前記 ウーランルシア大陸神述曲
序曲
ウーランルシア大陸創世叙
世界は無から始まった。
色も音も何もなく、実に不思議な空間でしかなかった。無限な時が経ち、やがてその空間の中から一つの意識が生まれた。最初の元素神「光のルーデン」であった。ルーデンは無の中でまた数え切れない時を過ごし、無の寂しさに耐えきれなくなり、その寂しさを紛らわせるようにと自分の体の源の一部を引き剥がし、自分に似た意識を持つ元素を作った。それが次の元素神「闇のオーブラスト」の誕生であった。
無の世界に光と闇が生まれたことにより、世界から混沌が始まり、混沌が無を攪拌して世界に空と陸と海が生まれた。そしてルーデンは更に自分の源の一部分を5つに分けた。意識を持たないが、5つの元素の誕生であった。炎と水、木と土、そして大気とともに、世界は5種の元素によって満たされた。
炎は破壊と再生を司り、水は全てを包み込み、木は荒き生命力を、土は全てを育む、そして大気は全ての元素を融合させる力をもっていた。
元素によって満たされた世界には様々な気候や地形が生まれた。
世界が多彩になり、ルーデンは自らの血肉から様々意識を持つ物種を作り出した。その中でも、見た目が自分にもっとも近い存在、人族を作った。そして祝福として元素に共鳴し、駆使する力と5元素の源をこの最初の5組の男女に与えた。
彼らはそれぞれ自分に最も馴染む元素を選び、大地へと向かった。
もっとも豪快で情熱な組の男女は炎の元素を選び、南の常夏地帯でサマーレインとして名乗り、常夏城を築きあげた。その直系子孫たちは常夏王朝を築き上げ、代々の家長は常夏王として常夏地方を君臨した。その地に住む民は砂の民と呼ばれた。
もっとも円滑で協調性のある組の男女は水の元素を選び、湖の畔でオータムフロストとして名乗り、水に恵まれた彼らは湖に面する町を作り、その直系子孫たちは湖畔流域を支配し、一族は湖畔の領主になった。その地の民は湖の民と呼ばれた。
もっとも率直で一筋な組の男女は土の元素を選び、西の山谷地帯でエドワルフィヨールドとして名乗り、彼らは鍛冶が得意で、山谷で巨大な岩の宮殿を作った。その直系子孫たちは山谷をわが領地にし、代々の王は岩山王の号を受け継ぎ、その地に住む民は靱の民と呼ばれた。
もっとも優しく、無邪気な組の男女は木の元素を選び、東の大樹海でスプリングフィールドとして名乗り、世界が始まった頃からある大木の上で彼らは住処をつくり、スプリングフィールド家の家主は樹林の長と呼ばれ、その地の民は緑の民と呼ばれた。
もっとも冷静で穏やかな組の男女は大気の元素を選び、西北の高原でナランゲラウとして名乗り、争いの少ない高原で彼らは部落を作り、そしてナランゲラウ家の後継者たちは高原の主となり、その地に住む民は嶺の民と呼ばれた。
人々は光のルーデンを唯一神として信仰し、中部の平野で光の神殿を建てた。そして各地に住んでいる人族が交流や貿易が出来るようにと神殿を囲み、町を作った。その町は後に人族の繁栄より、ますます規模が拡大され、ついには光の自由都市と呼ばれた。自由都市の治安は光の神殿の大司祭や神聖騎士団によってなされて、都市は常時貿易する商人や光の神を礼拝する人によって溢れて、もっとも栄えた都市になった。
ルーデンは人族が自分の事を神として奉ることに大いに喜び、神殿には自分の光の元素源を雫にし、聖物として与えた。この雫を「聖光の雫」と人族は呼び、神殿の大殿のルーデン像の額にはめ込まれた聖光の雫から放たれた光の輝きは暗夜のなかでも決して消えることはなかった。
こうして人族はそれぞれ生息地を決め、子孫を繁栄させていた。その子孫たちも親交を深めて、結ばれていき、人族は繁栄していた。
