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人魚捜索 4

 時間が過ぎて週末がやって来た。

 今回は遠いところへと行くため、二つに分かれて運転することとなった。

 今龍富は窓から見える光景を横目に車の助手席に座っている状況だ。


「いつの間にかに免許を取っていたんだな」


 龍富はそう言ってとなりの運転手に話を持ちかける。


「まあね。卒業まで時間があって、その時に取れたんだ」


「ああ、その時に」


 運転手である柄池は免許を取った時期について話し、龍富は納得を話す。

 ちなみに車は父である雷剣が快く貸してくれたものであり、話を持ちかけた時も、雷剣は柄池のことで驚きと喜び交じりに話してもいた。


「龍富も出来るだけ早めに免許を取っておいた方がいいぞ。雷剣さんも言ってたはずだし」


「んー……それもそうだけど、時間を上手く取れるか……」


 柄池は免許を取ることを勧めて、龍富は同意をしながらも上手く受け入れないと言葉にした。

 この車には龍富、柄池、愛川、大越がいる状況である。

 もう一つの車には古賀松、大空、御堂、八雲がいて大空の父の車に古賀松が運転して移動していた。


「勉強だったら俺もサポートはするし、実技はリュートなら大丈夫なはずだぞ」


 龍富が受け入れ難い状況に柄池は手助けもすると話す。


(取った方がいいのも分かるけど、本当に時間が取れるかも分からないしな)


 龍富は心の中で呟いた。

 実際、大学から帰って来て夜になれば見回りと言うこともある上に、実戦での訓練も欠かすことはできないと言うのが、今の龍富の状況でもある。

 それを一つでもやらなければ、退魔師の行動に支障が出るのに他のことに時間を割くのはかなり難しいのだ。


「……時間があればやってみようかと思う」


 龍富は視線を車の窓から見える光景に移して答える。


「そうか、俺も手伝うからな」


 それに対して柄池は正面に視線を向けながら話した。


「免許か……私も取れればなー」


「そう? 勉強とかのサポートは大越さん相手でもするからね、俺は」


「その時が来たらお言葉に甘えるかも」


 大越は免許について話すと、柄池はサポートもすると話し大越はそれに答えた。


「そういえば車って運転するのにめ」


「あ! 何か猫いなかった!? 珍しい毛色の!」


 愛川が話している最中、その声を遮る様に大越は急に愛川の前に出て、声と共に窓を覗き込んだ。

 龍富もその方角を追う様に視線を動かすが、猫らしい物陰は見なかったのだ。


「あれ? 猫はいない様に見えたけど……もう隠れたのか……?」


「見間違えた……かも? いた気はしたんだけどなー」


 龍富の声に対して大越は答えた。

 その後に龍富は後ろを見ると、大越は愛川の方をじっと見ていた様である。

 もしかすると、愛川ではなく後ろの窓の方を見ている可能性もあったかもしれない。


「あと、着くのにまだ時間があるよな。それまで寝てていいか?」


「ああ、時間はまだかかるから、着いたら起こすよ」


 先ほどのことは考えても仕方ないと結論付けて龍富は柄池に睡眠をとることを伝えた。

 柄池は運転を続けながら後に起こすとも伝える。

 龍富は前日の夜に見回りもやっていてその分の睡眠も不足していたのであった。

 柄池もそのことは把握していたので、すんなりと了承してくれたのだ。

 龍富は揺れる車体の中で次第に意識が薄れていき、睡眠へと移って行くのであった。



 そして龍富たちは目的地へと何事もなく辿り着いたのであった。

 車を降りてからは幾らか歩いていき今は遠くから海が見える道を進んでいた。


「んーっ……」


 その歩く列の中で龍富はひと伸びをしながら歩いていた。


「おいおい? 寝起きだろ? 王駕くん。そんなことでこれからの行動に支障があるんじゃ?」


 その様子を見ていた古賀松は龍富に茶々の言葉を入れて来る。


「ああ、大丈夫さ。いざとなったらしっかり動くから、リュートは」


「ほー、そうか。俺としてはちゃんと動いてくれれば気にはしないんでね」


 柄池は古賀松の言葉に答えて、古賀松は腕を組みながら柄池の言葉に返事をする。

 その様子に龍富はあまりいい気分にはなれなかった。


(なんかあいつ偉そうだな……)


