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受け入れ難い再開


それから数年、私はイリアとして生きながら、いつか御屋敷に行くことを夢見て暮らしていた。


勉強はクシャとしての記憶がある分幾らかマシではあったが、あの頃よりも少し教育のレベルが上がっていた。

お母さんやお父さんを騙している様で気が引けたが、今の私はイリアでありクシャなのだとして、なるべく考えないようにしていた。



そして6年の月日が流れ、私は15歳になった。


そしてチャンスは訪れた!


「リーン家の御屋敷の求人があったんだよ!一緒に応募してみない?」

それは、隣の家に住むイリアの親友、ミーヤによってもたらされた願ってもない幸福だった。

「その求人ってどこで見つけたの?公爵家の求人なんてあまり公にされないのに」


そう、公爵家に仕える使用人達は、私の様な例外を除いて主に人伝てに採用されることが基本とされる。

街頭にビラを貼るよりは効率は落ちるが、信用度は段違いだからだ。


「それがね、リーン家の当主様が台頭なされて今人手不足なんだって、それで大広場でビラ配りをしてるらしいよ?」


公爵家の情報は中々出回ることは無い。特にリーン家は、出自がエルフ族という事もあって極秘事項になっている。

だからこそ、今の当主が誰かは全く分からないのだ。

私が死ぬ間際に当主代行をされていたリョーフだろうか…でも、規律を重んじる彼女がこんな基本を大きく外れた指示を出すだろうか…


「その求人に応募資格なんかはあるの?」

ビラを2人で覗き込みながら聞いてみるが、どこにも書いてはいなかった。


「ここに書かれてないって事は特に無いんじゃないかな。急募って書いてあるって事は選り分ける時間も無いって感じだし」


「それで、どうする?イリアが嫌なら私1人で応募してみるけど」


「いや、私も行くよ。長年の夢だったし。それに…おっちょこちょいな親友を1人で行かせるのは心配だからね」


「イリア〜」

ミーヤは不満げな声を上げるが、その顔は楽しそうだ。


「それじゃ、明日の巳の刻!大広場に集合だからね!遅れないようにね!」


そう言うとミーヤは、自慢の深紅のロングヘアーを振り乱し、帰路を走り去っていった。


落ち着きを知らない親友に溜息をつきながら、私も帰路についた。



翌日、昨晩のうちに事情を話しておいた父と母に見送られ、大広場へと急いだ。

約束の巳の刻にはもう少し余裕があるが、早く行くに越したことはない。


「イリアー!遅いわよ!」

と思っていたのに…それよりも早くミーヤは待っていたらしい。どれだけ楽しみにしていたのか…


メイド長だった時の習慣として早起きはしているのだが、自信が無くなりそうだ…


そして巳の刻、他の応募者達と共に、リーン家の使用人に連れられ懐かしの御屋敷へと向かう。

リーン家の使用人とは言っても、私が死んだ後に来たのだろう…知らない女の人だった。


馬車に揺られながらしばらくすると、見慣れた光景へと切り替わっていった。まだメイドとして新米だった頃、何度もお買い物の度に通っていた道だ。


不意に懐かしさが胸を過ぎり、涙を流しそうになった。しかし、隣にいるミーヤにバレる訳にはいかずグッと堪える。


門を抜け、御屋敷の敷地内へと入っていく。

生前私が手入れしていた庭は、誰かが引き継いでいてくれた様だ。一切の不調和すらなく、完璧に手入れされていた。


「着きましたよ」

馬車が止まり、使用人に告げられる。


数台あった馬車から応募者達が降りてきて、広い玄関先は早々に埋まってしまっていた。


すると、玄関の扉が開き一人の青年が二人の付き人を従え姿を現した。


…その青年を、イリアは、クシャは覚えていた。だが…それでもそうであって欲しくなかった。信じたくはなかった。


「こちらが、我がリーン家の当主、リクト様でございます」


まるで世界が崩れていくような衝撃だった。容姿でいえば、更に大きく麗しく成長されていた。だがしかし…今目の前にいるリクト様は私が知っているリクト様と掛け離れた……


「………」


全てを蔑む様な、冷たい眼をされていた…

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