しかし、繁栄した人族もみな同じように平等ではなかった。山谷地帯に住む靱の民たちは長年洞窟に住み続け、いつしかその姿は通常の人族より粗壮で、体毛も多くなっていた。その見た目の変化により、裏ではいつしか不潔な存在として忌み嫌われるようになった。しかし、靱の民たちはもとより他人の評判なんて気にしない達で、外界を気にせず生きてきた。
こうして、世界が構築されることにより、ルーデンは白昼を司り、暗夜の秩序をオーブラストに任せた。そして人々の神への信仰力や善の念は神たちの糧になっていたが、オーブラストは善の念よりも悪の念や負の力を好んだ。だが、大地では各種族は平和で、人々の悪の念は極めて少なかった。大地を戦や死、そして苦痛で負の力によって満たされることによって自分をもっと強く出来ると思ったオーブラストはいつしかルーデンの存在が邪魔だと思うようになった。
その悪の思いがついに頂点に達した日、オーブラストは行動に出た。真っ向勝負ではルーデンの圧倒的な光の力にかなわないと思い、オーブラストは真夜中の自分の力が一番強い時にルーデンを襲った。不意打ちを食らったルーデンは致命傷を負いながらもオーブラストに反抗し,神同士の戦いが突然として始まった。空から太陽が消え、戦いの音で山に亀裂が入り、戦いの衝撃で海の底にも穴が開いた、大地の生き物たちはみな恐れをなした。そして7日が過ぎ、ルーデンはオーブラストにも癒えないような傷を負わせたが、最後には力が尽き、その体は光の雫となり、空から降り注がれた。ルーデンは息絶える前に、せめて大地には光が絶えないようにと自分の一つの目を天空に残した。しかし、ルーデンの死と共に、神殿にある光の元素雫の光は絶えた。
同じく、オーブラストの傷も深く、その黒き血が大地に降りかかり、触れた地域は呪われ、闇の種族や邪悪な生物が世に現れ始めた。汚らわしい獣たちは意識を持ち始め、獣人族と呼ばれた。呪われた森林の狼の中から強い闇の力を持つダークウルフが生まれた。怨念を持って埋葬された人は棺桶から這い上がり、意識を持たずに生肉を求めてさまようようになり、その中でも強力な個体は意識を持ち、闇のパワーを備えながら生血を求めたものは暗黒血族と呼ばれた。
深手を負ったオーブラストももうすでに神として大地を支配する力がなくなり,傷を癒すために終点が見えない眠りに入らなければならなかった。二度と目覚めない事を恐れたオーブラストは眠りに入る前に自分の力を凝縮させた化身を大地に送った。その化身が大地の生物を支配し,そして恐怖や悪にまみれた自分の統治下であれば、悪の念が自分の糧になり、傷の回復も早くなるだろうとオーブラストは企みながら眠りに入った。
闇の王との戦い
オーブラストの化身は闇の王ドゥーケンと名乗り、未開の北大陸ウルドンを本拠地にし、その闇のパワーで闇の生物や種族を従わせた。そして、ドゥーケンは殺した生物の肉塊に命を与え、その腐った肉塊から生まれた醜い生き物たちをトロールと名付けた。さらにドゥーケンは全ての生物の強き部分をかき集め、最強の生物「ドラゴン」を作った。鋼のようないかなる刃も通さぬ鱗に覆われた翼を持ち、全てを溶かす獄炎を吐くその姿にドゥーケンは満足し「煉獄のツヴァイアサン」と名付けた。ついに準備ができた ドゥーケンは進軍を始めた。
闇の軍勢はまず西部の山谷地帯を襲った。
北の未開の地の動静に気づいた人族たちは戦の準備をしていたが、自分たちにこれからどんな恐怖が襲ってくるかは予測できていなかった。
谷間から無尽に湧き出てくる獣人族に靱の民たちは狼狽えたが、すぐに反撃に入った。強い体格を持つ靱の民たちは勇敢に戦い、獣人族の攻撃に何度も耐え抜いた。特に土の元素師たちは土の元素を使い、守りや攻めで数に勝る獣人族を苦しめたが、多勢に無勢で一人、また一人と倒された。そしてついに闇の軍勢は王宮にまで攻め込んだ。