 龍富は古賀松の様子に心の中だけで感想を留めていた。


「ま……今回俺は戦うことはない場合もあるんだけど、やることはしっかりやるさ」


「今回はこっちが探す方だからね」


 龍富は今回のことでぬかることはないと話すと、柄池は龍富の話に補足をする。

 今回の任務は人魚から依頼を受けて別の人魚を探して欲しいという内容だ。

 何かと戦って欲しいという内容ではない。


 しばらく歩くと龍富は遠くにある場所に目が付く。

 依頼者が指定した待ち合わせの場所だ。

 依頼者の指定は木造の建物の近くにある船の泊まり場である。


「そろそろ指定の場所に着くからな」


「えっと……ああ、あそこか。木の建物の近くの。ここ、夏は海水浴場として使うそうだな」


 龍富は着くことを皆に話し、大空は指定の場所を目にしてその場所についての話をする。

 木の建物の周囲には砂浜が広がり、建物自体に人は存在していない状態だ。

 あの建物は夏には海の家として機能するのだろう。


「依頼した人がもっと分かりやすく探す人を教えてくれれば直接探せるのにね。話だけでなく、探す人の写真があれば……」


「それもそうだけどね。あちらは写真を撮れなかったようで」


 移動しながら八雲は探す人の写真があればと話し、柄池も同意しながら、依頼者が撮れなかったからと解答した。

 今回探す人は大まかな特徴だけで探す人の情報自体が少ないことから、直接人魚に会って情報を集める必要があった。


「言われてみれば、電化製品を使う人魚もイメージしづらいよな。写真のことはしょうがないか」


「人魚は殆どが海の中での生活だからな。海の中で電気を使うのも無理のある話なんだ」


 写真の事について大空がやむを得ないと納得すると龍富から、人魚の生活について補足が入った。

 移動をしていると指定された場所である。

 船の泊まり場へと8人は辿り着く。


「ここで待てばいいのか?」


「ま、そうだが、声はかけないとダメだ」


 御堂が問いかけた後、龍富は答えた後に海の方へと視線を向ける。

 その後に龍富は息を一回吸って声を出す準備を整えた。


「おーい! 退魔師が依頼できたぞー!!」


 周囲に龍富の声が響く声に反応はなく、柄池は時間を確認するそぶりを見せた。

 時間は間に合っていることは間違いはない。

 少ししてから水面に浮かぶ物が静かに現れる。

 遠くない位置に浮かぶ物は二つの頭部、人魚で間違いない。


「依頼した人魚で間違いないな? 依頼内容についてもっと詳しく聞かせてもらいたいんだ」


「あ……そうだねー……」


「探す子の話しないと……」


 龍富は声を人魚に向けると桃色の髪の人魚、黄緑色の髪の人魚の順に言葉で応じる。

 だが、反応はどことなく内面的な違和感を感じさせる。


「探す人の特徴だけど、大雑把なことしか載ってなくてな。どういう服を着ていたかとか、行って見たい場所を言ってなかったか、聞いて見たいことがあるんだ」


 龍富は人魚に疑問を投げる。


「行きたい場所って……言ってたっけ……?」


「服……見てない……」


 桃色の髪の人魚が場所について黄緑色の服について話をする。

 人魚の声は先ほどよりも小さい。


「えっと……あの……」


 龍富は戸惑いの言葉を人魚に放つ。


「あとさ……よね……」


「いつ……分から……困り……」


 先ほどの声よりも小さい声で人魚たちは話し合い、誰が何を言っているかも龍富から判断がつかない状況である。

 それもそのはず。


「さっきから距離を離されるとさー! 話聞きにくいんだー! 困るんだよー!」


 龍富は声を大きくして不都合を語った。

 何しろ会話の度に人魚が距離を離しにきているのである。

 これでは任務をこなすのも難しくなる。

 人魚は人見知りだとは知識にあった龍富だが、こういう状況になるとは思ってなかった。


「話には聞いていた人見知りがここまでなんて……」


「王駕くん、こういうのは第一印象が大事なのさ。ちょっと、おれに任せてみ?」


 龍富は現状に驚きを語り、古賀松は龍富の肩に手を置いてこっちの番だと話と行動で伝える。

 龍富としても出来ることはないため、やむを得なく古賀松に任せることになる。


「どうだーい? 俺たちと面白い話してみなーい! バイトで起きた面白い話もあるよー?」


 古賀松は大きな声で人魚たちを話に誘おうとする。

 話を耳にした人魚は古賀松を見ると、視線を変えずに距離をさらに広げた。

 それでも人魚は近寄ろうとはしなかった。


「マジかよー。俺でもダメだってのかい」


「そりゃ、警戒するだろ。そんなちゃらちゃらした格好で第一印象がどうのこうのなんて言ってもな」


 古賀松の落胆の声に大空は格好のことで話を突っ込む。

 その声で古賀松は腕を横へと少し広げて自らの外見を改めて見る。


「それもそうだな。こんな格好じゃあ、あの子たちにはきついか」


 古賀松は自分の格好の感想を述べて、古賀松では話せそうにないと判断した。


「で……この状況どうするの?」


 八雲は現状に対して呟いた。

 確かに厄介な状況ではあるが、何もできないということではないことは龍富は分かっていた。


「じゃあ、そろそろ俺が行くか」


 柄池から、ふと声が上がった。

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