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マイノリティ  作者: 胸毛モジャ夫
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勝手に決められた奴隷化政策に抗うため、俺達はダポン共和国軍と戦う事を決めた。しかし、相手の規模やこちらの戦力も把握している必要があり、作戦会議を開くこととなった。



「とりあえず、相手の規模と到着予定日を知る必要があるな。誰か偵察に向かって貰うか」



俺達は円陣を組むように丸く座っており、俺は皆の顔を見渡すと最初に発言した。

すると、以外にもラミィが手を上げ口を開いた。



「それなら私が魔車で行ってくるわ。それなら馬でいくよりもずっと速いでしょ?」


「そうだが…。本当にいいのか?ラミィがそんなこと言い出すなんて具合でも悪いんじゃないか?」


「失礼ね。アンタ私をなんだと思ってるのよ!」



そう頬を膨らませてぷりぷり怒り出すラミィ。

これは聞いた俺が悪いと、素直に謝ると機嫌を直してくれた。


「じ、じゃあ偵察はラミィに任せるとして、後はこっちの戦力の確認かな。俺とウィル、ラミィは当然として、ジャッド族とンダ族はどうかな?」



俺がそう尋ねると、



「はい。ジャッド族の男性はほぼ全員戦力になります。年寄りや女子供の付き添いに少し残すとしても、約200人程にはなります」


「……ンダ族は、申し訳ありませんがほとんど戦力にはなりません。おら達は剣を持つより鍬を持つ方が得意なので、戦える男性といってもせいぜい10人もいるかどうか…」



と、正反対の答えが返ってきた。


やはり戦闘に関してはジャッド族は頼りになりそうだ。ジャッド族全体の4割に及ぶ200人が屈強な戦士となれる。

反対にンダ族は戦闘でこそあまり活躍できないが、その農業の知識や技は、国を支える大きな強みとなるだろう。まさに、適材適所というやつだな。



「わかった。ジャッド族には活躍してもらおう。イーサン頼んだぞ。そして、タゴサックはあまり気にするなよ。ンダ族の本領が発揮されるのは戦場ではなく、畑なんだから。食べ物は生きていく上で一番大事なものだ。国を支える根幹だからな。今回は俺達に任せて、避難する皆の支援をしてもらえるかな?」


「お任せください!」


「はい!皆さんのために、おいしい料理を作って待っております」



と、返事をしてくれた。

タゴサックには、是非美味しい料理を作って待っていて欲しい。

……俺の隣で料理と聞いた途端、目を輝かせているラミィの為にも。



「ンダ族はすぐにでもここに集まれるだろうが、ジャッド族はどうかな?明日中に皆がこの村に着けるだろうか?」


「なんとか明日中にはジャッド族全員が集合できる予定です。今も各村の準備や移動に、若い男達を向かわせて手伝わせています。ギリギリですが間に合うでしょう」



よし。これでなんとかダポン共和国軍が到着するまでには、多くのジャッド族、ンダ族はハートランド王国に向けて出発できそうだ。

あとは、俺達が時間を稼ぐだけだな。まぁそれが一番大変なんだが…。出来れば自治区の全員でハートランド王国に帰りたいからがんばろう。







ラミィが念のためにウィルと一緒に、魔車で偵察に出発した後、俺はイーサンに連れられてジャッド族の戦士達に会いに来ていた。



「ここにいるのがジャッド族の主だった戦士達です。各村の村長や、相撲というジャッド族に伝わる格闘技で優秀な成績をあげた者達です」


「相撲?」


「はい。ジャッジ様もご覧になったかと思いますが、村の中心にある広場で行う競技です。上半身裸で相手の体の一部を地面に着けることを目的とします。昔から相撲が強いことがジャッド族の男達のステータスとなっているのです」



そう言えばエマに連れられて初めてこの村を通ったときに、裸で組み合っている若者を見たな。あれが相撲だったのかな?


