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やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記  作者: スカーレット
ハーレム時々バイオレンス~七つの試練~
66/212

第66話

「どういうこと……?」


いつもの平和なマンションの一室。

そこが今日は騒然としている。

私は大輝がマンションにいないことを確認してすぐに、力を使ってみんなをほぼ強制的に招集して、幸いにもトイレ中だったりする人はいなかったし、読者サービス的な感じでしずかちゃんよろしくお風呂に入っていて、いやーん!睦月さんのエッチ!という様なこともなかった。


そして私が起こったことをありのまま説明すると、誰もが何を言ってるんだこいつは、という顔をした。

致し方ないことだろうとは思うが、私だってあの時はやや混乱気味でノルンの呼びかけすら無視していた様な状態だった。

そしてみんながこっちに飛ばされてくるのと、ノルンの催促がかぶったのでみんなを待たせてノルンの話を聞いた。


ロキとフレイヤが、神界を脱出した。

そう聞かされた時に私の頭の中で、大輝が消えたこととあの黒い何かとロキとが繋がって、更には先日の姫沢家訪問の時に私が感じた気配、そして大輝も感じたという視線が繋がる。

またしても犯人はロキ、というわけだ。


「信じられないかもしれないんだけど、目の前で大輝が消えた。多分、攫われたんだと思う」


漸く心を少しだけ落ち着けて、みんなに再度簡潔な説明をすると、皆一様に息を呑んだ。

和歌さんと朋美は、今すぐにでも取り戻しに行きたい、というのが顔にありありと出ている。

私だってすぐに行きたいが、手掛かりがない。


神界を出たということは、人間界かもしくは別の世界に飛んでいるということになる。

片っ端から探していきたいところではあるが、それだと時間がかかりすぎる。

しかも大輝を攫った目的が見えない以上、大輝がどんな状態なのかもわからないときている。


自然と時間をかけてでも、というのは選択肢から消えることになった。


「犯人は、わかっているの?」


明日香がいつになく心配そうな顔で聞いてくる。


「おそらく、という程度のものだけどロキだと思う。というかあいつ以外、やりそうなやつの心当たりがない」

「あのクソだの汚物だの言ってたやつか。確かに昨日言ってた試練のこともあるし、動機としてはあり得ない話じゃないな」


そう、愛美さんの言う通り試練に関連した何かか、はたまた試練をくっつけた理由が実は別にあって、今日大輝を攫うに至った、と考える方が簡単でわかりやすい。

理由もなしに私を敵に回す様なことをあのクソがするとはちょっと考えにくいし、いくらあいつがバカでもそこまでのバカじゃないはずだと私も思っている。


大輝を攫って何をしようというのかという目的がわかることで、ロキのいる場所も判明するのではないだろうか。


「悪い、ちょっと待ってて。今心当たりに当たってみる」


そう言って私は再度ノルンを呼び出す。


(おい、ロキの行った場所に心当たりはあるのか?目的が見えないから追い様がないんだけど)

(気配が消えちゃってるから、多分人間界とか神界じゃないと思うんだよね。だとすると、魔界か冥界のどっちかになるはずなんだけど)

(他の神で目撃者はいないのか?)

(誰も見てないみたい。だけどオーディン様ならもしかしたら、行先に宛てがあるかもしれない)


