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マイノリティ  作者: 胸毛モジャ夫
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遂にストックが切れました。

しばらく2~3日に一度の更新とさせてください。

大変申し訳ありません。

アルト王からの使者を追い返した後、俺は持ち場で待機していたわけだが、そのうち目前に広がるイーストエンド軍の動きが騒がしくなってきた。


 

「ジャッジ様。あれが新型投石機でしょうか」



ウィルがイーストエンド軍の最前線より少し後方を指差しながらそう尋ねてきた。


見ると確かに兵の背丈の5倍はありそうな大型の装置が運ばれている。そのまま運んでくるのは難しそうだから、バラバラにして運びおそらく後方で組み立てたのだろう。



「あぁ。造りは俺の見たことのある物より複雑だが、間違いなくそうだろうな」



俺は新型投石機と思わしき物を観察しながらそう答える。


俺が知っている投石機は、高さは人の背丈程で仕組みも簡単だ。しかし、今まさにイーストエンド軍が最前線に運ぼうとしている物は、従来の物と違い歯車の様なものが各所に見える。


俺にはその仕組みはさっぱり分からないが、飛ばす石等を載せるであろう半球の籠の様なものがあるので、投石機だと思って間違いないだろう。



ウィルも俺と同じ様に新型投石機を凝視していたが、それが着々と最前線に運ばれてくるのを見て、口を開いた。



「ジャッジ様。どうされますか?石を放たれる前に迎撃なさいますか?」



俺はウィルのその言葉を聞いて覚悟を決めた。


まだ両軍配置に着いたとはいえ、これまでにしたことと言えば使者を通じて煽りあったくらいだ。直接的な攻撃はまだ行われていない。


ここで俺が投石機に向かい魔法を放つと、それが本格的な開戦の合図となるだろう。そうなると、もう誰にも止めることはできない。どちらかが降伏するまで戦いは続くのだ。



「……あぁ。わざわざ被害が出るまで待つことはないだろう。俺が口火を切るよ」



俺はウィルに向かってそう返事をすると、一歩前に出て右手を突き出す。


そして、新型投石機と思わしき装置が所定の位置に着いて動きの止まったのを確認した俺は、慎重に狙いを定めて5割程の力で火球を放った。




俺の手から放たれた巨大な火の玉はゴウゴウと音を立てながら新型投石機に向かい、狙いを外れてその少し手前に着弾した。


ドカーン!


という音と共に周りにいるダポン兵諸とも新型投石機が炎に包まれる。直撃ではなかったが、投石機が木製だったのが幸いし思惑通り使用不能にできたようだ。



それに慌てたのはダポン軍である。砦攻略の先鋒的役割を担うはずの投石機がまだ何もしていないうちに燃えてしまったのだ。しかも投石機専門の兵や、たまたま周りにいた多数の兵も犠牲になった。



すぐに伝令が出され、将軍に状況が報告される。しかし、将軍はまだ戦は始まったばかりであり、新兵器のたった1つが使用不能となった位ではアルト王の判断を仰ぐ程ではないと思い、作戦続行を決断した。



「かまわん!次の投石機を出せ!」


「はっ!連弩はいかが致しましょう?」


「連弩も投入だ!砦の上にいる奴らを狙い打て!」


「はっ!」



将軍から指示を受けた伝令兵が各所に散っていく。



そう指示を出した将軍の目に、自軍の右翼側でも大きな火柱が上がるのが見えた。



「くっ…。あっちの投石機もか…」



そう言葉を漏らす将軍。



その火柱を上げたのは何を隠そうハートランド王国の誇る魔女であるラミィであった。




今回の戦にダポン軍が用意した新型の投石機は全部で5つだ。射程距離の長い新型投石機だけあって、今までの戦では1つたりとも破壊されることはなかった。そもそも敵の弓矢等では届くはずもなく、近くまで敵兵を寄せ付けることもなかったからだ。


5つでは少ない気もするが、持ち運ぶパーツもその巨体通り大きく、5つ分運ぶのがやっとだったのだ。



「さすがに全部やられることはあるまい。それにいざと言うときには爆弾もある」



そう独り言を漏らす将軍。



まだ戦いは始まったばかりだ。










「よし!当たった………か?」



俺は火柱を上げた投石機を見ながらそう声を上げた。



「お見事!………と、言いたい所ですが、少し手前だったようですね」



ウィルがそう冷静に分析する。



「……ま、まぁ当たったからいいだろ。それよりこれで相手も黙ってないはずだ。矢なんかで怪我しないようにしないとな」


「ご安心下さい。ジャッジ様に傷1つ負わせることはありません」



ウィルは自信を持ってそう答えた。


今回の戦ではウィルは常に俺と一緒に行動することになっている。籠城戦ということもあり、ウィルの一騎当千の活躍を見ることもなさそうだ。その代わり、ウィルが側にいる限り俺が攻撃を受ける危険性はほぼゼロだろう。



