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サークルの出会い 3

「じゃあ、俺がリーダーで」


「で、だ。自己紹介はさほど重要じゃないけど、次は別の話に入りたいんだが」


 龍富は柄池の話の後に続くように入ってくる。

 一瞬の間を空けて龍富は話を続けた。


「お前ら、なんでこんなところに来た?」


 龍富は疑問を周りに振りまく。

 その言葉は少しの怒りも含まれている。


「ガットはいいんだ。頼りにしているから。それに愛川さんも頼りにできそうだから、文句はないんだが……他はどうなんだ?」


 怒り交じりの疑問を龍富はもう一度周囲に投げかけた。

 その問いに大越は答える。


「えっと……私は愛理栖ちゃんが心配だから、私もいなきゃと思って」


 大越の解答は逆鱗に触れないよう細々とした声であった。


「……まぁ、それは分かった。納得はできる」


 大越は龍富の声に安心の息を吐く。

 このまま、納得のできそうな声は出てくるものかと愛川は思っていた。


「面白そうだから」


「面白そうな出来ごとのために来たぜ」


「私も同じく」


「おい、ふざけてやがるな、お前ら」


 が、八雲、古賀松、大空の順に来た意見を龍富は蹴散らすが如く突っ込んだ。


「大体な、ここはサークルって形ではあるけど、かなり危ないんだぞ。それなのに、こんなところ入ろうとするなんてどういうことだよ」


 龍富はさらに言葉を続ける。


「ま、大丈夫でしょ」


「喧嘩はなんとか行けるぜ」


「喧嘩は慣れっこだ、心配ないよ」


「危機管理が狂ってる。危機管理がマイナス値だぞ、お前ら」


 が、八雲、古賀松、大空の順に来た意見を龍富は蹴散らすが如く突っ込んだ、再び。


「ところで、御堂だっけ、名前……お前もおんなじそうなんだが……」


 今のところ意見のない御堂に対して龍富は疑問と視線を投げかけた。


「俺は……その……兄さんにここに入れって言われて」


 意気と視線が沈んでいるようで御堂は答える。


「ん? それはどういう……?」


 疑問を口に出したのは柄池であった。

 龍富もまた疑問の視線を投げていた。

 こちらには怒りの感情は混ざっていない。


「兄さんがさ……ここに入ればお前は強くなれるはずだって……無理やりここに入るように言われてね」


「あー……」


 御堂の理由に柄池は同情の声を上げる。

 龍富に至っては怒りの感情もなく憐みの視線へと変わっていた。

 御堂の視線もどこか遠いところへといつの間にか向けていた。


「俺、パソコンとか使えるサークルに入る予定だったんだけど、兄さん俺よりも何倍も強いからどうしても逆らえなくて」


「……同情するぜ」


 御堂の理由に古賀松も御堂の肩をたたいて同情をする。


「それだったら、幽霊部員みたいな扱いでもいいよ。それでほかのサークルに行けば……」


「ダメ……兄さん、今回から定期的に俺の強さを確認しようとするから、手を抜くのはダメなんだ……」


「……その、疑いの目を向けてごめん」


 柄池の提案にも御堂は道の塞がりようを訴える。

 御堂の道の塞がりように龍富も疑いを謝ってしまった。

 愛川も大越も大空もまた憐みの目を向けていた。


「……俺、拒否権ないから……」


「あー……どうしよ……」


 御堂はついにテーブルに顔を伏せて言葉を話し、柄池に至ってはどうすればいいかも分からず、頭を抱える始末であった。


「とりあえずさ、リュート。今回の任務は大丈夫そうだし……次の話に行っても」


「……まぁ、今回だけならいいか。実際にどういうことやっているか見てもらった方が早い」


 柄池はやむを得ないという表情で次の話を振り、龍富は渋々来た理由について黙認する。

「実はさ。退魔師側からすでに任務を受けている状態でね。早速で悪いけど、ここのみんなを任務に連れて行こうと思うんだ」


 今日入ってきた皆に視線を送りつつ、柄池は話しかける。

 そして柄池の言葉は続く。


「任務と言っても簡単だからね。みんな見ているだけでも問題はないくらいだから」


「元より俺とガットだけでも十分なほどだったからな」


 柄池の話に捕捉する形で龍富は会話の間に入る。


「募集かけておいてあれだけどねー、本当は俺、こんなに来ると思わなかったくらいだからね。一人でも来れば大当たりって感じだった」


 柄池は会話を続けながら、笑みを浮かべる。

 これほどの人が来て悪い感情はようだ。


