小様々な宝石が入っていた。
「…いつもすまんな…メリル」
「キキキキキキ……まぁ…ついでだ」
メリルはいつものように笑っている。
ラグナーはその袋をオガンに手渡す。
それをオガンはしっかりと受け取り、メリルに頭を下げている。この族長はただ掟を盲目的に守るような男ではない。しっかりと現実も見据えているのだ。
その時、メリルの周りにいた一人の子供がある事に気付く
「ねぇ……メリル姉。この人、何かぐったりしてるよ?」
「うん?そうなんだよ……拾ってからずっとこんな感じなんだよな~」
とメリルは担いでいた男を下ろし、ぺちぺちっと頬を叩く。
「おい!!起きろ~~!!」
ぺちぺちぺちぺち……略……ビタンビタンビタン!!……と途中から明らかなピンタの域にまで達していたが一向に起きる気配がない。
それを不審に思ったラグナーが近づき様子をみてみる…そして
「こ、これは!!オウロ熱じゃ!!メリル早く下ろしなさい!!このままでは、死んでしまう!!」
「何!!それはやばいな!!」
とメリルはその男を担いで自分の部屋がある方へと走っていってしまう
パッと下げていた頭を上げるオガン
「こら、メリル!!話しはまだ終わっとらんぞ!!」
とオガンが叫んでいるが、メリルは振り返りもせずに走り去ってしまう。
入口付近に集まっていた他のギガン族たちは
「どうなったんだ?」「病か?」「そうらしいな」「じゃあ……問題ないよな?」「あれが……メリルか」
しばらくガヤガヤと話声などが聞こえていたが、一人また一人とチャングル山へと戻っていった。
「……オガンや」
ラグナ―はいつものように眉間に皺を寄せているオガン族長に話しかける。
「分かっております………病という事であれば問題はありません。病魔は我らが神の敵ですので、治療という形をとれば掟に反する事にはなりません。ですがそれが治ったら、一応審問をおこないこのチャングル山から出て行ってもらわねばなりません」
ふむっと腕を組むラグナ―。
「仕方がなかろう…それも掟じゃ。それで……食糧の件はどうなっておる?」
「はい…メリルが帰ってきてくれて助かりました。もう少しで食糧が底をつく所でしたので」
「……少しずつ辛くなってきておるの」
「はい……ですが仕方がありません。どうしようもなくなった時は、それが審判の日という事です」
「・・・・・」
ラグナーはそれを聞き、辛そうに目を閉じる。しばらく二人はそこに佇んでいたようだが、
「では、私は食糧の調達と例の件の会議がありますので」
「うむ。ワシはあの青年の様子を診てみるとしようかの」
と二人は別々の方向に歩いて行った
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