サークルの出会い 1
愛川視点です
人が集まってからは話が続いていた。
その中で簡単に自己紹介も済ませて、お互いに軽く触れるためにも会話を弾ませていた。
「しかし、私服で通学出来る高校もあるもんだね。服を選ぶ手間がちょっとだけ掛かるけど、そう言う高校も良いものだね」
「その分、その日の気温の変動で暖かい服や涼しい服を選べるから、そこは私たち助かったと思うかな」
オレンジ色の髪の男性、柄池は大越の高校について語り、大越は利点を更に付け加えた。
4人の会話は主に高校生活の話が際立っていた。
「ああ、そこも利点だね」
「そうなのよ、服を選べるのも結構良いことよね」
柄池の話に同意する形で愛川は会話に混ざる。
日本の高校に通った事がない愛川は相槌を打つなどのそつがない会話でしか話に混ざることが出来なかった。
(私も勉強はやっていたけど……あっちの話は……)
それはサキュバスの世界の学業。
そんな事を今言ってはたちまち怪しまれる。
愛川は笑みを浮かべながら内心で会話の種に釘を刺していた。
そして肝心な黒髪の男性の様子だが。
「俺は私服じゃなくて制服の方がいいな」
「だよなー。リュートは遅刻しそうな時にギリギリ間に合ったことがあったよな。私服だったらあれは--」
黒髪の男性、龍富は制服の方がいいと意見し、柄池が別の会話に繋げる。
今現在は愛川、大越の正体に気付いている様子はない。
龍富が寝ぼけている様子であるおかげか、化者だと疑う様子もなかった。
「おい、その話は今するなよ」
「ああ、ごめんごめん」
龍富がため息交じりで柄池の話に制止をかけて、柄池は謝りつつ話を止めた。
今まで会話をしていて、柄池自身はサークルの加入者に好意的だが龍富は加入者に複雑な感情である。
(否定的って言えるのかな、あの人の感情……)
また、愛川には龍富の感情は複雑とも見え否定的とも見えた。
直接聞くにも下手に聞けばまずいことになりそうだと愛川は疑問を内にしまっていた。
そう内心で呟いてた時、龍富は別の会話へと切り替える。
「後、サークルのことだが、流石にもう加入者はいないだろうからこれで締め切りたいんだけど」
「えー、まだ来るかもしれないし、もうちょっと待っても……」
龍富の話に柄池は待ったを入れる。
「……分かった。待つだけだからな」
「さっすがー」
龍富は悩みながらも、柄池の話に同調してくれた。
柄池も喜びが混ざった声で答える。
この様子で、会話も混ぜながら時間が過ぎていく。
時間が過ぎていった結果、このような結果となる。
「まさか2人の後に4人が来るなんてなー」
柄池はこの結果を笑顔で述べる。
あの後の結果、4人が集まりサークルは計8人となった。
対して龍富の方は
「マジでかよ……」
頭を抱えて結果の感想を述べる。
愛川と大越が入って男女各2人が、その後で男女各2人が入ったことになる。
呻きにも似た小さな声を出した後、龍富は話を切り出す。
「とりあえず、言いたいことは色々あるが、まずは一つ」
龍富は話を切り出すと立ち上がる。
更にはそのまま話を続けた。
「まず、このサークルだがここは悪いことをしている化者を捕らえる為のサークルでな。悪い人外や妖怪等と呼ばれる者と戦うことになるな……同好会って区分になりそうだが」
龍富は言葉を続けながら、サークルに入った人を見渡す。
顔には出さないが、愛川には龍富の視線が怒りを交えていたことを感じる。
龍富の言葉は更に続く。
「……まずは簡単に自己紹介からがいいか。俺は龍富王駕、化者と戦う退魔師をやっている。……出来れば上の苗字で呼んでもらいたい」
「終わりだったら、次は俺でいいかな」
