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人魚捜索 11

 店に戻った柄池は頼んだデザートが運ばれていて、龍富の話ではちょっと前に運ばれてきたとのことだ。

 柄池はそれを食しながらもっちと何を話していたかについて皆に話していた。

 流石に誘われたこと迄は話せなかったが、どうやって人魚たちと話せたかについては話せた。

 その話の中で八雲から深く突っ込まれることはなかったため、もしかすると誘われたと知ってあえて言わなかったこともあり得るだろう。

 そして柄池は頼んだデザートを食べ終えたのであった。


「このデザートもいいな、あっさり気味で炭酸を飲んでいるようなしゅわしゅわ感もあるみたいだし」


 柄池はスプーンを置きつつ、デザートを完食した感想を述べた。

 柄池としてもこのデザートは金を出して食べた甲斐は十分あるものであった。


(正直、サービスの一品は八雲さんの話聞いてちょっと食べたくなって来た)


 ただ、八雲のサービスの一品の感想を聞いて、柄池はそっちも食べてみたくなった事を心の中で打ち明けていた。


「ところで、この後ってどうするんだ?」


「本当ならここで解散だけど、もっちがが無事に戻れるかも一応確認はしたいから、帰るまでは待っていたいかなって」


 御堂の疑問に柄池は答える。

 人魚の誘拐される可能性が高いと噂される時期だと皆は聞いている以上、柄池の意見には不満を言うことはなかった。


「ああ、あの話があったら確認はしたくなるな」


「あの、一応皆さんにスタンプカードを配っておきます。他に使う人がいれば、その人に渡してもいいので」


 大空も確認は同意見だと話すと、店員がふと言葉と共にスタンプカード8人分を柄池のいるテーブルに置いてくる。

 この店員は銀色の髪をしていて先ほどまで対応していたもっちとは違っていた。


「あれ? もっちはどうしたの?」


 大越はふと疑問を店員に投げかける。


「あ、はい。もっちは先ほど仕事を切り上げましたが、どうかなさいましたか?」


 まさかの言葉を店員から耳にする。

 時は夕方。

 柄池はまさかこんなに早くにもっちが切り上げることは予想してなかった。


「え? ちょっと待て、大丈夫なのか?」


「そうですね……あの件なら心配しなくてもと本人は言ってますので。なんでもどうしても欲しいというものがあるので、店に向かうとも言ってました」


 龍富の疑問に店員は人魚の誘拐の件を察して質問に答える。


(あの時にいつ店を出るか聞いていればよかったな、こんなことになるなら)