オーディンか……さすが主神というだけあって、その辺は何とか希望が持てるかもしれない。


「何かわかったのか?」


愛美さんがやや明るくなった表情で尋ねる。

その顔を見た面々が、少し希望を持ったのか私に期待を寄せていた。

正直、まだ何もわかってないも同然ではあるんだけど……。


「わかるかもしれない。だからみんなも一緒に来てくれる?」

「一緒にって……何処へ?」


明日香が不思議そうな顔をしている。

桜子は何となくワクワクしている様な顔だ。

こんな時だっていうのに、羨ましい性格をしていると思う。


和歌さんと愛美さんは不安そうだ。

朋美はまだ少し鼻息が荒い。

もし冥界とかだったら戦いは避けられないかもしれない。


そんな時、みんなを戦わせるわけにはいかないだろう。

いや、正直な話朋美辺りは戦闘要員でもいいかなって思うんだけど……本人に言ったらまた怒り出すかもしれないから、その辺は向こうで決めたらいいか。


「神界に、みんなを連れて行くよ」

「!?」


死んでいるわけでもないのに、神のいる世界に行ってもいいのだろうか、みたいな空気が流れている。

もっとも死んだからって神界には来られないんだけど、みんなの認識はその程度で何もおかしいことはない。


「おいノルン、聞こえてるな?ちょっと手伝ってくれる?」

「……ノルン?」

「ああ、ごめん向こうの私の友達なんだ。一応へっぽこのポンコツだけど運命の女神やってるの」

『へっぽこって失礼だね』

「!!」


みんなにもノルンの声が聞こえたのか、驚いた様子で私を見る。

私を見られても、喋ってるのはノルンだからどうにもならないし、聞きたいことはそのままノルンに言ってもらった方が早い気はするが、多分まだみんな理解できてはいないのだろう。

