1 【番外@犬目線@ほのぼの】救世主と言われ世界を救い続けてきたけど疲れたのでもう辞めます。第二の暮らしは田舎で農業です。アフター
以前、短編で公開した「救世主と言われ世界を救い続けてきたけど疲れたのでもう辞めます。第二の暮らしは田舎で農業です。」の犬視点のお話です(https://ncode.syosetu.com/n0235gi/)。
短編もの続きが苦手な方はご自身の判断で回避してください。
シリーズ関連付けはしますが、こちらに大本の救世主~を格納予定はありません。
大本の救世主~を読まなくても読めます。
我輩は柴犬である、名前はまだない。
「いや、名前あるだろ」
「へへへー」
一応名前はあるけど、犬なのは事実です。
ご主人に忠実なカッコいい犬。
「自分で格好いいって言う?」
今、僕の隣にいるのは猫。
名前もあるし、猫のご主人も僕と同じ。他にもたくさん仲間がいる。
「ウソついた!カッコよくてカワイイ!」
「アホ…」
僕の家はとても大きくて、人間と一緒。
僕のお仕事は畑を荒らす敵を追いかけて畑の食べ物を守ること、ご主人である人間を守ること、そして人間のいやしになること。
天職だと思ってます。
今は畑の見回りが終わったので、人間に抱っこされたり撫でられに行こうかなーって考えてて。
それを知ってるのか隣の猫が話しかけてくる。
「…どこに行くんだ?」
「んー、最近来たご主人のとこかな」
「新しい人間か」
「あのご主人に撫でられると気持ちいいし!」
「そうだな」
「あと、あのご主人悲しそうだし」
「そうだな」
今回のは結構根深い訳ありだって、他のご主人や仲間のみんなが言ってる。
僕のご主人はたくさんいて、少しずつ増えてる。
どのご主人も僕のことをとてもかわいがってくれるから僕もとっても好き。
「一緒に行く」
「うん!」
新しいご主人は畑仕事を終えたのか、お仕事に使うものをきれいにしてしまってるとこ。
一緒にいるのは僕をここに連れてきたご主人。
来たばっかりだから、色々教えてあげてるみたい。
このご主人、いつも新しいご主人連れてくるし、連れてきた新しいご主人の面倒みてるなあ。
「ご主人!」
『あぁ』
気づいて笑ってくれる。
いつものように撫でてくれる。
とてもうれしいし、とても好きな時間。
新しいご主人もって顔を向けたけど、おろおろしてた。
困ってる。
初めて会ったときもこんな感じだった。
その時はご主人の手で撫でてもらったら気持ちよさそうだなーって思ったから、僕から頭をご主人の手につっこんだ。
すっごく気持ちよかった。
『ほら、撫でてあげなよ』
『え、えぇ…』
少しずつご主人の手がやって来る。
早くって思うけど、ここは我慢。
ご主人は撫でてくれるし。ちょっと時間かかるだけ。
僕、きちんと待てができるいい子なのです。
「お先に」
「あー!」
僕とご主人の間に入って先に撫でられにいった。
猫のこういうとこ嫌い!
するっと間に入ったり、ご主人の足元入ったり、肩に乗っかったり。
ずるい。
撫でられる猫をしり目にあっちにウロウロ、こっちにウロウロするけど入る隙間がない。
「うわあああ」
「うるさいぞ」
『おや、焼きもちかな』
『え?!』
そうして猫をどかしてもらう。
連れてきてくれたご主人に抱っこされてるのも羨ましいけど、今は新しいご主人に撫でてもらうのが先。
嬉しくてご主人に飛び込むと、変な声が出てた。
「わーい」
やっと撫でてもらった。
うん、やっぱり新しいご主人の手は他のご主人たちとちょっと違うみたい。
なんか、とっても元気になる。
『よかった』
新しいご主人は撫でるとこう言ってる。最近すこし減ったかな。
撫でられてるとご主人もすこし笑ってくれるから僕もうれしいです。
「ここにいたか」
「あ、アニキ!」
アニキは僕が来る前からここにいる犬でみんなのリーダー。
どの犬よりも速く走るし、頭もいいし、人間が何を言ってるかもわかるすごい犬。
「村長の奥方様がにわか雨が来ると仰っている」
「うん?」
「急遽家畜を小屋に戻すことになった」
『おーい』
『どうかしたかい?』
『ばあ様が雨来るってー雷もあるから家畜戻しとけってさー』
ここには僕たち犬や猫以外に、豚、山羊、羊、鶏たちがご主人たちに飼われてて、ご主人たちが食べたりするために飼ってるって。
僕たちは人間に食べられない。
そこはアニキにきいてもイマイチ分からなかったけど、僕のお仕事に家畜の面倒をみることも含まれてるから、急いでアニキと一緒に移動する。
ご主人たちも一緒。
果物がたくさんあるとこを抜けるとずーっと芝生で走るの楽しい場所になるけど、ここに羊とか山羊が自由にしてる。
「鶏と豚を頼む。終わり次第こちらに合流だ」
「はーい!」
アニキたちは遠くの羊たちのとこへ走っていった。
僕は鶏と豚にささっと小屋に戻ってもらって、アニキたちのとこへ追いかける。
ご主人たちも一緒。
豚や鶏は機嫌悪くなければ話すとすぐに戻ってくれるけど、羊と山羊はなかなか話してもきいてくれない。
アニキの言うことですらたまにしかきいてくれない。
頑固ものだってアニキがよく言ってる。
でもこの広いとこでのんびりしてたいのに、ダメって言われたら僕もちょっと帰りたくなくなるかも。
なんてアニキに言ったら怒られそうだから言わないけど。
『雲が…』
『さすがばあ様。占い通りだなー』
『…すごい方なのね』
村長のおくさん、おばあさんは村長みたくいつも外に出てこないけど新しいご主人みたく、とってもあたたかくなる手をしてる。
あとなんかいろいろ見えるってきいたし、僕たちと話せる。
人間の中では珍しいってきいた。
「すごいね」
「ばあさんの占術に間違いないからな」
「せん…?」
なんとか間に合って、村長のおくさんの言った通りカミナリと雨がやってきた。
今はご主人たちも休憩かねて、家の中でのんびりしてる。
今日は一番新しいご主人のとこにした。
『奥様すごいのね』
『ばあ様は占い師だからね。得意なんだよ』
『あまりお会いはしたことないけど…神秘的な方だわ』
『そうだね』
訳ありが来るってアニキたちも言うけど、最初は村長とおくさんとアニキだけだったってきいた。
ここに住むのを決めて、すこしずつ人や僕たち動物が増えたって。
ここに決めたのはおくさんが人の多いとこがダメだったからっていうのもきいた。
おくさんと直接話したときも同じことを言ってた。
あと仕事がイヤになっちゃってねって言ってたから、ここにくる人間はお仕事イヤになったのかなーと思ってる。
でもここにいればみんな笑うようになるから、ここのお仕事はイヤじゃないんだと思う。
「ご主人」
『ん?』
『ずいぶん君に懐いたね』
撫でてほしくてご主人の手に頭をつっこむ。やっぱり撫でてもらえるのはとてもうれしい。
「撫でられるだけが仕事なんじゃないのか?」
「それでもいいやー」
「…アホ」
雨が止んだらまた外に出てお仕事だから、それまではひたすら撫でられます!
今日も僕はしあわせです。
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犬視点で書くことが出来るのかチャレンジ