天狗と誘拐と女性と 6
前半御堂視点。後半大越視点
さらにもう一組の方。
そこもまた、足を使ってほこらを探していた。
「ところで、もしも像が見つかったら持てそうか?」
「こんな見た目ではあるけど、多分大丈夫さ」
大空は像が見つかった時のことを聞き、対して御堂は持てると話す。
二人は脇に草木が茂った歩道を歩いて、調査をしていた。
「これでも兄さんに無理くり特訓させられた身だ、嫌でも力と体力は付いている」
「あのめちゃくちゃな兄にか」
持てる理由として御堂は兄との特訓があるからと答えて、大空はめちゃくちゃな兄にかと言葉を返す。
大空はその兄の事でふと疑問が思いつき、口へと出そうとする。
「その兄さんてのは何か武道をやっていたり?」
「ああ、よく分かったな。父さんが道場をやっていて、それで兄さんも武道の稽古つけられているんだ」
その疑問を大空は言葉で出し、御堂は兄を含めて家族の事を話す。
「ははー、そういうことで」
「最初に俺の印象を持つと、武道の家ってのが意外だろ? そんな家で俺みたいなのが育ってしまうんだから」
大空が理解を言葉にすると、御堂はそんな家で自分が生まれた事を強調する。
御堂の家で意外という印象は確かに感じた。
だが、大空は驚くほどの印象はなかった。
(アタシなんて武道は特にやってないし、家は酒専門で売っているだけだしな)
大空は自分の家のことも心の中で思いつつ、家でどう育とうが問題でないと考えていた。
武道の家で必ず武道を身につく、そういう決まりがあれば、大空は自身の家で武道が身につくはずもないからだ。
「そんなに驚くようなほど大きく意外とは思わないよ。しかし、大変だな。兄さんにここ入れなんて言われるなんて」
「その同情有難い。兄さんはとんでもなくて……」
大空は驚くほどではなく、さらに兄の大変さについて話すと御堂は苦笑いで答える。
その後、大空は聞いて見たかったことを話す。
「聞きたかったんだけど、今このサークル入っていて辛いってことはあるのかい?」
サークルに入って辛いことはないか、大空はそこを御堂に聞く。
解答を大空はほぼ予測は出来たが、御堂の口から意志のある言葉を聞いてみたいとここで聞くことにする。
「最初はね、なんでこんなところにっては思ったよ。今は違うけどね」
御堂は大空からの疑問に答えた。
移動しつつ大空は横目で見つつ、笑みを浮かべる。
「今はここ入ってよかったと思ってるよ。みんないい人たちだし、何より俺が作ったアプリが活躍しているからね」
御堂はさらに答えを続けた。
「ここのサークルに入って居心地は悪くないよ」
「そうか。ならいいんだ」
御堂は結論として居心地は悪くないと答えて、大空は安心とともに言葉を出す。
「見たところ、悪い気分ではなかったし、サブローの口からも聞いてみたかったからな」
言葉を聞いた感想を大空は率直に述べる。
御堂の最近の様子からして、嫌がってはいなかったようなので、予想できてはいたが、大空は御堂からその言葉を聞きたかった。
「大丈夫だろうけど、サークルのことで何か問題があれば私でもいいから、周りに言いなよ」
「ありがとう、その時は頼らせてもらうよ」
おまけにと大空は何かあったら他に頼るようにと付け足して、御堂は礼を言う。
さらに別の話をしようとして大空は口を開く。
「あ、それと、像を見つけたら試しにサブローに運んでもらうから。サブローが運べるか確認したいし」
「あ、まあいいけど……頼っていいという話の後に任せるって話もちょっとおかしい気も……」
先ほどしていた像を持てるかと言う話を大空は持ち出し、御堂は別のところで納得行かずだが、持てると答えた。
大空から見れば困ったときに頼れと言う話と像を持つ話は別であるので、御堂の今突っ込んだ話こそおかしいと言いたくなるところだ。
「んーそうかー? あーもしかして運べないっての? 男がそんなこと言うのかー?」
「いや、違うし。運べるし」
