気づいたら手に傷ができていた
魅力があるとは思わないが、依存してしまう先。
彼女は私にとってそんな存在だった。
いつものルーティンを終え、風呂場の鏡と向き合う。
とても泣きそうで苦しくても、目から出る水分は、湯船に溶けた分残ってはいなかった。
頭がくらくらして思わず座り込む。
すると、彼女の声が聞こえた。
「私なら、貴方の苦しみを和らげることができるよ、」
私は知っている。
彼女とここで接することが、良いものではないということを。
一時的に楽になり、安心し、彼女にきっと私は感謝するだろう。
しかし、毎度、何か大切なものを失った気分になるのだ。
「おいで、抱きしめてあげる」
彼女は笑ったーーーように感じた。
私は知っている。
彼女とのことを周りの大人が知れば、悲しむということを。
親も先生も、友達も、きっと困惑してしまう。
自分の手の甲には、昼に一度貼り直した絆創膏の跡がくっきり残っている。
その幅をみて、少し考えた。
「ーまだ少しなら大丈夫かもな」
私がそう言うと、彼女は更に笑った。
少し嬉しくなる。
彼女の元に体を預ければ、痛みも感じなかった。
私はすぐに彼女のことを忘れてしまった。
「なんでこんなことまたしちゃったんだろう、隠しきれるかな、なんて言い訳しようかな?」