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やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記  作者: スカーレット
間章~新米女神としての生活と神界の神々~
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第84話

「……全く、随分派手にやってくれたわね、スルーズ」


私の体にまとわりついていたというフレイヤの魂。

それをロヴンが元通りにして、元の姿に戻ったフレイヤは開口一番に文句を言う。

愛美さんはフレイヤが元通りになったのを見て、先日私がフレイヤに思い切り顔面パンチを入れた時のことを思い出して複雑そうな顔をしていた。


「……どんなに美人でも、あんな風に殴られると滅茶苦茶不細工になるんだな」

「な、何ですって!?私はどんな顔をしていても美しいのよ!!撤回なさい、人間!!」

「復活したてでいきなり喚くなよ、淫乱。それより聞きたいことがあるんだけど」

「い、淫乱!?本当あんたって失礼ね!!別に誰彼構わずってわけじゃ……」

「ほう?なら大昔に私のお気に入りに手を出してボコられたのは何ででしょうねぇ~?」

「…………」


まぁ大分前のことではあるが、ボコボコにした、というのは控えめな表現だ。

厳密には粉々にした。

そう、さっきみたいに。


あの時は修復に二百年以上の時間を要したとか言ってたっけ。


「そ、それより聞きたいことってロキの魂でしょ?それもあんたにまとわりついてるわよ。とっとと元に戻してもらったら?」


青い顔をしながらフレイヤがロヴンを見ると、ロヴンもやはりか、という顔をしていて、すぐに準備に取り掛かった。

何だよ、ロキとフレイヤはいつの間にこんな仲良くなったんだ?

というか何でよりによって私なんだよ。


「……やれやれ……やっと元に戻れた。言いたいことは色々あるけど、とりあえず今はいいかな」

「口の減らないやつだな。それより大輝が言いたいことあるってさ」


ロキも元に戻ってすぐ、不満を口にする。

殴られたり蔑まれたりするのが喜びみたいな、気持ち悪いやつだって思ってたのにどうも違うのだろうか。


「睦月、お前先に謝れよ。まさかとは思うけど有耶無耶にするつもりじゃないだろうな」

「…………」

「宇堂大輝、別に構わないよ。僕も散々煽ったりしたんだから」

「いやダメだ。こういうのはちゃんとしておかないと」


大輝にこう言われてしまったら、私としても謝らないわけにはいかなくなる。

それにしてもこんなクソみたいな連中に私が謝罪など……!