第75代岩山王ガロン・エドワルフィヨールドは息子のガロン二世に一族の伝家の宝である土の元素源を託して、王家護衛隊を率いて敵を王宮内に引き寄せた。そして、岩の大殿を背水の陣に英勇に戦ったのち、獣人族の王「百刃牙のグダンダバ」とダークウルフ族の総統領「暗影のシュー」の挟み討ちによって殺された。脱出した王子のガロン二世は残部や民を率いて、自由都市に向かい庇護を求めたが、街の治安が乱れるという理由で自由都市の神聖騎士団に入れてもらえなかった。光の神に裏切られたとガロン二世と民たちは怒り、そして絶望に嘆きながら荒野をさまよっていたが、高原の主であるアラン・ナランゲラウが助けの手を差し伸べ、靭の民たちを高原に受け入れた。
谷間の地を占領した闇の軍勢は次に湖畔の町を襲った。
岩山王が戦死し、西部の谷間地域が未知の敵によって占領されたことはすぐに各方に知られ、しかし、湖畔の領主は自分の町は守りきれると信じてやまなかった。
湖の町は湖畔に面し、陸の方の三面の城壁は高く聳え立ち、そして、湖の民の水の元素師たちは湖から水を引き、町を空から覆うように強力な水のバリアを張った。闇の軍勢の主要軍隊の獣人族はこの堅い守りをどうしょうも無かった。町は闇の軍勢から守り切れたと思われたそのとき、北の空から恐ろしい咆哮が聞こえ、翼の震動で木々が折れ、熱風によって葉が一瞬にして枯れた。煉獄のツヴァイアサンがやってきた。
水の壁は龍の灼熱な炎に蒸発され、高い城壁は役をなさず、一瞬にして町は火の海になった。
湖畔の領主オニール・オータムフロストはドラゴンの圧倒的な力を見て、戦わずにして、廃墟となった町を捨て、妻の実父である常夏城の城主の元へ逃げ込んだ。
立て続けに二つの人族の勢力が壊滅させられて、ついに自分たちが相手にしている敵が人知を超えた存在であると人族は思い知った。そして、神殿の大司祭は光の神を旗に、人族の王たちを光の神殿に招集した。
一番勢力の強い常夏城主のギルターナ・サマレインは5000の夏地騎士を率いて、婿である湖畔の領主オニール・オータムフロストの1000名湖の民の射手とともに一番早く神殿に着いた。
その二日後に、森林の長であるアリッサム・スプリングフィールドが3000の藤甲兵を引き連れてやってきた。
亡き父の岩山王の王号を継いだガロン二世は招集に応じるつもりはなかったが、高原の主に説得され、しぶしぶ残部から500重歩兵を集め、高原の民の2000騎手とともに神殿に出向いた。
そして、何よりもこの人族の未来を賭けた戦いに各人族の元素師たちも戦いに参加したのであった。元素使いは最初の人族の直系である王族の中でも少ない存在であり、そして一般の民衆の中から元素の共鳴を感じ取り、駆使出来る者は更に少ないものであった。熟練した元素師がもつ力は絶大で、さらにその上である大元素師は一人で一つの軍団を覆滅させる力があるという。
こうして五人の人族の王は神殿に集結し、闇の軍勢に対する連盟軍「光神軍」が組まれた。そして神殿の大司祭も神聖騎士団長及び1000神聖騎士を連盟軍に参加させ、神聖騎士団の団長及び他の五人の王が連軍の指揮を執り、常夏城城主が総司令官の座についた。
結成された光神軍は早速闇の軍勢に向かって進軍し、森から平野の接ぎ口で鉢合わせた。そしてこのヤールデンの壺口と呼ばれた地で人族は初めて勝利をもたらした。
闇の軍勢は主に獣人族やダークウルフ族、トロール族、数は少ないが強力な戦力となるドラゴンと暗黒血族によって構成された。
人間族は単体での戦闘力では及ばないものの、組織された軍隊や強力な元素の力を扱う元素師で闇の軍勢に対抗した。その中でも人間族の王たちはそれぞれ最強クラスの大元素師であり、更に王にしか融合できないそれぞれ先祖から受け付いた元素の源を血脈融合することにより、王たちは神に近い元素導師という存在になることができた。
