サークルの出会い 2
紹介は半分以上が終わり、後は愛川、大越、柄池のみとなった。
八雲も紹介を終えて一瞬の沈黙が流れる。
誰が紹介するか決めかねている空気が何秒か流れていた。
そこで、大越は愛川へと疑問を含めた視線を移していた。
「愛理栖ちゃん、どうする? 先に紹介する?」
「じゃあ、私からで……」
大越の疑問に愛川は手を上げて答える。
続いて愛川は自己紹介へと続けた。
「私、愛川愛理栖、ちょっとだけ特殊なことができるので、ここに来ました」
その言葉にその他全員の視線が愛川へと移った。
大越に至っては二度瞬きした後、愛川を凝視してまでいた。
愛川は柄池の方に向かって声をかけて立ち上がる。
「あのちょっと協力してくれると……」
「あっ俺? 構わないけど」
声に応じて柄池は立ち上がり、愛川は柄池の方へと歩いていく。
「あと、手を出してくれると嬉しいかなって」
「ああ」
愛川の要望に柄池は抵抗なく応じ、手を出してくれた。
その指を愛川は手のひらで包むように握る。
「私、触れた相手の心が大体読めるの」
「な、何!?」
「超能力みたいなの?」
愛川の声に龍富、柄池の順に反応する。
声には出さないもの、この中で一番驚いていた人は大越であった。
その様子の中、愛川はことを進めた。
「このままでじゃんけん……してくれる?」
「ああ」
柄池は了解を示した。
指から伝わる感情から嫌な気持ちどころか、期待の感情を愛川は理解できた。
「それじゃあ……じゃん、けん……」
愛川の掛け声でじゃんけんが始まる。
そして同時にお互いの手が出た。
一瞬の沈黙。
柄池はパー、愛川はチョキ。
愛川の勝ちである。
愛川は柄池の思考を手から通じて、読み取った結果だ。
「おっ」
柄池から驚きの声が漏れる。
周りの人もこの結果に視線を注いでいた。
「も、もう一回いい?」
「ええ」
柄池は再戦の願いをして、愛川は了承する。
「じゃあ……じゃん、けん……」
今度は柄池から開始の声がかかる。
思考から八割の信、二割の疑が感じ取れる。
お互いに手を出して再びの沈黙。
今度の結果は先程の視線よりも熱さがあった。
結果は柄池がグー、愛川がパーとなる。
「おおっ!」
「こりゃ、もしかして……」
柄池の驚きに古賀松の確信に変わりつつある声が伝わる。
「ねぇ、もう一回! もう一回、いい?!」
「あ、うん」
柄池は再戦をもう一度愛川に試み、それを許諾する。
この力は相手に触れている限りは継続する上に、愛川もそれで支障はない事からだ。
それから10回ほど柄池と愛川はじゃんけんをして、愛川の全勝で終わりを迎えることになった。
この終わりで周りの視線は完全に疑問の色から、確信の色へと変化した。
「これは……」
「本当の超能力持ちってことだな」
「……実在するって思わなかったぞ」
八雲、大空、御堂の順に確信を言葉にしていた。
この愛川の力は触れていた相手の心が読めるが、この力はサキュバス全てが出来るわけではない。
愛川は無意識下での状態での相手の干渉に長け、その干渉した状態で相手の内心を探れるのだ。
「すげぇ !愛川さんみたいな人がきて頼りになるよ、ほんと! なぁ、リュート?」
柄池の言葉に応じて龍富は愛川の近くにより、手を握った。
「こっちの仕事って調べることも少なくないからな。愛川さんのような力は本当に役立つよ」
龍富は言葉とともに愛川の手を上下に振りまわした。
愛川が心を読むまでもなく、喜びの感情にあふれていた。
「しかし、その力があって苦労した事あるだろ? 俺なんてオカルト紛いのことと立ち向かっているからって、クラスの人から白い目で見るのまでいるから、ほんとあれは……」
龍富は握手した手を振りながら愛川に言葉をかける。
「わ、私は今まで隠していたから、来海ちゃんにもバレてなかったくらいに」
「そうね、私も愛理栖ちゃんがこんな力を持っているなんて知らなかったから、本当にもっと早く言っても良かったのに」
愛川の言葉に大越はこう返した。
最後の言葉に怒りを加えて。
「そ、そうね……ただ、この力は完全に信用はできないから。私は飽くまで心の表面上しか読めなくて私の読み取った部分と実は違った、なんてこともあるの。お姉ちゃんにもそうやられて読めないときもあってね」
「でも、参考までにってところまでは力になりそうだよね。期待してるよ」
大越の怒りに戸惑いながら、力の補足を加えた愛川は柄池に期待の言葉をかけられる。
その後に龍富は愛川から手を離した。
「あ、ありがとう……」
「しかし、すごい女の子も来たもんだな。超能力持ちで胸もでかいと来た。こりゃ、この中で一番デカそう」
愛川の言葉に古賀松は言葉を繋げた。
更には愛川へと視線を向けてもいて、急に恥ずかしさが湧き始める。
言葉から視線を向けている部位も愛川は理解する。
その様子に大空はすぐさま言葉を入れた。
「自重しときなよ、また女性にやらしいことを言って」
大空の言葉の間に愛川は胸を両腕で覆うように隠した。
好きな人でもないからこう言う視線を受けることは気が良くなるものではないからだ。
「いやー悪かった、そこまで嫌がられるとはね。ゴメンゴメン」
古賀松は顔の前に片手を出した。
また、謝罪の意を手と言葉と両方で伝えもする。
その謝罪に愛川は言葉も無く自分の元いた場所へ座る。
「じゃ、じゃあ、私が次に紹介するね」
この空気に手を上げながら、割って入るように大越は自己紹介を始める。
「私は大越来海。特にこれといった特徴はないけど、猫は好きな方かな、うん。あと、コーヒーも好きだよ」
大越は話す前に立ち上がり、紹介が終わると共に座る。
これで自己紹介は残り1人となる。
「じゃ、最後は俺」
柄池は手を軽く上にあげて、紹介を始める。
「俺は柄池闘哉、リュートと高校で退魔師同盟をやっていたんだ。あと、リーダーは俺がやりたいんでいいよね?」
柄池はリーダーの件を皆に尋ね、周りを見渡した。
「まぁ、俺はそれでも」
「私は拒否する要因はないわ」
「今日来た6人がやっても困るしな」
「あたしは賛成だよ」
御堂、八雲、古賀松、大空の順で賛成の意を伝える。
「私もそれでいいでーす」
「いいと思うよ」
「俺は答えるまでもないことだよな。高校の時もリーダーだったから」
愛川、大越、龍富も順に意を伝えた。
「じゃあ、俺がリーダーで」
「で、だ。自己紹介はさほど重要じゃないけど、次は別の話に入りたいんだが」
龍富は柄池の話の後に続くように入ってくる。