第11話
活動報告
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大木が倒れた衝撃が収まると、俺は地面から大木を潜り抜けて這い出た。
もしも枝が突き出ている部分が俺が居たところへジャストフィットしていたら死んでいただろう。
いや、そもそも地面を殴って潜り込むと言う咄嗟の機転が効かなければ死んでいたのでは無かろうか。
この事実に悪意を感じ取った俺は、大木の軌道を逸した張本人のシュメラを睨みつける。
彼女は剣を油断なく構えて、ラアスが突っ込んで行った大木の残骸へ進んでいくところだった。
奴のことを責め立てたいが、今はアチラが優先か。
俺が後へ続くために立ち上がろうとすると、手を差し伸べられる。
「大丈夫かい?」
その手の持ち主はエオニオだった。
俺はその手を取ると、立ち上がって服の砂埃を払った。
「すまねえ。お前の方こそ大丈夫だったか?」
「うん…シュメラのお陰で何とか」
エオニオが笑みを浮かべた。
相変わらずのイケメンスマイルである。
俺はシュメラのせいで大木の下敷きになりそうになった疑いを話そうと思ったが、何の確証もないので止めておく。
それよりも今はやるべきことがあった。
「そうか。そいつは良かった。俺達も見に行こう」
俺がエオニオへ目配せすると、彼はコクリと頷いた。
二人で根本だけとなった大木を越えると、そこは酷い惨状であった。
大木までとはいかないものの、さらに2本の木がなぎ倒されて地面には紅い血溜まりが出来ていた。
そしてその惨状の真ん中で、ラアスはその巨体を地面へと沈み込ませていた。
血を流しすぎたのか瞳は光を反射していなかったが、ラアスには微かにだけ息があった。
ゆっくりと緩慢な動きで肺のあたりが上下している。
シュメラは立ち尽くして、そのラアスの様子をジッと見つめていた。
顔を見合わせた俺とエオニオは危険はなさそうだと、鞘へ剣を戻した。
「なるほどな」
すると突然、後ろから声を掛けられた。
突然のことなのでビビって後ろを振り向くと、声の主はカルコスであった。
彼はいつの間にかそこに立っていた。俺の強化された聴覚や嗅覚にも反応は無かった。
「ずっと見てたぜ。そして評定のほうだが……」
カルコスがラアスへ近づきながら剣を抜き、一息に振り切った。
鮮やかな断面を見せてラアスの首がドサリと落ちる。
「お前ら全員0点だ」
カルコスは血のついていない鮮やかな刀身を鞘へとしまった。
「良いか。殺るときは脚を斬ったり腹を斬ったりするんじゃなくて頭をかち割るか首を斬り落とすかにしろ。森にいる獣の大多数は昆虫みたいな生命力をしていやがるからな。中には頭を斬り落としても暴れまわる奴もいる」
ラアスの様子を思い出した俺は、納得する。
機動力を削ぐために脚を斬ったが、一撃で倒すことを狙った方が良いらしい。
「そして1人1人の問題点だが、エオニオとリューマは油断のしすぎ。シュメラは一撃でラアスの首を刎ねなかった事だな。特にシュメラは連日の狩りで説明したはずなんだから、もっとちゃんとやれ」
「はい」
シュメラは返事をした。
「まぁ、深層部と表層部じゃ獣の強さが違うからしょうがなかったかも知れないがよ」
「いえ、説明を軽んじていた私のミスです」
素直に非を認めて頭を下げるシュメラを横目に、俺はカルコスの言っていた事が分からずに頭を捻っていた。
深層部? 表層部? なんだよそれ。
俺の疑問は口に出てしまっていたようで、エオニオが小声で説明してくれた。
「この森は大きな山を真ん中に、円心上に広がっているんだけど、里があるところを境い目に山側の森を深層部。外側の森を表層部と里の人間は呼んでいるんだ」
「なるほど」
つまり俺とシュメラがグリーンウルフと戦った場所は表層部で、昨日までシュメラとエオニオはそこで狩りを行っていたと言うことのようだ。
そして深層部は表層部よりも獣のレベルが高いと。そう言えばアルギュロスも山には化物みたいな強さのが居ると言っていたし、山へ近付くほどレベルが高くなるのだろう。
あれ? 俺っていきなり深層部からなの? 表層部での修行は?
納得出来ない事実が浮上してしまったものの、俺はとりあえずエオニオへ礼を言った。
「サンキュ。助かったわ」
それにしてもエオニオはシュメラとは違って優しく解説してくれるな。
イケメンだからと目の敵にしていたが、エオニオは良い奴である。
今後とも仲良くしてもらいたい。
俺とエオニオの話が終わると、それを待っていたようであるカルコスは口を開いた。
「深層部初日と言うのもあるが、今日はこの辺で里へ帰ろう。そろそろ森も暗くなる」
空はまだ明るいが、確かに相当な時間を森にいた気がする。
そろそろ夕方になるだろう。
俺が空を見上げていると、カルコスが里へ歩き始めた。
それにシュメラとエオニオも付いて行ってしまう。
そこで俺は一同を静止した。
「ちょ、待ってくれよ! ラアスの肉はどうするんだ? どうやって里まで運ぶって言うんだ」
カルコスが振り返る。
「よく見ろ。腹を切ったときに内蔵が傷ついちまった。ラアスは毒性の強い植物やキノコを食べるからな。もう食べられん」
そう言うと、カルコスは再び進んで行った。
ラアスの食べた植物は胃や腸を通るから、内蔵を傷付けると毒が肉の方へ移ってしまうのだろう。
まるでフグ料理のようだと俺は思った。
せっかく狩ったのに勿体ねえ…。
シュメラの奴、普段は博識ぶってるくせに腹を斬りやがって。
後ろ髪を引かれる思いで、俺はカルコスの方を向くと歩き出した。
里へ着くと、西の空はオレンジ色に染まっていた。
剣の手入れや夕食と入浴を済ませた俺は、明日は絶対に上手く狩ると決意して眠りについた。