団結した人族の力は強く、軍勢は破竹の勢いで闇の軍勢を押し返した。そしていくつかの戦いを経て、ついには闇の軍勢の本拠地ウルドン大陸まで攻め込んだ。しかし、初めて直接対決したドゥーケンの闇の噸食する力が圧倒的で、人の王たちが持つ元素の単体の力ではとうていかなわなかった。連合軍はウルドンの埋骨荒野で歯止めを食らい、壊滅の危機にあった。
ドゥーケンに勝すべを見いだせない人族大軍の元に、神殿から聖跡が起きたという朗報が入った。なんと光を失っていた神殿の聖器「聖光の雫」が突然と5色に光り出したのであった。ルーデンの導きであると信じてやまなかった大司祭は自ら聖光の雫を王たちがいる前陣へ届けた。
5色に光り輝くことは受け継いだ元素の源を示していると、5人の人族の王はそれぞれ受け継いだ元素の源を「聖光の涙」に封じ込んだ。世界を構築する5種類の元素の源がルーデンの一部に融合される事により,ルーデンの光のパワーが聖光の涙に現れ、ドゥーケンの闇の力を制する唯一の武器「ヴァルフレイ」が生まれた。
しかし、「ヴァルフレイ」に融合される力は極めて不安定で、全てを融合する大気の元素力を操る高原の主にしか「ヴァルフレイ」を駆使する事が出来なかった。こうして、ドゥーケンを消滅させる大任は高原の主に任されるのであった。
ドゥーケンに立ち向かう秘策を手にした人間族は再度軍勢を整い、ウルドンの埋骨荒野で闇の軍勢と衝突し、この戦いで王たちはドゥーケンの最強戦力の一人であるトロールの王「重峰のウードゥン」を斬殺した。そして魔都ゲルンベストに聳え立つ闇の神殿で闇の王の右腕である竜王「煉獄のツヴァイアサン」を倒し、ついに魔都ゲルンベストに攻め込んだ。闇王の大殿で五人の王と闇の王ドゥーケンの最終決戦がついに始まり、苦戦しながらもドゥーケンを追い詰め、そしてヴァルフレイが持ち出された。四人の王は死命を尽くして、ドゥーケンを牽制した。高原の主はヴァルフレイを駆使し、聖なる光のパワーがドゥーケンの闇の力を削り取っていた。断末魔の叫び声を上げながらドゥーケンの姿が薄くなり、将に勝負が決まろうとするそのとき、異変が突如して起きた。
大気の力によって融合された元素たちは急に不安定になり、ヴァルフレイの器である聖光の雫はその力に耐えきれなくなって、五つに割れたのであった。コントロールを失い、跳ね返った元素の力によって、高原の主は重傷を負い、意識を失った。
ヴァルフレイの聖光の力なくしてドゥーケンを完全に消滅させることは不可能だった。弱り果てたドゥーケンは逃げようとしたが、この機を逃すともう闇の王を追い詰めることが絶望的と思った残りの四人の王は必死に食い止めた。そして樹林の長アリッサムは木の元素の禁法「換命木封」を使い、自分の命を触媒にし、ドゥーケンを闇王大殿に封印した。
こうして、樹林の長の犠牲により、ドゥーケンは封印され、闇の勢力の主要軍勢もドゥーケンが倒された事によって崩壊し、残された少数勢力も今すぐに大きな脅威になることはなかった。
人族の戦士たちはやっとそれぞれのふるさとに帰る事が出来た。
重傷で意識不明の高原の主も帰郷の途中で目覚め、全ては良い方向に進んだ。鮮花や喝采によって大軍は自由都市に迎え入れられ、世界の色は鮮やかになった。
そして神殿では闇の軍勢との戦いで勇敢に戦い、命を捧げた人族の英雄たちを弔う追悼会が開かれ、樹林の長の息子たちは父の遺灰を誇りに迎え、自由都市の広場には亡き樹林の長の石像が建てられた。5つに割れた聖光の雫は神殿によって丁重にお迎えされ、修復ができないため,再びルーデンの神像に飾る事が出来なかった。その代わりに湖畔の主は湖で取れた世界で一番大きい夜明珠を献上し、ルーデンの神像に飾った。
