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やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記  作者: スカーレット
ハーレム時々バイオレンス~七つの試練~
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第73話

「く……残念だけど……彼は不完全よ……ここで止めるわけにはいかないわ……」


先ほど私に投げつけられて傷めたのか、肩を押さえながらフレイヤが立ち上がって呟く。

そしてよろめきながらも再び大輝に近づこうとした。


「懲りないな、お前……お前もロキみたいにしてやった方が、いいか?」

「どんなにされたって……ここでやめたらどんな弊害があるか……」


そう呟きながら歩き続けるフレイヤの前に、和歌さんと愛美さんが立ちはだかる。

立ちはだかった二人に、フレイヤは明確な敵意を向けた。


「……どきなさい。手負いでも私、人間程度に負けはしないわよ」

「これ以上やらせるわけにはいかないな。それにお前の力が途切れれば、大輝の体は元に戻るかもしれん」


和歌さんがそう言って、剣を構える。

なるほど、その発想はなかった。

可能性としては、もしかしたらあり得るかもしれない。


「愚かな……そんな単純な話だと思っているなんて、おめでたいのね、人間って」

「そうだな、だけどお前には悪いが、消えてもらうことにしようかね」


抵抗の意志を見せたフレイヤが、手をかざして神力を放出しようとする。

私もその動きに合わせて手をかざし、ありったけの神力を開放した。


「……力の差がわからないお前でもないだろうに。とりあえず可能性として検証するべきものは全部試させてもらうことにする。だから、お前はここまでだ」


フレイヤの体が弾ける刹那、彼女は何か言おうとした様だがそれは声になる前に自らの体と共に消えていった。

和歌さんの言った通りであれば、これで大輝は元に戻る。

しかし、フレイヤの言ったことの方が私には気にかかっていて、フレイヤが消えて尚、私の中の嫌な予感は消えてくれなかった。


「ねぇ、睦月!!大変なの!!」


朋美が私を見て悲鳴を上げ、他のメンバーも同様に大輝の元へ駆け寄る。

フレイヤの力が切れた影響からか大輝の体は空中から降りてきていたが、それでも苦しみから解放された様子がない。

それどころか光はどんどん強まっていき、大輝自身が持つ熱も高くなっている様に感じる。


「手遅れだったのか……?あいつを、どうにかするだけじゃダメだったのか……?」

「ね、ねぇ、睦月ちゃん……見て……」


桜子がわなわなと震えながら大輝の体を指さす。

そこには何と、今までなかった女性の胸の様なふくらみがあり、それは服の上からでも確認できる大きさになっていた。


「そ、そんな……」

「ねぇ、睦月!何とかできないの!?神力で男に戻したりとか!!」


朋美が悲痛な声を上げるが、現状打てる手はない。

その原因の第一が、私の神力切れ。

ロキとフレイヤを消し飛ばすのに、大分力を使ってしまっている。


そして第二に……フレイヤの使った能力が、フレイヤの存在を消して尚残っていること。

どちらかと言えば、こちらの方が原因としては厄介だ。

仮に私に十分な神力が残っていたとして、この状態の大輝に下手な処置を施せば大輝の命そのものが失われてしまうおそれがある。


今の大輝には通常の人間にも劣る程度の抵抗力しかなく、これ以上の神力を与えることが今以上の悲惨な状況を生みかねない。


「できない、ってこと?だとすると、大輝は本当に……」

「…………」


悔しいが、できることは何もない。

ここで唇を噛んで見守ることしか……。

ただ、フレイヤが言っていた不完全と言う言葉が気になる。


まさかとは思うが、両性になってしまったりということはないだろうか。

中途半端なところで止めたせいで、大輝の体も中途半端に変化してたりして……。


「……!?」


そんなことを考えた時だった。

突如激しい揺れに見舞われて、全員がバランスを崩した。

どうやらこの部屋だけでなく、洞窟全体が揺れている様な、そんな感じの揺れだ。


「な、なぁ……さっきフレイヤってのが、ロキの保護がどうたら言ってなかったか……?」

「……あ、確かに……」


愛美さんの言葉にフレイヤが先ほど言っていたことを思い出す。

そしてその時頭に血が上っていた私は確か……。


『そんなもん知るか!!』


そう、勢いで全部やってしまっていた気がする。

私の力に洞窟が悲鳴を上げている、ということか。


「ねぇ、これ崩れるんじゃないかしら……」


明日香が心配そうに天井を見つめる。

揺れは未だ収まる気配がない。

急いで脱出しなければならないが、私の神力はもう切れてしまっている。


頼れるのは、桜子だけだ。


「ごめん、和歌さん。大輝を抱えてもらっていい?」

「それは構わないが……どうしたんだ?」

「桜子、脱出するから杖、出しといてね。先に言っちゃうともう、私の力は今使えない。だから桜子の力で外まで飛ぶ。桜子、ここの入口の様子、覚えてる?」

「あ、うん……大丈夫……と思う」