御堂のそのツッコミに対して大空は運べないのかと聞き返して、御堂は少しムキになって答える。
ついでにからかって見ただけで、これでも本当に持てないのであれば大空は持つつもりだ。
そうして二人の組は調査しながら会話もしていった。
そしてもう一つの組でもまた調査していたのであった。
古賀松と大越の組だ。
ここは今洞窟の中で調査をしている最中である。
「ここにもない感じかな」
「ここも思ったより探すとこが多かったし、撤収だな」
柱の影を覗きつつ大越はない事を確認も込めて古賀松に話し、古賀松は予想以上に探すところが多かったと語る。
今探している洞窟は探すのは二箇所目で、ここは分かれ道や探す空間自体も数があった。
「今のところ、時間に対して探す効率は悪くはないはずだしな。このまま続けば見つかりそうだな」
古賀松は現状の成果を語る。
探す箇所こそ、他にも同じ成果の組はいそうだが、ここの洞窟は比較的短い時間で調査出来たので、他の組はそうは行かないかもしれない。
「来海ちゃんの感は頼りになるよな。ここも手っ取り早く終わったしな」
そう言いつつ、古賀松は来た道を戻って入り口を目指す。
事実、大越のおかげで像がありそうな所を効率よく見分けられたのは大きかった。
(ただ、像そのものは見つけられない……というより今のところ、像の匂いらしきものが来てないのよね)
古賀松を追いつつ大越は心の中で像の匂いについて呟く。
というもの、像といえば殆どが岩等を象ったもので像の匂いは土の匂いに近い。
その土の匂いをほぼ土で形成されている洞窟の中で嗅ぎ分けて探す事はかなり難しかった。
探している秘匿像が土以外で形成されているならなんとか嗅ぎ分けられるが、人などの生き物を探すよりも困難ではある。
「頼りにしてくれてありがたいわ。今は手応えが薄い状況だけど、探し当てられるように頑張ってみるから」
「期待してるぜ、俺は今回人脈が頼れなくて普通に探すしかないんでね」
大越は手応えが薄い状況だが、頑張ってみると話し、古賀松は大越に期待の言葉を寄せる。
古賀松の話では今頼れる知り合いが近くにほとんどいなくて、知り合いの情報網も頼りにできないという事だ。
そう会話をしているうちに二人は入口へと戻ってくる。
「ふう、出て来れた」
「さて、出て来れたわけだし……」
大越は言葉と共に服に付いた土埃を払い、古賀松は出て来れたと呟きつつ、大越に目を向ける。
「どっち行けばいい? 来海ちゃん」
古賀松は大越の感を頼ろうと言葉に出す。
別れた道は四つでうち一つはここにくるのに来た道である。
「えっと、そうだね……」
匂いという手がかりも頼りにならない現状、悩みの言葉を入れて大越は完全に自らの感を頼る必要があった。
三つの道を見ると、看板が置かれた道、ポストのある道、そして傍に自販機が置かれた道とある。
看板は事前に確認していて秘匿像についても書かれていなかった。
(本当にどっちに行けばいいか、分からないしな……)
大越は道を見渡しつつ、悩みの言葉を心で呟く。
悩んだ末に自らの根拠無き直感に従い、結論を出す。
「まだピンと来てないけど、ポストのある道を行って見ればどうかな?」
「そっか。ともかく、そっち行って見れば何か分かるかもな」
大越は直感に従った言葉を出して、古賀松はその意見に従うと意思を表す。
道も決まって、その道へと二人は歩き出した。
古賀松の後ろから、大越は視線を送って心の中で考え始める。
(今のところ、マッツと愛理栖ちゃんが深く関わった様子はないけど……)
古賀松と愛川の現状について、言葉に出さず大越は考えていた。
大越も愛川から関わった人の話を聞いてはいるので、古賀松とそれほど大きく関わった事は今まで無いと判断できる。
(今は大丈夫みたいだけど……)
横目で古賀松を見つつ、今は問題はないと心の中で判断する。
それでも安心はできないところはある、安心させてからということもあり得る手段だから。
その気の抜けない土台に大越は仮の安心を置き、移動をして行く。




