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やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記  作者: スカーレット
ハーレム時々バイオレンス~七つの試練~
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第45話

「ぶっちゃけ、俺からするとめちゃめちゃ好みです。いい匂いするし綺麗だし、スタイルいいし……俺の願望そのものの具現化とさえ言えるかもしれませんね」


しばらく答えに困っていたのだが、俺はもう直球で答えることにした。

ぶっちゃけるとこの人は俺の好みではある。

手に負えるかは別にして、下世話な話一晩くらいならご一緒したい、というくらいには魅力的だと思う。


俺の言葉を聞いた望月さんは、顔を赤くして言葉を失っている様だった。

もしかしてこの人、男性経験ないんだろうか。

だとしたら……何というポテンシャル……これからの人、ということになるわけだ。


乱暴そうなイメージが目立つこの人だが、もしかしたら繊細な部分もあるかもしれない。

明日香の世話係という仕事をずっとしてきていることからも、その可能性は十分高そうに見える。

しかしこれだけの美人……スタイルだってとってもいい。


そんな人に、一人もいい人がいなかったのだろうか。

この、ドキッ!男だらけの銃撃大会!とかやってそうな職場で。

いや……俺の勘ではこの人に言い寄る人はかなりの人数いたはずだ。


しかし、彼女はその悉くを自らの鉄壁近寄んなオーラで退けてきているのではないかと思った。

もしかしたら、俺がここで下品な下ネタとか口走ったら真っ赤になって銃を乱射したりするかもしれない。


「……正直なことを言おうか」

「はい?」


俺の言葉にただただ赤くなっているだけだと思っていた望月さんが口を開く。

一体何を言おうと言うのか。


「私はな、こう見えて……男との関わりがほとんどない。仕事以外で、つまりプライベートでという意味だが」

「は、はぁ……」


何をいきなりカミングアウトしているんだろう。

俺に悩み相談でもしてほしいのか?

結構年上っぽいんだけどな、この人。


「さっきうっかりと……お嬢が私よりも先に、なんて口走ってしまったが、あれは……私の本音だ」

「え、えっと……」


ますます何が言いたいのかわからない。

いや、待て……まさかとは思うがこの人……この密室に二人きりという状況で、俺を手籠めにでもするつもりなのか!?

いや、確かに綺麗だなぁとかスタイルいいなぁとか良からぬ妄想は繰り広げていた。


そしてこの部屋に入るに当たっても、二人きりかぁ、デュフフ……とか思っていたことも認めよう。

しかし、だがしかし。

展開が急すぎる。


ぶっちゃけ俺にその意志はなく、心の準備もできてない。

どうする……どうしたらこの状況を切り抜けられる……?

彼女の家にきて、彼女の世話係と関係を持ってしまいました、なんてどうやって報告するんだ!?


死ぬ気で考えろ……!


「私はな、彼氏がほしい。男の体にだって、それなりに興味はある」

「そ、そうですか……」


この流れは非常にまずい。

俺はこのままじゃ、性的な意味で食われてしまうかもしれない。

晩御飯くらいは食べて帰れるかな、なんて厚かましいことを考えてはいたが、まさか女まで食って帰るなんて想定していないんだ。


「お前は、お嬢が自発的に寄り添って一緒にいる男だ。お嬢はああいう人だから、そうそう親しい人間を作ったりはしなかった。そんなお嬢が認めるお前という人間にも……興味がある」

「そ、そうですか、ありがとうございます……」


俺の中の予感と先入観が、目の前の美人をビーストに変えてしまっている。

彼女にその意志があるかどうかなんて、もちろん確認はしていない。

というか出来るわけない。


「真面目に聞け!!わ、私はな!!図々しいと思いながらも、お嬢と同じ土俵に立ちたいんだ!!お嬢が羨ましいんだ!!何とか言えちくしょう!!私だって、恥ずかしいんだ!!でも覚悟決めてこんなことを言ってるんだ!!十近く年下の男相手に!!そんな私の気持ちがお前にわかるか!?わからないだろう!!」


半ば自棄気味に望月さんが叫ぶ。

今この人何て言ったの?