「頼りにしてるよ」


「はっ!」



そんなやりとりを交わす俺の目に、またも投石機を準備するダポン軍の姿が見えてきた。


今度は前回の位置より少し後ろであり、俺の魔法を警戒しているのが分かる。



「いやー。そんくらいじゃ大して変わんないんだけどなぁ」



俺は苦笑しながらそう言うと、またも火球を放った。



先ほど狙いを外した事を考慮して、込める魔力をさらに2割程増してある。前回よりも大きな火の玉となったそれは、今度は少し左側に逸れたがしっかりと新型投石機を周りの兵ごと火の海に沈めた。



これで既に2つ新型投石機を破壊することができた。俺から見て左に位置するラミィもさっき破壊していたから、これで合計3つだ。


一体いくつダポン軍が用意してきたのかは不明だが、 あれだけ巨大な物をそうポンポン出されることもないだろう。これからも見つけ次第大きな焚き火にすることにしよう。




あっけなく投石機を破壊されたダポン軍は、今度は兵を前進させ始めた。遂にその大軍でもって本格的な攻城戦を始めるつもりのようだ。



最前線より一列後ろの兵が、砦の上にいる我々に向かって矢を放ってくる。


散発的に飛来する矢であり、視認してから躱すのは大して難しくもないがとにかくその数は多い。途切れることなく撃ってくる為、なかなか備え付けの盾から体を出すことができない。



「……これはまいったな。数でこられるとこっちは弱いんだよなぁ」


「仰る通りです。こちらも弓で応戦するよう指示を出されますか?」


「……いや。それはガイル将軍に任せよう。きっと何か手を打ってくれるはずだ」



そう言いながら大人二人くらいならすっぽりと隠してくれる盾に身を潜める俺。周りを見渡すと、砦や壁の上にいる兵も皆盾に隠れているようだ。頑丈に作っただけあって、どの盾も壊れている様子はない。



しばらくそうして身を隠していると、砦や壁に昇る階段から全身フルアーマーの弓兵が多数姿を現した。


彼らが装備しているのは、元々ダポン軍の正式装備である全身鎧をラミィが魔法で強化したものだ。数こそ100も無いがその防御力は折り紙つきだ。


ほぼ目と間接部分以外隠されており、よっぽど運が悪くない限り矢でのダメージは受けないだろう。



次々と現れたフルアーマー弓兵は、堂々と砦や壁の上に仁王立ちになり矢を放ち始めた。


カンッ!カンッ!


と散発的に聞こえる硬い音は、鎧に矢が当たる音だろう。



そんな矢に怯むことなく、ダポン弓兵は次々と弓を振り絞り一射一殺の勢いで次々と敵兵を射抜いていく。


イーストエンド軍の数が多すぎる為あまり効果は感じられないが、確実に相手の数は減っていっているはずだ。それに大してこちらは完璧な防御で、今のところほぼ無傷といっていいだろう。いい調子だ。



「よーし!じゃあ俺も加勢しようかな」



俺もそんな弓兵に続くように、飛来する矢が少し弱まったタイミングで盾から手だけ出し次々に火球を放つ。



他の魔法でもいいのだが、やはり得意な火魔法は発動も早いし連射も効く。3割程の魔力で狙いも適当にとにかく数を撃つことにした。



どうせ狙わなくても俺の目と鼻の先にはわらわらと蟻のように敵兵がいるのだ。最後方にいるはずのケイレブ伯爵とホースの部隊さえ避ければ、どこに撃っても敵に当たることになる。



「お見事です!……それでは私も加勢することに致しましょう」



俺が魔法を放つのを見ていたウィルも、そう言うと腰にぶら下げていた革の袋から小石をいくつも取り出すと、それを左の手のひらに置き右手の人差し指で弾き始めた。


この小石はその辺で拾ってきた物を俺が魔法で強化した物だ。まだラミィ程上手く強化するこはできない俺だが、小石をまとめて硬く頑丈にすること位なら十分可能だ。


おそらく今ではこの小石は鉄と同じ位の頑丈さだろう。



一見子供が小石で遊んでいるように見えなくもない光景だが、実際はウィルの尋常じゃない指の力で弾かれた鉄並みの硬さの小石が、とんでもないスピードで飛んでくるのだ。


小石は命中した兵の体を貫通し、さらにもう一人か二人の兵に致命傷を負わせてやっとその役目を終える。


イーストエンド兵からすれば十分脅威だろう。

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