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HIT BOX  作者: もつ鍋
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異世界放浪 Dead and run

 


 月月火水木金金

 安息は無い。

 主は死という安息をお創りになった。


 


 確かにそう思う。ティッシュペーパーっていうのがあるだろう?様々な用途があり、なんにだって使える。たまーに二枚取ってしまうこともあるし、よくよく考えりゃティッシュはもともと二枚だ。つまり・・・、とても優秀なんだが、理解されていないんだ。俺はお前らのことをそう思っている。だろ?お前らはいつも優秀だった。だからこそ殺したくなかったんだよ。だってティッシュだっていつかは空になる。買いに行くのが面倒なんだ。。。だろ?赤坂クン?


 赤坂「えぇ、まぁそうですねぇ。」

今日はついていない日だった。朝の占いは11位だったし、タバコも切らしていた。そしてなにより、死ぬ。南の言葉だって聞き取れなかった。聞こえるわけがないだろう。人を砂袋のように殴りやがって。えぇまぁそうですねぇ、いつも他人を肯定してきた言葉だ。二十五年、毎日のように使用した。人間はこの言葉がよっぽど好きらしい。


南「お前はもっと賢くていいやつだと思ってた。。。うちの組の鉄の掟を忘れたのか?えぇ?赤坂クン。薬物が大半のシノギを占めているのは知っていてか?なんで手ェだしたんだ?えぇ?おい。」

赤坂「それは。。。その・・・・」

知らん。と答えてやりたかった。昨日までは南米産コカインのgm数に異常はなかった。それが突然きっかり200gきえた。5人で運んだうちの一人が俺だった。疑われるのは仕方ない。俺は一番最後らしい。4発銃声が聞こえたから。


南「お前じゃなかったらなぁ。俺は200gとティッシュ五枚を失ったマヌケなんだよ。わかるか?えぇ?埋め合わせしなくちゃならなくなるんだよ。」

赤坂「埋め合わせ?それって誰への」

殴られた。そういえば質問する許可は無かった。でも確かにそうだ。だれにコカインを売っていたのだろう。うちの組は関東で最も勢力のある新潮会の中堅組織、上の大兄貴である会長は薬物売買を知らない。疑問が頭を巡る。


南「200gは戻らねえ、だからよぉ。おまえが埋め合わせに行け。赤坂」

赤坂「え?」

そう言われてまた袋をかぶせられた。たしかそういっていた気がする。数発殴られた後そのままバンに乗せられた。何がなんだかわからずに降ろされた。もうわからない。自分が死んだのかどうかも。南がまた何かをしゃべっているが聞こえない。でも最後だけ聞き取れた。それは俺の人生の中で最も冷たく、そしてドス黒い声だった。


南「死んだほうがマシだと思わせてやる。」


そして俺は目を閉じた。何故か心地が良かった。




・・・目が覚めるとそこは真っ白な雪原だった。とても寒い。いや寒すぎる。日本の10月にしてはおかしい。遠くに太陽が見える。それ以外は吹雪で見えない。服は着ているが背広とくたびれたシャツだ。防寒には程遠い。聞いたことがある。人間が極寒の世界で長時間いるのは危険だ。主要な臓器に血液が送られ四肢に血液が行かなくなる。とりあえず唯一見える太陽に向かって歩いた。


赤坂「は・・・し。ん、あ」


呼吸をしようとすると変な声が出る。肺と食道が異常に冷たい。


歩き続けた。結論から言うとそれは太陽ではなかった。灯台だ。その横に小屋がある。助かった。進化と思った。助けてくれ、電話を貸してくれ。脳が最後の活力を出し始めた。ノックをする。返事がない。次はノックというよりドアを殴る。


赤坂「あぁ!う、た、て」

サトル「はいはい、どなたですか?でも、」


そこから先は聞いてなかった。床に倒れ、そのまましばらく動けなかったからだ。




サトル「はいこれホットミルクです。」

赤坂「あぁ、ありがとうございます。」


やっと落ち着いてきた。よくみるとこの男性は若い。19か18、いや二十代にもみえる。一人暮らしだろうか、最低限の家具と、、、あれは猟銃だろうか?


赤坂「。。。あ、赤坂栄介と申します。本当にありがとうございました。」

サトル「いやいやいいんですよ、むしろほっとけっていうのが難しいので。ところでなんであんなとこにいたんですか?」


。。。そうだ。なんであんなところにいたんだ?たしか死にかけて、、、バンに乗ったところまでは覚えている。そこから、、、そうだここは日本のどこだ?

赤坂「それは、、、そうだ、ここはいまどこなんですか?出来れば電話をお借りしたいんですが、、、」

サトル「デンワ?あぁ、いいですよ、はいこれ」


渡されたのは黒電話だった。博物館でしか見れない代物だ。売ればいいだろうに。しかしおかしい、ダイヤルが回せない。しかもコードもない。完全ワイヤレス黒電話だ。


赤坂「なぁ、いくら骨董品とはいえ使い方くらいはわかるぞ?ダイヤルとコードがなくてどうやってかけるんだ?」

サトル「ダイヤル?とコード?っていうのが必要なんですか?すいません、田舎で暮らすものですから古いものしかなくて、最新のデンワはそうなっているんですねえ、よければ使い方を教えましょうか?」


なにかおかしい。さっきから電話のイントネーションも違う、第一。。。


赤坂「なぁ、ダイヤルとコードなしでどうやってデンワをかけるんだ?」

サトル「?魔術以外に何があるんですか?」


やはりそうだ、気がちがっている。このサトルという男は恩人だが、いささか俗世から隔離され、おかしくなってしまったのだろう。


赤坂「そうか。そうだったな。なぁここは日本のどこなんだ?都内が近いなら吹雪がやみ次第歩いて帰るよ。」




サトル「二ホンって何ですか?ここはザハル湾ですよ?歩いて帰る人はいません」


何を言ってるんだ?こいつは。

サトル「ほら」


そこには見たこともない字と、見知らぬ大陸があった。悪い夢をみている。

サトル「二ホンって、、、どこなんです?」


暖かかった体から冷や汗が出てくる。手が震え始めた。目もかすむ。悪い夢を見ている。きっとそうだ、目を閉じれば覚める。しかし目を閉じると南の言葉が反響する。死んだほうがマシ。その言葉はきっと脅しではないのだろう。日本の軍歌にこんな言葉があった。月月火水木金金、安息などない。




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