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神様の再就職~異世界にて最強冒険者にジョブチェンジします!~  作者: コウリン
第一章 仕事に疲れたなら、異世界へ
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第六話 冒険者ギルドマスターゴッツ


「それじゃあ報告を頼む」

 

 ロペスと自分が上質そうな革のソファーに座ると、机を挟んで反対側にゴッツが座る。


「まず一つ目は……やはり導きの森にデスベアーがいた。それに森の魔物の動きもかなり活発だ」


「やはりか……」


 ゴッツの顔がみるみる青ざめていく。


「ああ、間違いない。現にデスベアーに俺たちは危うく全滅しそうになったからな。なんとか生き残ることは出来たが」


「くそっ! 信じたくは無かったが、あの目撃報告は本当だったのか」


 ゴッツが目の前の机をドンと叩く。


「導きの洞窟で、いずれスタンピードが起きることは確実だろうな」


 ロペスは力なく首を振った。


 スタンピード……?

 後で誰かに聞くなり、本で調べてみるか。

 

「洞窟の制圧が終わるまでは、E級以下の冒険者は立ち入りを禁じないとダメだな。はぁ……魔素の量が安定するまでに、どれだけの被害と時間がかかることか……今のうちに他の街へも応援を出しておかなくてはならんな」 

 

「俺たちも装備を直したら優先して片付けてやるよ」


「すまんが頼む。この街で一番強いお前らの力が重要だからな」


「それなんだがな……その一番強いという称号は返上しなきゃならん」


「ん? どういうことだ?」


 頭をひねるゴッツに、ロペスは右手でこちらを指し示してくる。


「はぁ? まさかとは思うが、この男がお前らより強いなんて言うんじゃないよな」


「そのまさかだよ」


 ロペスの言葉に、ゴッツは目を丸くしながらこちらを見てくる。


「お前ら頭でも打ったのか?」


「んなわけあるか! この人がデスベアーに全滅しそうになっていた俺たちを助けてくれたんだよ」


「ほんとかよ?」


「ウソなんか言うか! この人はデスベアーを初級のファイアーボルトで跡形もなく消し飛ばしちまったんだぞ?」


「はぁ!?」


 ゴッツが声を上げながらこっちをにらみ付けてくる。


「どうも、俺はクロウという者だ。魔法使いをやっている」


 それに対してニッコリと笑って頭を下げた。


「……俺はゴッツだ。ここラージャにある冒険者ギルドのマスターをやってる」


 挨拶はしたものの、やはりまだ疑いが強いせいか眉間にしわは寄せたまま。


「ゴホン。すまん、ゴッツ。あと一つ報告があるんだが」


 ロペスが場の空気を変えようと咳払い。


「まだあるのか……? これ以上悪い報告はもう聞きたくないぞ?」


「大丈夫だ、これはよい報告なんだが……他言無用で頼む」


「一体なんだ?」


「クロウさんお願いします」


「はいよ」


 ロペスに促され、本で見た空間魔法の使い方を思い起こす。

 先ほどの魔石をイメージしながら机の上に手を掲げ、魔法を唱えた。


「オープン」

 

 すると、目の前の空間が歪み、さきほど収納した黒い魔石が机の上に置かれる。

 そのあとには道中で拾った赤や青、紫の魔石がゴロゴロバラまかれ、一部は机に乗りきらず床に落ちてしまった。


「なっ!?」


 ゴッツは思い切り立ち上がり、そのせいでソファーが横倒しになってしまう。


「一体……これほどの魔石をどこで!? しかも今のは空間魔法――!」


「さっき言ったとおりさ。このクロウさんがデスベアー一発でを倒しちまったときに、そいつから出たのがこの黒い魔石。他の魔石も帰る途中で襲ってきた魔物をクロウさんが片っ端から燃やしまくって出てきたもんさ」


「これほどの……それにこの巨大な黒い魔石。初めて見たが、本当にこいつがデスベアーを?」


「俺だって未だに信じられないさ。だが、確かにこの人の魔法で俺たちは助かったんだ」


 ロペスの真剣な表情にゴッツもようやく察してくれたのか、表情を和らげて頭を下げた。


「すまねえ。あんたの身なりではどうも信じられなかったんだが……こいつらの必死な表情とこの魔石を見るに、どうやら本当みたいだな。こいつらを助けてくれてありがとうよ」


