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マイノリティ  作者: 胸毛モジャ夫
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またしても忘れていました。本日分です。

「……というわけで税についてなんだが」


「はい。もちろん税は納めるつもりでおりました。儲けの5割程でいかがでしょうか?あぁ、もちろん国民としての税は別にお支払しますよ。……それよりジャッジ様お体の具合がよろしくないのでは?顔色が優れませんよ?」


「……ハハハ。やはりそう見えるか?ちょっと昨日徹夜してしまってね。心配しないで大丈夫だから。…って、それより5割!?そんなに払ってくれるの!?」



俺は昨日と同じ応接室でサニーに話し合いの結果を伝えていた。今日はサニー一人であり、サンは街で商売しているようだ。


いや、それより税だ。サニーのハートランド王国移住と新店舗設立はすんなり決まったのだが、まさか5割も税を払うつもりだとは思わなかった。昨夜のフラーの話では概ね儲けの2割も貰えばいいところだという話だったのだが…。



俺が驚きながらも昨夜の勉強の内容を思い出していると、俺の反応で俺が驚いているのが分かったのだろう。サニーは付け足すように話し出した。



「ハハハ。驚かれているようですね。確かに儲けの半分も払う税など課したところで、誰もその国には住み着かないでしょう。しかし、私の場合は事情が違います。これから世界中で流行るであろうハートランド王国産のソバの独占販売が出来るのです。正直5割でも私が貰いすぎなくらいです」



そうサニーは笑いながら話すが、これはハートランド王国にとってはかなりおいしい話と言わざるを得ないだろう。

なにしろソバの売却で得たお金は当然我が国の物だし、更にその販売で得た利益の半分をサニーから税として得る事ができるのだ。


もちろん、主にソバの栽培を担ってくれているタゴサック達ンダ族には十分に還元するつもりではいるが、それを差し引いても丸儲けのようなものだ。



「………本当にいいのか?」



あまりに我が国に都合の良すぎる提案に念を押すようにサニーに確認するも、



「もちろんです!是非私にお任せください!」



と、本人はやる気満々のようだ。




話がまとまり、我が国で唯一法律に詳しいフラーにサニーとの約束を文書にして貰った俺はそれに署名した。


内容はソバの販売は今後もサニーの店だけに任せること。その利益の半分を税としてハートランド王国に納めること。また、ハートランド王国公認の店としてサニーの店を認め、今後ハートランド王国として購入する物は基本的にサニーの店を通すことにした。そうでもしないとあまりに俺たちに有利すぎるからだ。



俺は2枚の文書のうちの1枚をサニーに渡す。サニーは恭しく受けとると、大事そうに鞄にしまった。



「これからよろしく、サニー。……さて、これで取り合えず終わりかな?店舗の造りの希望はあとでラミィがいる時に聞くとして…」



俺は調印式?のようなものが終わり、サニーに何か話しておくことがあったかな?と考えていると、サニーが俺の言葉を遮るようにして話しかけてきた。



「ジャッジ様。前回お約束した商品をまだご紹介しておりませんよ」


「約束?」


「お忘れですか?ラミィ様とエマ様への贈り物ですよ」


「……そうか!そうだったな!」



すっかり忘れていたが、サニーが前回行商に来たときにラミィとエマへの贈り物を見繕ってきてもらうように頼んだのだった。



「私が今まで各地で集めた物の中から、厳選して持参致しました。物凄く高価。…というわけではありませんが、珍しいものが揃っていると自負しております。是非ご覧になってください」



サニーは自信ありげにそう言うと、傍らに置いていた鞄を机に置き、中身を出して並べ始めた。

ひとつひとつが白い布で包まれた装飾品は、その数10個を超え俺の目の前に並べられた。



「……おぉ。やっぱり雑貨屋の店先に並べられている物とは違うな」


「ハハハ。そうでしょう、そうでしょう。私が長年少しずつ買い集めた物です。あんな店なので高貴な方々の目に止まることこそなかったですが、その辺の高級店には負けませんよ」