 柄池はあの時の行動を心の内側で後悔していた。


「柄池、どうする?」


「そりゃ、行った方がいいだろ。俺たちがいるってのに、誘拐されたんじゃ話の種にもならないよ」


 御堂の質問に柄池は答えた。

 無事見つけたというのであればそれでいい。

 手の届かないところで取り返しのつかないことになるのだけは避けたかった。


「だな。会計は俺が立て替えるから、他の皆は探しに行ってきな」


「ありがと! それじゃ、今から探そう。何かあった時のことを考えて、二人組で!」


 古賀松も同意して会計は引き受けてくれた。

 柄池は礼を述べて、古賀松以外の7人は席を立つ。

 古賀松が財布を開きながら7人が店を出ようとした時、その時であった。


「あ! ごめん朱鷺子! 俺が立て替えると、金足りねぇ! ちょっと残ってくれ!」


「お前! 締まらないこと言うなよ!」


「ごめん! あとはよろしく!」


 古賀松の突然の言葉に大空は突っ込みながら古賀松のところへ戻る。

 それに取り敢えず二人に託す言葉を柄池は伝えた。

 店を出て柄池達6人は三つの分かれ道に当たる。


「えっと、組み分けは適当で道に近い方で別れて」


 柄池は提案すると、他の五人は頷いてそれぞれ道に近い方へと進む。

 左の道に柄池、大越。

 右の道に御堂、八雲。

 真ん中の道に龍富、愛川がそれぞれ当たり、走って行く。

 柄池は付いてくる大越に声をかける。


「良し、じゃあ急いで探そう」


「そうね、急ごう。近くにいるかもしれないから」


 二人は走りながら、柄池が声をかけて大越もそれに答える。

 二人が走り続けて歩道の脇に草木が生えている場所を脇に見えていた。

 そこで草が揺れるところを目にする。


「あれ、さっきのって……もしかして」


 柄池はふと気になり声を出す


「ちょっと探ってみるから大越さんはここで待って。連絡する必要があったら、手を挙げるからよろしく」


 柄池は立ち止まり、小声で大越に伝える。

 大越も頷いて了承を伝えて、柄池は静かに姿勢を低くして移動をする。

 動いた場所で止まり奥の様子を見ると水色の髪の女性を担いで運ぼうとする男性がいた。

 ただ、男性というには体毛が人間の量とは異なり、獣のように体を覆っている状態である。

 男性の体格で、狼のような上半身、あの男性は狼男であった。

 柄池は大越と視線を合わせて、手を挙げてから草木の奥へと突入する。


「おい! その子を離せ!」


 柄池は忠告とともに歩み、狼男はそれを聞いて柄池へと視線を合わせる。

 女性はやはりもっちで、目を閉じて意識を失っているようだ。


「ほう、威勢がいい人間がいたか……離してもいいけどな……」


 狼男はそう言うと、もっちを担いだ腕を低い姿勢で下ろして、もっちを地面の上に置く。


「お前を寝かしつけて、またこの子を運ばせてもらうけどな」


 狼男は爪の伸びた手を横に広げて、臨戦態勢に移る。

 同時に柄池も退魔警棒を持ってスイッチを押した。

 両者睨み合い。

 その時間は思ったより短く、相手の方から突っ込んでくることでその時間は終えた。

 柄池も相手に向かって行く。


「なんだか知らない棒だが、ただの人間が俺に勝てると思うなよ!」


 相手は爪で引き裂こうと、手を横に引く。

 柄池は持った警棒で相手に向けて突きを放つ。

 しかし、相手は引き裂かずに柄池の突きを横飛びで回避した。

 回避された柄池はもう一度と飛んだ方向へと警棒を薙ぎ払う。

 それもまた相手に後方に下がって回避されてしまうのであった。


「おいおい? どうした? これじゃ俺を倒せないよな?」


 相手の狼男は柄池にダメ出しの言葉を放つ。

 柄池は再度相手との距離を縮めて警棒を持った手を円を描くように真後ろに持っていく。

 相手は突きで迎え撃つように後ろに手を引く。

 柄池は戻るように円をなぞる薙ぎ払い、

 のように見せかけ、柄池は突きを放った。

 それでも相手は横に避けて、突きを回避する。


「こいつはいけねぇ! お前の威勢と実力が釣り合ってないんじゃあよ!」


 相手の狼男は更に柄池へと言葉を吐く。

 挑発するがごとき言葉であるが、一つ気になったことがあった。


(挑発して攻めてばっかりのように見えるけど、予想以上に慎重に動いているな)


 柄池は相手の動きを思い起こし、心の中で分析をした。

 攻めているように見せかけて、相手は慎重に回避に専念しているからだ。

 もしかすると、この退魔警棒を相当警戒しての行動かもしれない。

 相手が回避ばかりだと、時間稼ぎだけで拉致があかない。


(時間稼ぎ……はこっちも悪くないしな)


 柄池は心積もりを心の内側で呟く。

 こちらは大越を通じて、龍富に連絡を取っているのだ。

 それまで時間を稼げるのであれば、相手のやり方も悪い方法ではなかった。

 柄池は再度、相手の距離を詰めて攻撃を仕掛ける。

 今度は危険だが、距離を離さないことを意識して、攻撃は小ぶりでフォローの効くように動くことにした。

 柄池は横に薙るように警棒を払う。

 その攻撃は相手に交わされて、柄池の横に相手が位置するように移動されてしまう。

 そこで相手は空かさず、爪による突きを行おうと腕を引いていた。


(まあ、そう来るよね!)


 だが、柄池は攻撃されることは予測済みで、心の中でも想定内と呟いた。

 柄池は相手の突きを交わしつつ、警棒を持たない手で殴りかかる。

 相手は警棒を使わない手での攻撃に予想は出来なかったのか、意表を突かれた意思が表情から漏れていた。


「ぐあっ!」


 相手の狼男は胸に当たった拳から声を漏らした。

 ただ、力も入れたものではなく相手のダメージは大きくないようであった。


「どうだい? 人間だってこんくらいは出来るんだよ」


「そのこんくらいで自慢されるようじゃ、倒すなんて何年後の話になるんだよ」


 柄池は少しだけ誇るように言葉をかけると、相手の狼男は態勢を立て直しながら言葉を話す。

 今度は、相手の方から攻撃を仕掛けて来た。

 柄池は守る方に回る。

 そう思っていた時の出来事だ。

 突如なる銃声と共に地面に当たる音。


「うおっ!」


 当たった地面は狼男が近くを踏んでいて狼男も驚きの声を出して、柄池から距離を置く。

 銃声の方へと視線を向けると、そこには大越が銃を構えて立っていた。


「私だって……これくらいは出来るから!」


「大越さん! 助かる!」


 大越は柄池に声をかけて、柄池は礼を言う。

 出来ることなら当ててもらいたかったが、戦闘経験のない大越にそこまで求めては酷ではある。


(当てることはできないけど……それでも当たるかもしれない牽制の役がいるだけでも十分だ)


 この状況から柄池は心の中で分析する。

 こうして遠距離からの攻撃が少しでも当たる可能性が出れば相手の行動は制限される。

 更には相手はあれで慎重派であるから、少しの可能性でも行動制限の力は高い。

 それに警棒の力は弱っているが、まだまだ健在である。

 ならば、ここは攻めるのみ。

 柄池は大きく踏み込んで、距離を詰めようとした。


「おい、ちょっと待て」


 男性の声を聞いて柄池は止まる。

 その聞いたことのない声であり、柄池は良くない予感がよぎる。


「そこの男だ。下手な真似はやめておけよ」


 再びの男性の声に柄池は声の方向へ向くと、男性は大越から銃を取り上げて、大越の片手首を握りながら上に持ち上げていた。

 その男性は狼男でもあり、どう見てもこちらの仲間ではなかった。


(優勢なのもここまでか……一瞬だけか)


 柄池は苦い顔をして、状況を心の中で呟いた。

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