ちょっと突然過ぎて何を言われたのか、理解が追い付かない。


「いいか……ここから生きて帰りたかったら、何とかお嬢を説得して私をお前のハーレムに入れろ。できないなんて言うなよ?お前はこれまでも沢山の女を囲ってきているんだ。それくらいは造作もないはずだ」


詰め寄られて襟首を掴まれ、鬼の様な形相をした望月さんが必死に懇願してくる。

そして何やら物凄い信頼をされている様だが、俺にそんなの決定権があると思ってるんだろうか……。

いや、明日香と桜子と愛美さんに関しては俺が勝手にしたことだけど、睦月だって最初驚いてたんだからな。


「あ、あの……一ついいですか?」

「……何だ」

「望月さんは、俺が好きなんですか?」

「んなっ……!!」


そう、彼女は勢いだけで俺を押し切ろうとしていた様だが、決定的な一言を言っていない。

何だろう、昔俺が春海に告白した時にちょっとだけ似てる様な気がしないでもない。


「いくら俺が沢山女を囲ってると言っても、恋愛感情なしに付き合ってるわけじゃないんですよ。向こうからの明確な好意を確かめられているから、付き合ってるんです」

「…………」

「今日会ったばっかりの俺という人間相手に、望月さんは恋愛感情を持てるんですか?」


正直勢いだけで関係を持ってしまって、後々やっぱり相性が、とかなるのだけは勘弁だ。

付き合って行くなら一生の覚悟を、というのが俺のスタイル。


「……会うのは確かに今日初めてだけどな。実は、お前のことは何度も見ている」

「え?」


どういうことだ?

今の発言から導き出される答えは……この人、ストーカー……?

いや、そういう感じには……見えないこともないかもしれない。


だけど、そういう人じゃない気がするんだよなぁ……。

もう少し話を聞いてみるのが良いかもしれない。


「それは、どういう意味で……?」

「下校の時、登校の時、バイトに向かうと言って一人で帰る時……色々なタイミングで、お前を見ていた」

「は、はい?」

「最初は……お嬢が寄り添う人間というものに興味が湧いた。だから、どんな男なのか、お嬢に相応しいのか、確かめたいという意味でお前を見ていたんだ」


嘘だろ……そんな視線とか、全然感じなかったぞ……この人何者だよ……。


「見ているうちに……お前のことが頭から離れなくなった。最初はこの正体不明の気持ちに答えが見出せなかった。しかし、すぐにわかった。これが、恋という感情なのだと」

「…………」

「初恋ではないんだが……だからわかったというのもある。昔私は組長……つまりお嬢のお父様に恋をしていたこともあるからな。姐さんにバレて泣く泣く諦めたという経緯もあるが……」


話の内容が想像していたよりもどんどん重くなっていく。


「だから今日、お嬢がお前を連れてきてくれると言った時は、心の中でラインダンスを踊るくらいには喜んだものだ」


望月さんが……ラインダンス?

誰と?

まさかあの屈強な男たちを従えて、ヤクザのラインダンスとか?


絵面がやべぇな……。


「だから私は、絶対に諦めない。私の思いは本物だ。これだけは断言できる」


目がマジだ。

これは、断ったら何が起こるのか、とか予想もつかない。

誰だよ、色気のある話じゃないとか呑気なこと言ってたやつ。


あとで小一時間ほど説教してやりたいんだが。


「で、ですけど望月さん……俺がどういう人間か、とか知らないんじゃ……」

「宇堂大輝、十五歳。雲上高校一年生で、椎名睦月、宮本明日香、野口桜子、柏木愛美、桜井朋美と関係を持っている。バイト先は近所のコンビニ。出生は不明。育ちは施設……」