俺は目の前の様々な指輪やネックレス、ペンダントにティアラなどに圧倒されていた。


どれも綺麗に磨かれており、金や銀、さらには何でできているかは分からないが、明らかに高級そうな輝きを放っている物まである。


俺は一通り眺めた後、最初にパッと見たときから気になっていた指輪を手に取ってみた。


その指輪は銀で出来ているように見えるが、俺が今まで見たものよりは少し白く、その分神々しく感じられる。更に指輪の側面には一定の間隔で宝石が埋め込まれており、計5つもの宝石が使われているようだ。残念ながら俺にはその宝石の種類は分からないが、どれもとても綺麗だ。



「おっ!さすがジャッジ様。その指輪に目をつけられましたか」



俺が指輪を手にとってひっくり返したりしながら子細を確認していると、サニーが声をかけてきてその指輪について説明してくれた。



「その指輪はもう20年以上前に見つけたものです。あれは確か……今は亡きボーラム国のとある街だったはずです」



ボーラム国とは、俺たちの住む西の大陸の東の端にあった小国だ。歴史も古く長く続いていた国だったが、この戦乱の世の中で戦争の末に滅亡した。



「たまたま立ちよったその街の近くには古い遺跡が多くありまして、どうやらそこで発掘された物のようです。私が露店商のような店先で見つけたときは土や埃で薄汚れていましたが、私にはどうしても気になり購入したのです。そして、持ち帰り綺麗に磨くとご覧のような輝きを放つ逸品に変身しました」



興奮したように話すサニー。こういう掘り出し物を見つけるのも行商人としての醍醐味なのかもしれない。正に目利きというやつだろう。


俺はサニーの説明を聞きながらも指輪から目が離せない。見れば見るほど魅力的に見えてくる。そんな不思議な輝きなのだ。



「……ジャッジ様。実はその指輪は白金でできているのではないかと私は睨んでおります」


「……白金?それは何?俺は銀かと思ったけど」



内緒話をするように話すサニーに対し、俺は質問する。

すると、サニーは誰も聞いてないのに声のトーンを抑えたまま俺に説明してくれた。



「白金とは銀に似た輝きを持ちながら、金よりも丈夫な金属です。どんな高温で熱しても溶けないと言われていて、未だにその成形方法は一部の国家で秘密にされています。更にその産出地は不明であり、産出量も金や銀とは比べ物にならないくらい少なく、とても希少な物なのです。……そして何より、ジャッジ様もお気づきとは思いますがその輝きの美しいこと!これは他の金属とは一線を画す美しさだと私は思います」


「はぁ~。そんなに貴重な物なのか…。確かにこの輝きには俺も目を奪われてしまったな」



白金とは聞いたことはないがとても貴重な物らしい。サニーもこんなに興奮しているし、これはかなりのお値段がするのかもしれない。ちょうど2つあるからラミィとエマにどうかなと思ったけど厳しいか。



そんな風に苦しい懐事情を考えながら、一応聞くだけ聞いてみようと、俺はサニーに値段を聞いてみた。



「これはひとつでいくらなんだ?」


「はい。金貨10枚でいかがでしょう」


「金貨10枚!?そんな安くでいいのか?白金製なんだろ!?」



サニーの答えた値段があまりに安すぎると感じた俺は驚いて聞き返す。

さすがに金貨10枚は安すぎるだろう。金の指輪でももう少しするはずだ。もしかして俺が貧乏そうだから気を遣ってくれているのかな?



そんな反応をする俺に向かって、サニーは笑いながら値段の理由を話す。



「ハハハ。そんなに驚かれることもないですよ。白金製とはいえ、元はといえば露店商の店先で銅貨数枚で購入したものです。金貨10枚でも私はボロ儲けです。それにあくまで白金というのは私の見立てですので、違う可能性もありますから」


「そんなもんなのか?…………わかった。じゃあこの指輪2つにするよ。それとこのネックレスとカチューシャも貰おうかな」


「ありがとうございます!」



俺はサニーに合わせて金貨30枚程を支払い、指輪2つとネックレス、カチューシャを手に入れた。これで俺のへそくりはほとんど無くなったわけだが、まぁなんとかなるだろう。

そんなことよりも、贈り物を喜んでくれるかが心配だ。いつ渡そうかな?



俺はサニーを見送った後、自室で目の前で輝く装飾品を眺めながら物思いに耽っていた。

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