「……睦月?」

「わ、わかったから。そんな目で見ないでよ……悪かった、問答無用で暴力振るったりして」

「私たちも悪かったよ」


私に続いて他のメンバーも口々に謝罪の言葉を口にする。


「……まぁ、スルーズの口からそんな言葉が聞ける様になっただけでも、宇堂大輝の存在の大きさが伺えるね。僕は別に構わないよ。フレイヤも、いいかい?」

「仕方ないわね。もし本当に悪いと思ってるんだったら、男の時の大輝を貸してくれてもいいのよ?一日とは言わないわ。一晩だけでも」


この一言に、私を含めたメンバーがあからさまに怒りを露わにした。

こいつは懲りるということを知らない様だから、もう一度くらいわからせてやった方がいいのかもしれない。


「お前、もう一回ぶっ飛ばされないと気が済まないとかマゾなのか?何なら今すぐやってやってもいいんだけど」

「じょ、冗談でしょ……本気にしないでよ……」


いや、絶対本気だった、主に目が。

また手を出したら以前と同じかそれ以上の目に遭わされると思って、慌てて撤回したに違いない。


「ところで、どうだい?僕の教えた術は役に立ったみたいじゃないか」

「ああ、本当ありがとう。恩に着るよ。正直本当にこんな力が手に入るなんて思ってなかったから、これからが楽しみなんだよ」


ロキに向かって笑顔を向ける大輝。

汚染されるかもしれないから、もう少し離れた方がいい、なんて思うのは私の悪い癖かもしれない。


「それなら僕らも痛い目に遭いながら頑張った甲斐があったってものだよ。ねぇ、スルーズ?」

「…………」


本当に嫌なやつだ。

大輝がいなかったら問答無用でボコボコにしてるところなのに。

しかし、大輝からしたらこいつがいいやつに見えると言うのだからおかしな話だと思う。


「どうやらソールにも会えたみたいだし、僕としては親子の再会なんて本当にいい話だと思うよ」

「……はん。お前がそんなこと言うと、何か裏があるんじゃないかって、私は勘ぐっちゃうけどな」

「睦月……お前、ロキに何の恨みがあるんだ?」

「挙げたらキリがないけどね。まぁ今は何も言わないでおくよ」

「それより……私はもう仕事に戻ってもいいのか?」


話に入ってこられないロヴンが、漸く口を挟んでくる。

さりげなくフェードアウトしたって、別に大輝はソールにチクったりなんかしないと思うんだけどね。


「あ、そうでした!ロヴンさんありがとうございました。おかげでちゃんとお礼が言えましたので。また何かあったらよろしくお願いしますね」

「あ、ああ……」


特に含みなど持たせているはずのない大輝の言葉に、ロヴンは青い顔をしながら仕事に戻って行った。

私が嫌い、もしくは仲良くなれない連中とも仲良くできる大輝の性質は、ある意味で才能と言えるのかもしれない。


「また何か相談したいことがあれば、僕の方はいつでも承るよ、宇堂大輝。君はやはり見ていて楽しいからね」


ロキからそんな発言が出てくると、私としてはまた何を企んでいるのか、なんて勘ぐってしまう。

そしてそれは大輝以外のみんなも同じ様で、未だ敵意のこもる顔でロキを見ていた。


「わかった、ありがとう。色々世話になったよ。フレイヤもな。また何かあったら、よろしく頼むよ」


大輝は私たち女子メンバーと違って、二人に親しげな別れの言葉を述べる。

いくらソールの息子だからって、こんなやつらに……呑気過ぎると思うのは私だけか?


「それはお互い様さ。期待しているよ、新米女神」


そう言ってロキとフレイヤはそれぞれ別の方向へと消えていった。

物凄く嫌悪感のこもる表情をしているみんなを見て、大輝は不思議そうな顔をしている。


「何だよ、みんなまだあいつらのこと嫌いなのか?普通にいいやつらだったじゃん」

「結果だけ見りゃな。確かに向こうから暴力だのに訴えることもなかったってのは認めるよ」

「まぁ、確かにどっちかって言えば私たちの方が侵略者っぽかったかもしれないな」


まぁ、大体は私がキレて暴走した様なもんだけど。

和歌さんも愛美さんも、武器を取り出しはしたけど威嚇したりって意図があったわけじゃないし。


「それでも一言事情言ってくれたら、また違ったかもしれないのに。何でこんな手の込んだことしたのかな。もちろん普通に話したら、私っていうよりは睦月ちゃんとか明日香ちゃんが猛反対してそうだったとは思うけど……」