「いやいや、勝手に助けに入っただけのことさ」


 ゴッツからのお礼にニッコリと笑って返す。


「とんでもねえ人だな……あんた。デスベアーを初級魔法で一撃で倒すだけじゃなく、使えるやつがほとんどいない空間魔法まで覚えてるなんてよ」


「だろ? どう考えても名のある魔法使いか、それじゃなきゃ女神ウルダ様の使いか魔王だな」


「っ!?」


 女神ウルダというフレーズに対して思わずビクッと反応してしまう。


 はぁ……願わくば彼女と出会わないことを祈る。


「さて、話は聞いたが、そうなるとこの魔石はあんたの所有となるわけだ……どうする?」


「どうするとは?」


 私は首をかしげた。


「簡単な話だ。こっちに売ってくれるのか、それともそのまま持って行くのか」


 ああ、そういうことか。

 

「それだったら、権利は全部ロペスたちに譲る」


「なっ!」


「えっ!」


 唐突な宣言に、今度は部屋の中のいた自分以外の全員が驚きの声を上げた。


「いやいや! クロウさんに助けてもらったあげくに報酬まで辞退されてて、あげくこんな魔石までくれるって言われちゃ俺たち立つ瀬がないぜ」


 ロペスは飛んでいきそうなくらいの勢いで首を振る。


「あんた、この石たちがどれだけの価値になるのか知らないのか? そうホイホイと人にやれるような代物じゃないんだぞ?」


「そうですよ、これはクロウさんがもらっておくべき物です」


「せめてこれだけでも持ってってくれよ」


「お願い、クロウさん。私たちのことは構いませんので」


 全員思い直してもらおうと必死のようだ。


「いや、俺にとっちゃそこまで必要のないものだ。むしろ装備を失ったロペスたちにこそ必要なものだろう?」 


 静かに、かつキッパリと答え、考えを変える意志のないことを示すように、ぐるりと部屋を見渡した。


「俺にとっちゃこんなものより、ロペスたちが開いてくれるという祝いの席の方がよっぽど嬉しいんだよ」


 ニッコリと笑みを浮かべる。


「わっ分かった……だったらこうしよう、クロウさん。あんたの実力は分かっているが、その身なりで今後旅をするのは色々と不便だろ? この街一番の仕立屋や道具屋、武器屋の奴らに頼むから、俺たちに装備を調えさせてくれ。あの魔石たちを売った金でならそれくらいはした金みたいなもんだからな」


 大量の汗をかきながら、ロペスが代案を出してくる。


「分かったわかった。ご厚意に預かるとしよう」


 その言葉を聞いて、全員がほっと胸をなで下ろす。


 遠慮せずに全部もらっちまえばいいのに……。

 律儀に恩を返そうとしてくれるなんていいやつらだ。


「それじゃあ、ゴッツ。すまんがこの魔石を買ってくれ。値段はそっちに任せるよ」


「ああ、だがこれだけの数だ、うちらの資金で全部買い取れるか……いっそのこと王都まで持って行った方がいいかもしれん」


「それはそうしたいんだが、導きの洞窟のこともあるし、そうそうここから離れられないだろ? どうせ王都に行くまでの費用で差額は埋まっちまうさ」


「うーん……分かった。とりあえず査定は急いでおくとして、前金で白金貨十枚を渡しておこう」


「ありがとよ、ゴッツ」


 ゴッツとロペスが握手を交わす。


「さあ、早く行こう! もうお腹が減って今にもぶっ倒れちまいそうだ」


 今まで食べたことのない、異世界の食事が食べられると思うと、どうしても心が浮き立ってしまう。

 

「ははっ、おかしな人だな、クロウさんは」


 ジョセフの言葉を皮切りに、一斉に笑いが部屋を包む。


「それじゃあ行きますか。俺たち四人が生き残った記念と、命の恩人との感謝を込めて、とびっきり旨い飯のある酒場を教えてあげますよ」


 ロペスの言葉に私たち四人は立ち上がり、部屋を出た。

 

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