「…………」

「性格は割とおおらか。一生懸命な主人公タイプ。思慮深い性格。施設のベッドの下にエロ本が四冊隠してある」

「ちょ、ちょっと待ってください!!何でそんなことまで知ってるんですか!?まさか侵入したんですか!?」

「何ならそのエロ本の入手ルートまで洗い出してあるぞ」

「ま、マジかよこの人……」


正直に言おう。

怖い。

今日日、ストーカーでもここまでやるか?ってくらいのことしてるんじゃないか、この人……。


「私が受け入れられないと言うのであれば……それでも構わない。私は諦めないがな」

「…………」


エロ本、というワードを口にするだけで赤くなっているこの人だが、やることが常軌を逸している。

だが、何て言うのか……逆にここまで思われているのだと思うと、恐怖心の様なものが少し和らいでいく様な気がする。


「でも、俺が望月さんを気に入るかどうか、とかそういうのはまた話が別です。あなたは俺を知っているかもしれませんが、俺はあなたを知らないんだから」

「それはそうだな。一理ある。なら、確かめてもらっても構わないぞ」


確かめるって、どうやって……?

またも良からぬ妄想が頭を支配しそうになって、必死で振り払う。


「一つ、勝負をしようか。私の得意分野で構わなければ。それでお前が勝てば、好きにすればいい。だが、私が勝った場合は……ククク」


何だその中二病臭い笑い方……この人のイメージがどんどん変わって行って、俺の中で処理が追い付かない。

……狂ってやがるぜ。


「しょ、勝負って……殴り合いとかはちょっと勘弁してもらいたいんですけど」

「そういう野蛮なものじゃない。得意分野ではあるがな。そこは安心してもらって大丈夫だ」


ちょっと待て、と言って望月さんが携帯を取り出して何処かに電話をかけている様だ。

寿司がどうこう言っている。

寿司でも振舞ってくれるということだろうか。


「とにかく応接間に戻ろうか。私はいち早くお前をモノにしたいんだ」


電話を切った望月さんが先ほどまでよりも、少し慈愛に満ちた視線を向けてくる。

何でこんな顔してあんな物騒なセリフが出てくるのか、不思議で仕方ない。

顔とセリフが一致してないんだけど、この人。


望月さんが部屋を出ようとする。

そして俺が続くのを待って、俺が出るのを確認した望月さんが離れに施錠した。

少し後で行くから先に応接間に戻る様に言われ、俺は一人で応接間へ向かう。


どうもいい予感がしないんだけど、俺生きて帰れるんだろうか。



「で、何を話していたのかしら。随分長かった様だけど」


応接間に戻り、明日香に言われて時計を見ると、明日香の家に来てから早くも一時間が経過していた様だった。


「いや、お前ある程度想像してたんじゃないのか?お前に相応しい男なのか見極める、みたいなこと言ってたよ」

「それだけ?」

「それだけって?何か他に思い当たることがあるのか?」

「……あると言えばあるけれど……私から言うことではない気がするから……」


そう言って明日香は少し暗い顔をする。

あんな会話がされてたなんてこと、明日香たちに言えないよな……。


「大輝、他にも話したことがあるんじゃない?」

「何でそう思うんだ?」

「んー……顔が強張ってるから」

「え?」


俺、そんなに顔に出てたか?