「私は確かに反対していたかもしれないわね。もっとも私は一応話くらい聞くと思うけど」

「……何か別の意図があったのかもしれないね」


別の意図……朋美は何となくロキの人柄をわかっている様なことを言う。

もちろん何気なく言ったに過ぎないのだろうが、その言葉に何か私も引っかかる様な感覚を覚える。

今すぐどうする、って言うのではなく、もしかして何か将来的に問題等があった場合に……いやそんな平和とか望む様なやつじゃない。


しかし、力を持った者というのは悪く言えば利用価値があるということになる。

そう考えるとロキが大輝を何かしらの用途で利用しようと考えていてもおかしくはないかもしれない。

全てが想像の域を出ない話なので、こんなところで考えていても仕方ないのだが。


「ところで……今更だけど、大輝くんの胸おっきいね」

「ん?そうなのかな……まぁ、男の時に比べたら確かに膨らんでるけど……」


そう言って大輝が何の気なしに自分の胸を持ち上げてみせる。

そしてそれを見た朋美が発狂した。


「何してんの、こんなとこで!!」

「は?別に自分のなんだからいいだろ」

「ダメよ!!私たちのがあるでしょ!?散々見て触ってしてるんだから我慢しなさいよ!!」

「何だその理不尽で滅茶苦茶な理論は……」

「どうしても触るんだったら、私たちのはもう触らせてやらないから!!」

「ええ!?そりゃないだろ、朋美……」

「ふん……」


朋美はああ言ったが、私としてはちょっとだけ触ってみたい、なんて考えてしまう。

桜子の言う通り割と大き目で、顔の次に母親似だな、という部分でもあると思う。

もっとも大輝のことだから、別にいいよ、なんて言いそうではあるが場所が場所だ。


さすがに自重する必要はあるだろう。


「なぁ朋美、悪かったよからあんなこと言うなよ……後生だからさ……」

「その若さで来世を賭けるのやめてよね……それに大輝はもう神なんだから、死ぬこともないわけだし、次の人生なんてないじゃない。そう考えると羨ましい話よね」


朋美の話で、私は一つ気づいたことがある。

それは、大輝が神になったことでもう死んでしまうという懸念が、完全に払拭されたのだということだ。

結果として、大いに喜んでいいというものにならないだろうか。


それがロキとフレイヤのおかげっていうことだけが、本当に腹立たしい部分ではあるのだが。


「朋美、よくそこに気づいたね。すごいよ」

「え?何?何で私褒められたの?」


よくわかっていない様子の朋美だったが、私が何故やり直しをしていたのか等の説明を簡潔に行うと、はっとした顔になって、その顔は徐々に得意げなものに変わっていった。

前にも一度話したはずなんだけどね、忘れちゃったかな?


「あ、な、当たり前じゃない。さすがにそれくらいはわかるわよ。そうよね?」

「…………」

「…………」


まぁ朋美が本当にそう思っていたのかどうかは置いといて、大輝が死んでしまうことがなくなった、というのは非常に喜ばしいことには違いない。

これからは極端な話、ちょっと変わった体質の彼氏、という認識でいればいいわけだ。

しかもちゃんと母親がいると言うこともわかったわけだし……とは言ってもあの母親じゃ色々と一筋縄でいかなそうなのが気がかりではあるのだが。


「そういや睦月はスルーズとして会っておきたい相手とかいないのか?俺の用事はもう済んだわけだけど」


大輝の質問に色々考えてみるが、私はこっちで友達が多いわけではない。

もちろんいないというわけでもないが、ノルンには割と頻繁に会っているし、別にオーディンに会って何をするということもない。

昔トールと酒を飲んだことは何回かあるが、今連れてるメンバーは未成年多いし。


大体トールの飲んでる酒なんか飲んだら、神力を付与していない今回は愛美さんでもどうなるかわかったもんじゃない。


「私は別にないかな。他に用事とかない様なら、そろそろ人間界に戻ってもいいかもしれないね。愛美さんとか和歌さんはまた明日、仕事でしょ?」

「そういえばその姿でトイレとかどうしてるの?ちゃんと作法とかわかっているのかしら」

「……それは、ネットで調べた」

「……言ってくれたら、みんなで教えてあげるのに」


みんなはそう言っているが、実は神の力でそういうのを省くなんていうことだってできる。

私は実際多用しているし、だけど大輝にはきっとそういう発想がないんだろう。

でも面白いから黙っておこうと思う。


もしかしたらそのうち自分で気づくかもしれないし。


それから私たちは人間界に戻って、またいつもの様な騒がしい休日を過ごすことになった。

しかしまたも私たちに迫る大きな問題に、この時は私たちの誰もまだ気づいていなかったのだ。

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