湖の領主は廃墟になった町の近くで新たな町を着工し、岩山王も山間の獣人族の残党を一掃し、故郷に戻ることが出来た。世界には平和が戻ったかと思われたが、程なくして、不安な陰影はまだ世界を覆った。
どこからとなく、闇の王を仕留めるもっとも肝心の場面でヴァルフレイの中の元素の暴乱は高原の主の故意の仕業であり、高原の主は闇の王をわざと生かそうとしたからヴァルフレイを制御不能にしたのだ。そして自分の負傷も樹林の主が禁法を使う事は全て計算済みで、闇の王とは裏で取引をしていたと噂は大陸中に広まっていた。
噂というものは一から十、十から百、そしてそれが大半の人がそれを知ると歪んだ真実として生まれる変わることになる。
その歪んだ真実に対して最初に動いたのは樹林の長の二人の息子であった。父を戦で亡くした彼らは高原に赴き、真実を問い出そうとしたが、高原の主は会ってくれなかった。
ますます噂が真実であると確信した彼らは常夏城に行き、助言を求めた。優しい常夏城の城主は必ずや正義を貫き通すべきと言い、湖畔の城主も招き、常夏城で人族の裏切り者に対する討伐軍の連盟が結成された。常夏城主は谷間の岩山王にも使者を送り、討伐軍に参加するように呼びかけたが、岩山王は応じなかった。
三ヶ月後、再び組まれた大軍は異族ではなく、討伐軍として人族の一員に向けられた。
討伐軍の使者は高原の主の首と嶺の民の降伏を要求し、さもなければ皆殺しと宣告した。
高原の主は高原で絶対なる威信を持ち、民からも慕われていたため、要求はのまれることなく、激しい抵抗や長い期間の包囲戦は予測されたが、戦いは思いもよらぬ形で終わった。
罪なき自分の民には一切の手出しをしないでほしいと使者に伝え、高原の主は自らの命を絶った。そして、生前の命令により、嶺の民たちは降伏した。
しかし、高原の主の願いは叶わなかった。高原を占領した討伐軍は常夏城主の命により、10日間の略奪を許され、高原は人間地獄と化した。高原の主の一族は尽く殺され、そして大気の元素源も混乱の中で行方を消した。
高原を制圧した討伐軍は解散されることなく、次は岩山王の谷間の地に向かった。人族の裏切り者への制裁に参加しなかったという大義の名目で常夏城主が命令を出したのだ。
岩山王は大軍に恐れず、勇敢に戦ったが、戦場で敵の策に嵌まり、囚われの身になった。
谷間の地を占領した討伐軍はしばらく留まった。そして岩山王及び一族は追放され、一族の伝家の宝、土の元素源も取り上げられた。
討伐軍が谷間の地に留まっている間、樹林の長の長子が急に謎の急病に冒され、命を亡くした。人々はこの地の呪いと噂をし、恐れた。長子の死により、次子が長の位を受け継ぎ、新たな樹林の長として名乗った。
そして、王たちは軍勢を率いて、自由都市へと向かった。神殿にて光の神への聖與儀式
を終わらせたのち、常夏城主ギルターナは湖畔の領主及び樹林の長の支持の元で世界に向かって宣言をした。「人族は闇の軍勢に滅ぼされかけ、そして人族の中に裏切り者が現れ、全ての元凶は人族の団結のなさにあり、人族は一人の王によって統べられるべきであり、常夏城主は他の二人の王、及び光の神殿大司祭の公認により人族の統一王として認められた。人族はこれにて一つの王国としてあり、初代の王のギルターナの名前にちなんで、ギルターナ王国と国名が決まった。湖畔の領主及び樹林の主はそれぞれ公爵の地位を与えられ、彼らの領地も変わらずに保たれた。
高原の地及び谷間の地はそれぞれ王の兄弟が鎮守として送り込まれて、その地を管理することになった。
こうして、幾多の戦いや紛争を経て、人族は統一され、ギルターナ王国はウーランルシア大陸で栄えていた。
二百年あまりの平和の年月が経ち、闇の足音はまた人々に歩み寄ろうとしていた……