そしてノルンはポンコツの方には文句がないらしい。


『スルーズは体と魂が別だからみんなと違った方法で行ってもらうことになるけど、他のみんなは私が送ればいいんだよね?』

「そういうことだな。というかそうしてもらわないと困るから、早速やってくれる?」

「え、私たち何もしなくて大丈夫?」


確かに私は他の神と違って、体と魂が分かれているからこうして睦月の体に憑依する形で存在している。

戦女神の使命とは言っても面倒なものだ。


桜子が不安そうに私を見たが、その瞬間に体がぼんやりした光に包まれて、あたふたしている。

仕事が早いのはいいことだが、ある程度の説明くらいしてやってもいいだろうに。

まぁ、説明は向こうでも出来るのかもしれないけど。


『じゃ、送るから』


簡潔にそれだけ言って、ノルンはみんなを転送する。

一瞬でみんなの姿が消えて、無事に転送はできたのだと理解した。

あまりの急展開にみんな頭が付いていかない様だったが、追々理解してもらえばいい、ということで私も自室で体を横たえ、神界へと魂を飛ばした。


「睦月ちゃんって、元の姿そんななんだ……」

「何だか睦月とは大分イメージ違うわね」

「私はこっちの方が凛々しくていいと思いますが……」

「その髪の色、いいな。でも普通に染色したんじゃ出せなそうな色だ……」

「何だろう、一気に大人の女に変身した感じだね。カッコいい……髪何年伸ばしてるの?」


などなど私の元の姿を見たみんなから様々な感想が飛び交って、私としては少しむず痒い感じがする。

確かにあっちは人間だし……こっちは元々いじったりしてないし、ほとんど生まれたままなんだけど。

そして髪も当然弄っていないから別に伸ばしているわけではないが、確かに普通に人間界で見かける長さではないかもしれない。


「その羽、カッコいいな……本物なのか?」

「うん、まぁ……」

「何か変なオーラ出てない?触ったら呪われたりしないかな?」


桜子らしい感想ではあるが、黒い羽が必ずしも呪いや毒を持っているというのは偏見だ。

そして呪われたりしないか、とか言いながら桜子は遠慮なく羽を触っていた。


「手触りいいわね……鳥の羽とは違うみたいだけど」

「そこのポンコツにも同じものが生えてるけどね。まぁ、色は違うけど」

「ポンコツ言うな。てかそろそろ行かなくていいの?」


ノルンはそう言ったが、みんな私の外見や周りのことが気になって仕方ないみたいだ。

私としても早く大輝を救出に向かいたいところなんだが、みんなの意志を蔑ろにするのも気が引ける。


「あっ……あなたがノルンさんですか?」


朋美が今気づいた、という様子でノルンを振り返る。

ずっといたはずなんだけど、誰も気づかなかったのだろうか。


「さっき転送したのは確かにこいつだね。ノルン、挨拶は?」

「何で私がスルーズのペットみたいになってるの?……初めまして、私がノルン。これからよろしくね」


ノルンが渋々挨拶をして、みんなも挨拶を返す。

初対面だからか、ノルンの見た目には誰も言及しなかったが、愛美さんと朋美は何となく桜子と見比べていた様に見えた。

特にある一部分を……まぁ、何処とは言わないでおくけど。


おそらくは人間界で普通の暮らしをしていれば見ることのない、煌びやかな装飾なんかが施された建物。

ノルンに挨拶をした後でヴァルハラの外観を見て、朋美を始めとするメンバーはキョロキョロしていた。


「何この建物……私たちがいたところにはこんなのなかったよね」

「ていうか……ちょっと豪華なマンションって感じだな。そして色合いが悪趣味だ。成金感が半端ない」

「というか、周りが草と木ばっかりなのに、こんな豪華な建物がポツンとあるのも何だかシュールよね」


桜子は当然の疑問を口にしているが、愛美さんの感想は割と辛辣だ。

明日香も菜園くらい作ったらいいのに、とか言いながら周りを見回している。

私が作ったもんじゃないから別に構わないが、オーディンが聞いたらがっかりしそうだな。


「ここはヴァルハラだよ。私の上司のちびっ子に会いに行こうと思うんだ。そこのポンコツが言うには、事情を知っていてもおかしくないみたいだから」

「ヴァルハラって、北欧神話に出てくるあの?じゃあ、ちびっ子ってまさか……」

「そう、あの。ちびっ子ってのはオーディンって名前の主神だね。一応、この神界で一番偉いやつ」

「ええ……睦月ちゃん、そんな人のことちびっ子なんて言っていいの?」


うちのちびっ子代表が恐れ多い、という顔で私を見ていた。


「良い訳がないんだがな。今日はやたら来客が多い様だが、スルーズ、お前の客か」


野太い声と共に現れた全身鎧の変態を見て、みんなが驚きの声を上げる。

鎧姿なのに手には箒を持っているのが何ともミスマッチで、みんなはどう反応したらいいのかわからない様だった。


「相変わらず主婦みたいなことばっかしてんだな、ヘイムダル。今日はちょっと事情があるんだ。あのチビから聞いてないのか?」

「貴様、オーディン様をそんな風に……」

「睦月、その人ヘイムダルって言ってたけど……ヴァルハラの門番って言われてる?」


さすがに明日香は博識だ。

文学少女って感じだし、本もそこそこ読んでいるのだろう。

一般的な教養は蓄えている様だ。


「ご名答。今じゃ掃除とか料理ばっかして、主婦みたいな感じだけどね。ここ数年、私は掃除してるとこしか見てないかな」

「…………」

「こないだおやつ作ってくれたよね」


ノルンが口を挟むと、みんなが意外そうな顔でヘイムダルを見た。

確かにこんな見た目でおやつとか、ネタでしかない気がする。


「ていうかそんな鎧着て掃除とか、やりにくくないんですか……」


朋美が問いかけると、問題ない、とヘイムダルは掃除に戻る。

人見知りの気とかあったっけ、ヘイムダル。

人間を見下したりはしてなかったはずだが、もしかして女があんまり得意じゃないのかもしれない。


ってことは何だ、私やノルンは女扱いされてないってことか?

