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やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記  作者: スカーレット
間章~新米女神としての生活と神界の神々~
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第77話

「大丈夫?冷えピタ替えるから待っててね」


大輝が誘拐されて女神になって、ソールに会ってと騒動がひと段落した。

みんなは案の定激しい筋肉痛が襲ってきて悶絶していたが、愛美さんだけは翌日にちゃんと筋肉痛が来たことを喜んでいる様だった。

大体まだ二十代で次の日に筋肉痛こないとか、運動不足も甚だしいだろうと私は思う。


私と大輝だけは、そんなみんなを高みの見物、と思っていたのだが何と大輝までもが熱を出して、未だに寝込んでいると言う。

おそらく女神化した余波というか、神の力にまだ体が順応していないものなのだろうと推測された。

よって、神力を用いて熱を下げるとか、そういう治療法を使うのは危険だと判断した私は結果としてみんなの看病をする羽目になった。


「悪いな……面倒かけちまって……」

「いいから寝ててよ。四十度も熱あるんだから。あと、下手に神力使おうとか考えないでよ?今はとにかく休むこと。訓練とかはまた治ってからやればいいんだから」

「ああ……すまん」


上気した顔で意識もぼんやりとしているのか、果たしてちゃんと私が見えているんだろうか、なんて考えてしまうがそういった心配はないだろう。

知恵熱よりは厄介だが多分、下がらない熱、ということもなさそうだ。

そしてみんなに関しても神力で増強された筋力が悲鳴を上げているという理由から神力で治すという方法は取れず、ひたすら湿布やら塗り薬を使っての治療をすることになった。


ちなみに和歌さんと愛美さんは仕事のはずだが、トイレに行くのですら床を這いずるという有様で、とてもじゃないが出勤は不可能ということで休みをもらった様だ。


『女神化の余波で、大輝に体調不良とか変なことが起きたりってことが考えられるから注意してね』


私たちが人間界に戻る直前に、ノルンがこんなことを言っていたのを思い出す。

あまりにも大当たりでちょっとびっくりしたが、逆に言えばきちんと大輝の体に神力が順応しようとしている証拠でもある。

しかし、変なことって言うのが少し気になるが、その変なことは特に今のところ起こっている様子がない。


なので私はとりあえず、みんなの看病に集中してまずは動ける状態に持っていかねば、と甲斐甲斐しく世話を焼いていた。



「うおお……体が軽い。今ならリンゴくらいは片手で握り潰せそうだ」


丸一日みんなが潰れていた次の日に起き出してきた愛美さんが、開口一番に物騒で女性らしからぬことを言い出した。

出来たらそれはそれで凄いし面白いんだけど、大輝が見たらまた恐怖を感じてしまうかもしれないな、とも思う。

ただ元気になったのは喜ばしいことだし、今日はちゃんと自分でご飯も食べられているので問題はないだろう。


他のみんなにしても筋肉痛はほとんどなくなったのか通常通りに食事や入浴等していたので、ここまできたら心配ない様に見えた。


「ああ……おはよう。悪いな、心配かけた」


そう言って起き出してきた大輝を見て、みんなびっくりしている。

帰ってきてすぐに人間の男に戻っていたからそれは問題なかったのだが、昨日あれだけの熱に浮かされていた大輝が今日は割と元気そうにしていて、空腹を訴えていたからだろう。

もちろんちゃんと体調が回復したことは喜ばしいのだが、これも神力の影響だろうか。


「しかしあれだな、今日も暑い……もう少し涼しくなったりしないもんかね」


何気なく放った大輝の一言。

しかしこれが、思わぬ現象を生むことになった。


「え?」


リビングを始めとして、寝室や他の部屋の空調全てが電子音と共に勝手に起動して、冷風を一斉に送り込んでくる。


「ちょっと、寒い!寒いわよ!」

「何、何で!?」


いきなりリビングがパニックになって、大輝も寒い、とか言いながら震えている。

ひとまずこのままじゃ体を壊しそうだということで、私は各部屋の空調を止めたり弱めたりして回る羽目になった。

一体何が起こったんだろう……故障とかなら面倒だけどあとでちょっと見ておくかな。


「何よ、いきなり……タイマーでも設定してあったの?」

「いや……そんなことはしてないかな。一定の温度になる様にはしてあったけど」


部屋がすっかり元の温度に戻り、みんなは朝食に舌鼓を打っている。

大輝はおかゆとかでなくていいのかな、なんて思ったが普通に食べているし、食欲が減退した様子もない。

これなら明日には訓練を再開しても問題ないだろう。


「そういえばさ、ふと気になったんだけど……裸族ってまだ存在するのかな」

「裸族?あの外国の?」

「そう、辺境の地にいる人たちだっけ?」


食事をしながら大輝が思いついた様に言う。

裸族は確か今でもちゃんと存在していると聞くし、日本でも家では全裸、なんて言う人がいるくらいだから特に珍しくもない気はする。

しかし問題はそこではなかった。


「俺、前から気になってたって言うか、見てみたかったんだよな、裸族」


大輝のこの言葉を聞いた瞬間、みんなが朝食を食べながら服を脱ぐというとても器用なことをし始めたのだ。


「本当、大輝って変態よね。まぁ、思春期の男の子ってそんなもんかもしれないけど」


そんなことを言いながら朋美も口をもぐもぐさせて、どんどん服を脱いでいく。

そして視界が変だ、と思ったら私も服を脱いでいる。

大輝は目を丸くして、その光景を凝視していた。


「何でみんな服脱いでんの?」


そう言いながら桜子もどんどん服を脱いでいく。


「いや、お前もだぞ」


愛美さんも口に咥えたトーストの欠片を服につけながら服を脱いでいく。

これはちょっと、朝から男の子には刺激が強くないだろうか。

新手のサービスか何かか?