龍富の声から一拍おいてから手を上に挙げて、声をあげた人は耳と額でサングラスを支えている金髪の男性であった。
「……ああ、どうぞ」
眉が動いたか動かなかったか判断に苦しむところだが、龍富は男性へ次を譲る。
「俺は古賀松新この通りの男だけど、マッツって呼んでいいからね? 王駕くんもよろしく」
「おまっ、早速か……」
古賀松は自己紹介を龍富に笑みを浮かべることで締める。
早速の王駕呼びに愛川も理解できるほどに龍富の声は不機嫌に染まる。
「あっ、そんなに気に障ったか? ジョークの一種だったんだけどゴメンゴメン」
「ま、まぁ、そう言うわけだし、そんなに怒らなくても……な」
笑顔で謝る古賀松に柄池は龍富をなだめる。
龍富もここで大げさな行動に出るのはよくないと思ったのか、古賀松の方へ進めていた歩を下げようとした。
「朱鷺子も次、紹介しちゃいな」
ついでと言わんばかりに古賀松は隣の女性に声をかけて、自己紹介を促した。
「ん、いいのかい?……じゃあ私も紹介しようか」
赤髪のポニーテールの女性は古賀松の催促を受けて、確認のための沈黙の後に紹介を始めた。
龍富を含む他の人も特に問題ないと、無言で紹介を勧める。
「私は大空朱鷺子。見た目通りで体を動かす事は得意なんでそういったことを頼むならなんなりと」
「おや? 喧嘩も得意だってのは言わなくても? 女性陣は頼り甲斐のある人だって--」
「それは言わなくてもいいことだ!」
大空は紹介に突っ込む古賀松に前のめりになって阻止の言葉で妨げる。
この2人がこの部屋に最後に同じタイミングで来たことから、愛川から見ていても付き合いはある2人だと推測できた。
「ともかく、私は以上だ! 次は誰が紹介する?」
ここで一拍を開けて、男性が声を上げた。
男性は眼鏡を掛けていた。
「最後に入ってきた人から順に紹介って流れみたいだな……じゃあ、次は俺か……?」
黒い髪で眼鏡を掛けた男性は気持ち下降気味の声で紹介を進めた。
「名前は御堂三狼。パソコンやIT関係は自信がある方かな。後、言っておくことはないな」
御堂は簡潔な自己紹介だけで済ませる。
御堂はパソコンの操作が好きなようで、部屋に入ってから今までの時間でパソコンで何かしらのことをやっていた。
その後は御堂の前に部屋に入ってきた女性の番となる。
順番としては愛川と大越が入った後に部屋に入った女性でもある。
「次は私ってところ?」
女性は長い黒髪でフード付きのパーカーを纏っていて厚い本に手をかけて言葉を述べた。
「私の名は八雲聖華……本を読んでいる時間が多い人よ」
八雲は声の浮き沈みのない平坦な声で紹介をする。
この女性は本が好きなようで部屋に入ってからも離れたところで本を読んでいたほどだ。
柄池が会話に入れようとしてもこのままでいいということで会話には入らなかったほどだ。
ちなみに御堂の方はパソコンを操作しながらもこちらの質問には答えてくれていた。
愛川から後に来た人と龍富の紹介も終わった。
そこで愛川は気がかりなことが一つできる。
(これって、なにか自分の特徴を言ったほうがいい流れ…………?)
今までの自己紹介は自分についての特徴について述べていたが、この流れであれば愛川もその特徴について述べる必要がある。
(となると、あれ言った方がいいかも……)
愛川は大越にも言いそびれたあることが出来た。
これを言うことで怪しまれるかは分からないところだが、おそらくはここで言っても大丈夫だろう。
(それに、きっとこの力は役に立つと思うから……)
流石にサークルに入ったからと言って何もできないことはまずいとも愛川は考えていた。
そのため、こういうことが出来ると周りに周知させることは今必要だとも思っていた。
(よし、このことも言っちゃおう)