そう思いながら、目の前に並ぶジャッド族の男達を見ると、皆鍛え抜かれた肉体をしている。身長自体も高いが、胸筋の盛りあがりや見事に割れた腹筋などを惜しげもなく上半身裸で晒している。



「いやー。皆強そうだな。俺なんかじゃとても敵わないな」



本音でそう呟く。すると、イーサンは俺に向かい囁いた。



「……そこで、ひとつジャッジ様にお願いがございます。私に見せてくれた魔法をこの者達にも披露して頂けないでしょうか?」



俺は理由が分からず、イーサンに尋ね返す。もちろん小声で。



「なんでだ?」


「はい。ジャッド族は強さに憧れを抱きます。これから王となるジャッジ様の強さをこの場で示せば、この者達も自ずとジャッジ様への忠誠を誓うはずです」



……なるほど。つまり、弱い王には付いていきたくないわけだな。まぁ、ジャッド族からすると当然のことなのかもしれない。今後の為にも、ここはイーサンの言う通り一発かましといた方が良さそうだな。



そう思った俺はイーサンに向かいひとつ頷くと、ジャッド族の戦士達に向かい口を開く。



「ジャッド族の勇敢な戦士達よ。俺がハートランド国王ジャッジだ。君たちの強さは族長であるイーサンから聞いている。実に頼もしい限りだ。……そこでだ、今度は俺の力も見せようと思う。自分達の王が弱い男だとがっかりするだろう?」



そこまで話すと俺は周りを見渡し、前回穴を開けた山に向かい右手を上げた。

どうせこの土地はもう離れる訳だし、前回ので木も無くなってしまった。遠慮することはないだろう。


そして全身の魔力を解放させながら、再び口を開く。



「あの山を見ててくれ。そして俺の強さに納得できたらでいい。これからハートランド王国を一緒に盛り上げていってほしい」



そう言うと、右手からイメージした魔力を放出した。

今回はラミィに教えてもらって、やっと上手く使えるようになった氷魔法だ。


俺の右手から放出された魔力は、イメージ通りに大きな氷の塊となり山に向かう。そして徐々に先端を尖らせながら山に近づき、前回空けた大穴に突き刺さった。


ドーン!


という音をたてながら突き刺さった巨大な氷の槍は、大穴に収まりきらず、半分ほどは山から突き出している。穴の周囲の山肌は衝撃で崩れ、山の形が変わってしまった。


どうかな?と思いながらジャッド族の戦士達の方を見ると、皆山の方をじっと眺めているが反応がない。


しまった。少し地味だったかな?

と思った俺は更に魔力を放出し、大量の水を山の上空から降らせ、それを瞬時に凍らせることで山自体を凍り漬けにした。


これでどうだ!と再度戦士達を見ると、先程と反応に違いはなかった。


まだダメなのか?……仕方ない。こうなれば得意の火魔法で山全体を丸焼きにするしかないか…。


と山に向き直り、右手を上げようとすると、



「も、もう十分です!お止めください!ジャッジ様!」



と、イーサンが必死な顔で止めに入ってきた。


俺はイーサンの言葉で上げようとしていた右手を下げ、魔力を抑える。



「もういいかな?なんか反応がイマイチだからもう少し見せようかと思ったんだけど…」



俺がそう話すと、イーサンはジャッド族の戦士達の方を指差しながらこう言った。



「もう十分ジャッジ様のお力は伝わりました。ご覧ください。彼らは驚きのあまり身動きがとれなくなっております。これ以上驚かせると倒れる者が出るかもしれません」



イーサンの言葉に戦士達を改めて見ると、確かに誰一人微動だにしない。それどころか一番端のまだ若い戦士は、ズボンは濡れ足元に水溜まりができている。

……これはアレだな。うん。気付かなかったことにしてあげよう。


俺がそう気遣いの心をみせていると、イーサンは身動きしない戦士達に向かって大声を張り上げた。



「お前達!驚いたであろう。これが我らが王となるジャッジ様のお力だ!私は初めてこのお力を見せて頂いた後、すぐにジャッジ様に忠誠を誓うことを決めた。お前達も我らが新しい故郷となるハートランド王国と、その国王たるジャッジ様に忠誠を誓えるか?不満があるものはこの場で申せ!」



その声を聞いたジャッド族の戦士達から、不満の声はあがらなかった。それどころか、全員が俺に向かい跪き頭を垂れた。もちろんズボンを濡らした若い戦士も、自らが作った水溜まりに膝をついている。



その後衝撃から立ち直った戦士達は、改めて自分の口からハートランド王国と俺についていくと誓ってくれた。

また、各々の村の男達にもさっきの光景を伝え、俺への忠誠を誓わせると約束してくれた。


魔法の力を見た戦士達は、これから自分達の王となる俺が大きな力を持っているのがうれしいのか、皆とても興奮しているようだった。喜んでくれたなら俺もうれしい。


ちなみに、戦士達から相撲に誘われたがそれは断った。俺では相手にならないだろう。是非ウィルを誘ってみては?と教えておいたが、誘ったら誘ったでウィルの力を見てまた失禁しなければよいのだが…。

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