本当に失礼なやつだな。


そして話のスケールが人間界で起こりうるものとかけ離れているからか、みんな言葉を失っている様だった。

しかし今はそんなことを言っている場合ではない。

あのちびっ子を拷問にかけてでも、ロキの行方を追わなくては。


というわけで私はみんなをオーディンの部屋に連れて行くことにした。


「何で外装が金なのに中は黒なのかしら。ところどころ赤も入ってるわね……神様の宮殿って言うより魔王城な感じの内装に見えるわ」


明日香の感想は実に的を射ている。

これもオーディンが独断でやったはずだが、何でこんな内装にしたのか。


「デスメタルとかBGMで流れてても違和感ないな。あたしは案外こういうの嫌いじゃないんだよなぁ」

「神様の宮殿でデスメタルって、それもう死神だよね」

「…………」


ノルンは別にオーディンを盲信しているわけではないが、オーディンの仕事にケチをつけられてる様な気分なのだろう、複雑な顔をしていた。


「オーディンの部屋はこっちだよ。あんまりうろちょろしてると怒られるかもしれないから、ちゃんとついてきてね」


私が一応の注意を促すと、みんなははっとして私についてくる。

人数が多いからまとめるのが大変だが、一応の協調性は持ち合わせているらしくキョロキョロしながらもオーディンの部屋の前まで来られた。

まさか昼寝なんてしてないだろうな、と内心ドキドキしながらノックをするが、どうも中から何やら物音がする。


「入るよ。……何してんの?」


一応声をかけてドアを開けると、中でオーディンは部屋中ひっくり返している様だった。

泥棒でも入ったのかと勘違いする様なとっ散らかり様だ。


「お、おお……きたな。ノルンが迎えに行ったからの、こっちも準備をと思って探し物をしとったんじゃ」


キャンキャンした声で年寄り言葉を使う五歳児を見て、明日香以外のメンバーがオーディンに興味を持った様だ。


「可愛いわね……本当にこの子が睦月の上司なの?」


朋美がしゃがんでオーディンに目線を合わせる。

まるっきり子どもにする対応だが、オーディンは何だか赤くなっている様だ。

本当にスケベなジジイだ。


「この子、って歳じゃないけどね」

「何だか癒されるな……うちのおやっさんがこんなだったらさすがに威厳もクソもないが」

「いや、こんなのがあの組の組長とか、ナメられるだけだから」

「…………」

「明日香、どうかしたの?」

「いえ……私、あまり子どもが得意でなくて」

「あの、わし……こう見えてスルーズよりもそこのノルンよりも年上なんじゃが……」

「…………」


必死で弁解をするオーディンだったが、明日香の態度は変わらない。

どうにも見た目が気にくわない様だった。

一方明日香以外のメンバーはオーディンの頭を撫でたり、抱き上げたりしている。


明日香に塩対応されて凹んでいたとは思えないご満悦っぷりに早変わりで、私としてはちょっと引く。

しかしそろそろ本題に入らなくては。


「おいジジイ。その人たちはみんな大輝のもんだ。少しでも変な動きしたら私が大輝に代わって殺す。あとフリッグにもチクるからな」


私の言葉にオーディンがさっと顔色を変えて、咳払いをする。

さすがの主神サマも嫁さんには勝てない様だ。


「そ、それより用件はわかっとるよ、うん」

「当たり前だ。あんたにうちの美女たちをお披露目するだけとか、どんだけ暇なんだよ私たちは……ロキはどっち行ったの?冥界?魔界?」

「どうも冥界の様じゃ。冥界は底が知れないからな……正直わしにも全貌はわからん」

「使えないジジイだな。まぁとりあえず行先がわかっただけでも儲けものではあるのか……」

「ねぇスルーズ、あの冥界を当てもなく探し回るつもり?しかも人間連れて?」


オーディンもノルンも、不安そうな顔をしていた。

他のメンバーも、冥界と聞いてあまりいいイメージは持っていないのか、あまり顔色は良くない。


「冥界って何?」


ノルンの言葉から不安そうな桜子が尋ねる。


「んとね……魔物とか魔獣っていう、ゲームでよく出てくる様な敵が徘徊してる場所。私も実際に行ったことはないけど、行ったことがある神は二度と行きたくない、って言うくらいに嫌な場所らしいよ」

「はぁ?そんなとこに大輝連れてったのかよ、そのロキってやつ」

「魔物って……じゃあ、大輝くんたちを発見するまでに戦闘は避けられないかもしれない、ってことよね」


やはりみんな不安は大きい様だ。

非日常とも言える経験を既にしていて、ここから更に戦闘なんていう危険行為に身を投じようと言うのだから、当然かもしれない。


「彼女たちについては、ノルンに頼みたいんだよね。神力でのサポートを。もちろん断ったりなんかしないでしょ?」

「……ええ……私、一応仕事が……」

「いやこないだオートメーション化してあるとか言ってただろ。だったら大丈夫なはずだ。当然拒否権なんかない」

「ちょっと睦月、無理やりは良くないわよ……」


さすがに見かねたのか明日香が助けに入る。

とは言っても、人間が生身で冥界をうろちょろして無事でいられる保証はない。

そして和歌さんや朋美は大人しくなんかしててくれないだろうし。


そう考えるなら、巻き込むこと自体に引け目は感じるものの、戦力としていてもらう方がこちらとしては心配の種が減って、心おきなく暴れられるというものだ。


「大体あんたはサポートが得意な神でしょうが。だったらここで役に立たなくていつ役に立つって言うの?」

「それは……」

「それにみんなだって、戦力にならないんだったらここでお留守番しててもらうしかなくなるから、どの道ノルンの力が得られなかったらここに来た意味はなくなっちゃうよ?それでいいの?」