一応今話さないのには理由がある。

それは勝負とやらが気になるからだ。


望月さんの言う勝負というのがどういうものかはわからないが、俺としては負けてしまうわけにいかないと思っている。

何故ならあの望月さんのことだ、俺が負けたらどんな要求をしてくるか想像もできない。

何とかして勝って、穏便に帰宅するのが最善と言えるだろう。


「まぁいいけどね。私としては別に大輝が考えることだったら、基本的に反対はしないから」

「そうか、まぁ悪い話はしてないから安心してくれよ」


いや、めっちゃしてましたけどね。

何なら俺の人生変わっちゃうくらいの話でした。

しかし睦月は俺に任せてくれたんだ……本当は助けてほしいけどな。


また桜子も何か言いたそうだったが、俺の言葉に軽く微笑むのみだった。

まぁ、桜子に救いなんて求めてはいないからいいけどね。


「お待たせしました。皆さん、夕飯も是非食べて行ってください。そして宇堂さん……先ほどの話、よろしいでしょうか」

「あ、ええ……何すればいいんです?」


望月さんが応接間に来て、間もなく玄関のチャイムが鳴るのが聞こえた。

夕飯ってもしかして寿司なのか。

金持ちはもてなし方がけた違いだな、なんて呑気なことを考えていたことを、俺はすぐに後悔する。


「先ほどの話し合いの中で、私は宇堂さんがどういう男かを見極めたいと提案し、宇堂さんはそれを了承しました。なので、これから宇堂さんには私と勝負をしてもらうことになります」


色々省きよったな、この人……。

まぁ今はそうしてくれている方が俺としても安心できるんだけどさ。


「え、望月……それって」

「明日香、大丈夫だから。心配しないでくれ。俺、絶対負けないから」


そう、負けてしまうわけにはいかない。

向こうの出方がわからない以上は、俺に敗北は許されないのだ。

そして何をするのかわからないが、部屋に大量の寿司が運ばれてくるのが見えた。


「お嬢と椎名さん、それから野口さんはこれを」

「わぁ、海鮮丼!!」


桜子が歓喜の声をあげる。

確かに美味しそうだ。

しかし睦月はあれだけで足りるのだろうか。


「もし足りない様でしたらこちらもお召し上がりください」


そう言ってちょっと大きめの桶を一つ、三人の前に置いた。

なるほど、足りない場合の準備は万全なわけだ。


「宇堂さんはこちらへ」


俺は別に用意されたテーブルの前に座る様に言われる。

もしかして、大食い対決とか言い出すんじゃあるまいな……。

普段そこまで食わないんだけど、俺……。


などと考えていると目の前に山の様に寿司桶が積まれていく。


「両方で八十人前あります。ノルマは一人四十人前。吐いたりトイレに行ったりしたら、その時点で負けです。また、箸が一分以上止まれば負けです。準備はよろしいでしょうか?」

「望月、これはさすがにあなたに有利過ぎないかしら。何を賭けての勝負かわからないけど、やり過ぎよ」


明日香が猛然と抗議する。

いや、いくら俺が普段そんなに食べないからって、さすがにこんな細い人相手なら負ける未来は見えない。


「明日香、何言ってんだ?俺、こう見えて男だぞ?さすがに俺の方が有利なんじゃないか?」


俺が余裕たっぷりに言うと、明日香は厳しい目をして俺を睨んだ。


「何を呑気なこと言ってるの?望月がどれだけ食べるか、大輝くんは知らないでしょう!?」

「え……?」

「望月の趣味は食べることよ。そしてその量は尋常じゃない……正直見てて気持ち悪くなることもあったわ……」

「な、なんだって……?」


明日香の言葉に望月さんが妖艶な笑みを浮かべる。

うわぁ、いい笑顔……もしかして俺、ハメられたの?


「ちなみに、普段どれくらい食べてるんだ?」

「少ない時……主に時間がないときだけど、それでも三人前。多ければ十五人前食べてるのを見たこともあるわね」

「…………」


頭おかしいだろ、どう考えても。

やることなすこと規格外過ぎないか、この人。

何で俺の周りって普通の女がいないの?


明日香が心配そうな顔で俺を見つめている。

普段からヘタレてカッコ悪いとこばか見せてるから、仕方ないのかもしれない。

これは、望月さんに勝つというミッションとは別に、みんなへの汚名返上の機会でもある。


「ま、マジかよ……くそ、俺は大丈夫だ、俺はやる!やってやるぜ!!」


そうだ、ここまできて俺に撤退の二文字などない。

勝てない勝負ほど燃えるって、よく言うからな。

覚悟を決めた俺は流れる様な動作で箸を手にして、不敵な笑みを浮かべた。

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