「ちょっと、はしたないわよみんな、食事中に……」

「いや、お嬢……お嬢もですけど」

「あの、和歌さんもなんだけど……」

「…………」


結果、大輝以外全員が全裸で朝食を食べているという、カオスな構図が出来上がった。


「な……お、お前ら何で……いくら俺が裸族を見てみたい、って言ったからって食事中に服脱いでんだよ!早く服着ろ!朝から刺激強すぎるわ!!」

「ちょ、ちょっと!!じっくり見てんじゃないわよバカ!!あっち向いて食べなさい!!」


朋美や明日香からトーストを投げつけられたりして、理不尽だ……とか呟きながら大輝はみんなが見えない方向を向いて朝食を食べていた。

もちろん私は全裸でも何なら腹の中でも、望むなら見せてやるくらい何でもないが、さすがにみんなは羞恥心が勝ったらしい。


「一体何だったのかしら……」

「いや、俺にはお前らのサービスか何かにしか見えなかったんだけど」

「そんなわけないでしょ!?食事中にそんなことするほど、見境なくないわよ!!」


朋美に噛みつかれて、大輝が恐怖の表情を浮かべる。

桜子や愛美さん辺りは特にもう気にしていない様だが、和歌さんや明日香、朋美と言ったメンバーは比較的羞恥心が強いらしく、未だに顔を赤くしていた。

自らの意志に関係なく、ああいう行動に出てしまった、ということなのだろうし、私としても服を脱がなきゃ、なんてことは考えてもいない。


確かにおかしな現象だ。


『女神化の余波で、大輝に体調不良とか変なことが起きたりってことが考えられるから注意してね』


不意にノルンから言われたことを思い出す。

まさかとは思うが、これがその変なことだったりするのだろうか。

だとしたら、今後どんな展開になって行くのか、想像もつかない。


「全く……エロ大輝。今度はあんたが全裸になりなさいよ」

「は?知らねーよ。お前らが勝手に脱いだんだろ」

「何よ、不公平でしょ!?早くその立派なモノ曝け出しなさい!」

「おいおい朋美、やめてやれ。まだ大輝は病み上がりなんだから……」


大輝の服を脱がそうと襲いかかる朋美を、和歌さんが羽交い絞めにして止める。

明日香も赤い顔をしながら、必死で抵抗する大輝を恨めしそうに見ていた。

まぁ、それはそれで私からしても魅力的ではあるんだけど、今はそんなことよりも考えなくてはならないことがある。


もしさっきの現象が、大輝の力によるもの……というか、大輝の力の暴走などによるものであった場合。

非常に厄介だ。

考えられる発動条件は、大輝の願望の言語化。


そう、口に出すことで大輝の願望なんかを具現化もしくは実現してしまうという、超常現象。

先ほど二回、それは発動したと考えられる。

冷房の件に全員の全裸という奇妙な現象。


正直これだけならまだいい。

今のところ被害は我が家の中だけでおさまっているのだから。

しかしこれが外に出たりして、大輝がおかしなことを口走ったら……。


そう考えると、正直ちょっと怖いし落ち着かない。

たとえば、極端な話ではあるが嫌なことがあったりした時に大輝が、世界滅亡したらいいのに、なんて口走ったとしたら……それこそ笑いごとで済む話ではない。

もちろん、大輝がそんなことを言うタイプの人間でないことはみんな知っているはずだ。


私の知る限り、大輝は平和主義者に近い思考を持っていると思う。

だからその辺は心配していないが、今日に関してはまず様子見が必要だろう。

大輝にこのことを話すかどうかは、正直決めかねている。


ああ見えて子どもな部分もあるから、言ったら言ったでだったら俺黙ってる、とか言って一言も喋らなくなりそうな懸念があった。

なので家でゆっくり静養してもらって、明日になっても変わらない様であれば対策を考える、という方向で私は考えていた。


いたのだが……。


「今日さ、食材の買出し行こうぜ。せっかくみんな元気になったことでもあるし、俺もみんなで出かけたいから」


善意……そう、大輝にしてみれば百パーセント善意で放たれたであろう一言。


「大丈夫なのかよ?昨日あんなに熱あったろ、お前」


そう言いながら愛美さんは、早速出かける支度をし始めている。

こんなにも強力な効果が出るのか……。


「もう熱はないみたいですし、俺もたまには外で食事とかしたいですから。それに家電とかも見たいんですよ」

「よし、見せてやるぞ。家電だな?あと外食……任せろ!」


和歌さんが勢い込んでカバンを手にして、既に玄関で靴を履いていた。

そして私はと言えば、気づいたらもうドアの前に立っていると言う。

この展開を予想しなかった私も悪いが、今更やっぱりやめよう、とか提案するのも何だかな、ということで細心の注意を払って行こうと決めた。

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