普段からは考えられないほど、私は早口でみんなをまくしたてる。

自分で言っていて理解できる、自分が焦っているであろうことを。

そんな私を見かねたのか、ため息をつきながらノルンが口を挟んできた。


「もう……しょうがないなぁ……ある程度のタイミングで中和する必要があるから、一定の時間ごとに休憩は必要だよ?」


ゴネ得作戦、成功。

と言いたいところだが、私にそんな余裕はなかった。


「それは仕方ない。一刻も早く大輝とロキが見つけられる様に祈るしかないな」

「ねぇ……その力を付与してもらうことで、私たちも戦える様になるの?」


大人しかった朋美が、疑問を口にした。

厳密には戦闘となったら大輝をぶん殴った時の様に上手く行くという保証はない。

ただし、神力の付与によって身体能力は通常時の百倍以上に引き上げられることになるから、理論上戦闘は可能というものだ。


正直な話、中学の時に大輝が戦ったタコ坊主と同等程度の力なら、朋美でも扱える計算になる。

もちろん力だけあっても使い方だったりセンスだったりが戦闘においては重要になる。

その辺は私や和歌さん辺りから学び取ってくれるんであれば、楽でいいのだが。


「朋美は大輝を思い切りぶん殴ってたけど……相手が反撃してきたり避けたりって言う戦闘の経験はある?」

「……喧嘩とかはほとんどしたことないかな。今の学校でも男子とはあんまり関わりないし、女子とは喧嘩するほど仲良くないから」

「なら、私とか和歌さんが戦ってるのを見て、覚えてもらった方がいいかな。実践に勝る訓練なしってね」

「できるかな……」


もう既に不安そうな顔で、朋美は呟く。

だが、もっと心配なのは桜子だ。

この子はどう見ても戦闘に向かない。


だけど、置いていったら後々に禍根を残しそうでもあるので、守りを固めてもらう方向で行くのが良いだろうか。

明日香は前に古武術的なものをやっているとか聞いたし、応用は可能だろう。

愛美さんは……元ヤンらしいからヤクザキックとかするんだろうか。


想像して、思わず吹き出しそうになる。

あまりにも似合い過ぎというか、ハマりすぎていてやばい。


「武器とか、ないの?私無手での戦闘はあまり得意ではないの。その冥界?での戦闘がどんなものになるのか想像できないし、合気道が通用するかはわからないし」

「武器か……オーディン、今どれが空いてる?大きな戦闘とか最近あった?」

「いや、ここ百年以上は平和なもんじゃ。先日のトールとスクルドの鎮圧も特に武器はいらんかったでの」


ああ、あれか……春海の体が死にかけていた時に聞いたやつだ。

なら、ある程度選べるかもしれない。


「明日香は、どんな武器がいいの?後方系?それとも前に出てばっさばっさ敵を斬ったりしたい?」

「……睦月の中の私はどんなイメージなのかしら。それ、どっちかって言ったら望月よ。ねぇ?」

「え……私だってそこまで狂人じみたことはしてませんけど……」

「あら、修羅の望月の異名は伊達じゃないでしょう?」

「しゅ、修羅って」


愛美さんと桜子が一斉に吹き出して、和歌さんが真っ赤になる。

確かに二つ名とか人間界においては痛い人の象徴みたいな風潮あるし、仕方ないよね。


「お、お嬢……そういう話は今いいですから!」

「他にもなかったかしら」


明日香はオーディンに興味がない様で、和歌さん弄りに精を出し始めた。

赤くなってうろたえる和歌さんは確かに可愛いし、みんなも楽しんでる風なんだけど……大事なことを忘れている。


「えっと、急がないといけなくない?」

「あっ」


朋美の一言でみんな冷静になった様で、ひとまずオーディンが用意して並べてくれた武器を選定する作業に入ることにしたのだった。

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