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下手くそな僕。

作者: ひーたー

必死に走り続けた4年間だった。

がむしゃらにもがいて食らいついて、貶され、蔑まれ、それでもあなたに届いて欲しくてただただもがいていた。結局残ったものはうまくもないギターだけだった。

あなたが居なくなってもう1年が経つ。また春が過ぎて季節が夏に移り変わる気配を感じる。こんな綺麗な空を1人で見ている。

急に全てがバカらしく思えて、怒りを覚えるがそれすらもぶつけるところが無い。

本当にどうしようもないなあとつくづく思う。

いま、あなたはどこで何を見て、何を感じているのだろうか、きっと僕の事なんか忘れていて、幸せに暮らしているに違いない。いや、そう願っている。これが本心なのかすら今の僕にはわからなかった。

生きることすら下手くそな人間だと改めて思った。


夕方家を出て、いつもの道を散歩する。道中、これからどうしようかと考えるけどすぐにどうでもよくなり考えるのをやめる。

いつも立ち寄る公園のブランコに腰掛ける、夕暮れ母親に手を引かれて帰る子供を横目に自分にもあんな時があったのかと思い出を漁るが、遠い昔のことでその記憶には靄がかかっていた。

あなたに言ったひどい言葉達はしっかり覚えているのに。

あと少しで夜が来る。


夜も公園で思い出を漁る。

あなたとよくきた公園でもあるここはどこか悲しく映る。

もう一年も前の話なのにこの記憶だけは鮮明に残っていて君の泣き顔まではっきりと脳裏に刻まれている。

僕はその風景を手帳に書き留める。

やっぱり僕は弱くて泣いてしまった。

この虚しい気持ちも全部僕のものだ!っと開き直ると何故が心が満たされた気がした。

ただ一つ言えるのは僕の成果や頑張りを最後まであなたに見て欲しかったと言うことだった。


家に帰り、もう一度下手くそなギターを手に取ってみる、結局僕にはこれしかないのか。

好きなコードをかき鳴らす、あなたも好きだと言ってくれたコード。ギターの弦が鳴くように響く。弦の振動が指に伝わる感覚。この感覚がたまらなく好きだ。僕は、また涙が出てきて、止まらなくて。

もう一度だけ、もう一度だけ、僕は、僕は今度は自分のために頑張ってみようと思った。

外は朝焼けが顔を覗かせる。白んだ空は街を照らす。

今日からまた頑張ってみる。

いつか、遠いあなたに届くまでは。


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