うらめしや
ある病院で女性が一人死んだ。
産まれたときからの難病で、生涯のほとんどを病院のベッドの上で過ごした女性だった。
その日の夜から病院のあちこちで女性の幽霊が見られるようになった。女性は白い入院着を着て、人を見ると悲しげな声で「うらめしや」と呟いた。
ほとんどの人は彼女を見ると逃げ出すか、見えないフリをして無視をした。
しかしある時、一人の男の人がその幽霊に尋ねた。
「あなたはなにがうらめしいのですか? なにが未練となってしまっているのですか?」
幽霊は答えた。
「一度でいいからオシャレをしてみたかった。だけどできないで死んでしまった。幽霊になってからならオシャレ出来ると思ったのに、幽霊は服装が固定だった。こんなことなら幽霊なんかにならないで成仏しておけばよかった。ああ、うらめしい」