「で、移動代についてはこっちで何とかできるからそれはいいんだけど、宿の部屋についてはどうする? 今回は二人の部屋が四つあるみたいなんだけど」


「じゃあ、男女一緒の部屋で」


 柄池の質問にすぐさま愛川は答えた。


「じゃあ、男女一緒……え゛?」


 愛川の予想外の答えに柄池は驚愕の視線と言葉を愛川に送る。


「本当に男女一緒で……? 部屋に男性一人と女性一人だけだよ?」


「……ダメ?」


 柄池の確認に愛川は問題があるのかと首をかしげて問い返す。

 愛川には大きなことを言ったこととは柄池の表情から察したが、何がどう大きなことかは分からなかった。

 愛川は急に強い視線を感じ取り、視線の方へ向くと大越が視線を送っていた。

 怒りにもあきれにも似た視線を。


(私……何かまずいこと言ったの?)


 愛川は内心で問いただしてその場を過ごそうとする。

 そこで、柄池は皆にこの話を振ろうと周りを見渡す。


「ってことだけど、みんなどうする?」


「いいじゃん、俺は良いぜ」


「別に悪くないよ。変なことした男はぶっ飛ばせるし」


「問題はないわ」


「拒否権はないです」


 柄池の質問に古賀松、大空、八雲、御堂の順に賛成の意見が来た。


「えぇ……」


 柄池はこの賛成の意見を前にして困惑の表情を浮かべた。

 同時に愛川は自分のやったことがあまり大きなことでないと認識を改めることになる。


「んー、私も悪くないかなって……思う」


「大越さんまで?」


 先ほどまで悩んでいた様子を見せていた大越はここで、賛成の意見を述べた。

 これには愛川も驚くことになる。

 意見を聞いた柄池は最後に龍富へと意見の催促の視線を送る。


「これを本当にやったら問題が起きるぜ」


 龍富は半分呆れた顔で意見を述べた。

 その意見を脳内で纏めているのか、柄池は少しの間目を閉じて黙った。


「確かに問題は起きる」


 柄池は言葉を発して、さらに言葉を続ける。


「だけど、賛成が多い以上却下するのも悪いことだからね。だから、ここは男女一緒の部屋ということで進めよう」


 この言葉に古賀松、大空、御堂、大越がわずかに驚きを見せた。

 龍富に至っては疑問と否定が混ざった顔を浮かべている。

 また、愛川は顔に出ているかは分からないが内心で喜びが湧いていた。


「おー、話が分かるじゃん、柄池」


 柄池との距離が遠いためか古賀松は柄池の肩を叩くように手を揺らして、賞賛の言葉を柄池に送る。


「ただし」


 柄池は古賀松の言葉にすぐさま補足を割り入れ言葉を続けた。


「今回はね飽くまで、みんなと話し合う機会にもなると思って俺はこれでいいと思ったんだ。だから、これは問題が起きるようなことは避けたいと思っている」


 柄池は先程までの声と違う声調で語りかけた。

 若干抑圧するかのような声で更に柄池は声を発し続ける。


「というわけで、今回は男女一緒の部屋で止まることにしよう。くれぐれも問題は起こさないようにね。特に俺を含んだ男性陣は気を付けよう」


「ま、その通りだな」


 柄池は結論を出して議論の締めを行った。

 古賀松もその結論に納得の声をあげる。


「……今回だけだろうから、まぁいいか」


 龍富はこの決定に対し強い意見を持つことはなく、一応の形で認めていた。

 また、表情はまだ疑問の部分が抜けていないようであった。


「じゃあ、部屋割りはあみだくじってことにして、あとは場所や、やることについてこれから話すから忘れないようにね」


 議論が終わり、今回の任務について詳しい話が柄池を中心に始まった。



 耳と額でサングラスを支えている金髪の男性でちゃらちゃらしてそうな、古賀松(こがまつ)

 古賀松の友人らしく赤髪のポニーテールの女性である、大空(おおぞら)

 パソコンをよくいじる黒髪の眼鏡を掛けた男性、御堂(おんどう)

 本をよく読む黒髪で髪の長い女性、八雲(やくも)


 刀を持った退魔師で、昨夜愛川と戦った黒髪の男性、龍富(りゅうとみ)

 龍富の友人でオレンジ色の髪の男性リーダーである、柄池(がらいけ)

 猫に化けられる化者で愛川の友人となった女性、大越(おおこし)

 そして、サキュバスとして化けられる化者でピンク色の長い髪の女性、愛川(あいかわ)


 この8人は一時的なメンバーとして、これから活動を始める。

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