何とも自信なさげな返事に思わず不安が募ってしまいそうになるが、ここはもう桜子を信じるしかない。

他のみんなも同じ思いの様だった。


「じゃあみんな、桜子の杖を掴んで。和歌さん、大輝抱えたままだけど出来そう?」

「大丈夫そうだ。お前は残る、何て言わないよな?」

「残ってできることなんかもうないもん、私だって行くよ」


そう答えると、みんな軽く笑ってみせた。

しかしその表情は何処か失敗した、という思いに満ちている様に見える。

だからってこんなところでみんなを死なせるわけにはいかないのだが。


「桜子、あの入口を思い浮かべながら力を込めて、心の中でワープ、とかテレポート、とか念じて。そうしたらちゃんと脱出は出来るはずだから」

「わ、わかった、やってみる!!」


みんなの命が桜子の肩に乗ってしまっているというのが桜子にとっては重圧に感じるのかもしれないが、私は桜子がちゃんとできる子だって知っている。

だから安心して任せられるのだ。


桜子が目を閉じて、杖を握る手に力がこもる。

その瞬間、私たちの見る景色は一瞬で切り替わった。


「……ギリギリだったな……」

「ですね……とりあえず、生きて出られて良かった」


私たちが桜子のワープで脱出した直後……と言っても五秒程度のタイムラグはあったが、洞窟は崩壊した。

判断があともう少し遅れていたら、私以外はどうなっていたことか。

そう考えると、桜子の決断は英断とも言える。


和歌さんと朋美がため息をもらし、それにつられてみんなもため息をつく。

安堵と残念な気持ちの綯交ぜになった様な表情で、みんなは大輝を見ている。

未だ大輝が苦しそうなのは変わっていない。


「よくあの一瞬でできたね、桜子」

「いや……もう必死だったから……また同じ様に出来るか、って言われたらもう自信ないかも」


感心する朋美と、謙遜する桜子だったがその顔には疲れが色濃く出ている。

みんなにも大分無理をさせてしまった。

大輝のことも気になるが、まずはみんなに休んでもらうことが先決だろう。


「……ひとまず、ここに入る前に休んでた場所まで戻ろう。歩きでさ」


私は愛美さんに肩を借りて、和歌さんは大輝を背中におぶって、それぞれ歩き出す。

大輝がどうなるのかわからないことに対する不安の表情は変わらなかったが、道中で魔獣の類に襲われることはなかった為、すんなりと目的地に到着出来た。


到着した先で、動けるメンバーには魔獣等の敵がいないことを念入りに確認してもらった上で、私たちは岩陰に腰を下ろす。

みんなの顔には長時間の無理による疲労が刻まれていて、あの桜子でさえ軽口を叩く元気もないと言った様子だ。

加えて大輝のこの様子。


誰もが大輝に関しては希望を持っていない様に見える。


「……なぁ、大輝が本当に女になっちゃったら、どうするんだ?」

「どうするって……どうしよう……」


そう、大輝が女になってしまった場合。

誰もその答えを用意できない。

もちろん私だって、どうしたらいかわからない。


治す術があるのであれば、すぐにでもそれに飛びつきたいところではある。

しかし現状、考えつくものは一つしかなくそれが確実な方法ではない。


「さっき朋美が、神力で何とかできないのか、と言っていたが」

「……うん」

「睦月は答えなかったな。あれは、やっぱりできないってことなのか?」

「……いや、どっちとも言えない」


私がそう答えるとみんなは表情を固くした。

出来るとも出来ないとも言えない。

現段階で試すことができないから、出来るとした場合にどんな結末が待つのか等、未知数な部分が多すぎる。


「今大輝がこの状態だからね。加えて中和の神力を使うことも避けるべき状況だから」

「どういうこと?」

「今フレイヤは、私が消し去ったのに大輝にはまだフレイヤの力が残ってるでしょ?人間の体に神力の重ね掛けをすることは、対象を殺すのと同義なんだよ」

「え……だって、中和の力でしょ?」

「体がその中和を受け入れてくれなくて、ただの神力として受け入れられてしまう懸念があるということね?」

「そういうこと。つまり今の状態じゃ大輝に何かしらの対処を行うということができないのが現状なんだよ。フレイヤのやつ、厄介なことをしてくれたもんだ……」

「…………」


指を咥えて見ているしかないという状況を改めて思い知らされたメンバーは、先ほどまでよりもその顔色を暗くする。

本当にもう、どしようもないのだろうか。


「う……ぐく……」

「!?大輝!!」


そう思った時大輝が再度呻いて、苦しそうにその自らの体を抱きしめる様な動作を取った。

光が、先ほどまでよりも強くなっている気がするが……気のせいだろうか。


「な、なぁ!どうにもならないのか、これ!!」

「…………」


愛美さんが悲痛な面持ちで問いかけてくるが、正直できることが何もない。

私も唇を噛んで見守っているが、その大輝の体に明らかな変化が見て取れる。


「……何、あれ……」

「え?……う、嘘……」


苦しむ大輝の体に現れた、第二の顕著な変化。

その変化に私たちはただただ言葉を失う。

だって、大輝の体からは……見事なピンク色の羽が生えていたのだから。

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