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サークルの出会い 16

今回もまた大越視点

 

「私はね、ここではないもう一つの世界、サキュバスの世界から来たの」


「へー、サキュバスの世界……」


 愛川の説明に大越は関心を言葉にする。


(あれ? 思ったよりスケールが大きい話?)


 それと同時に予想以上に規模が大きくなりそうな予感が大越の内に戸惑いを生んだ。


「そう、別の世界。簡単に言えばこっちから見えないもう一つの地球と言えばいいってお姉ちゃんが言ってた」


「そっか、日本か海外のどこかから来たのかと思った、私」


 別の世界について愛川から簡単に説明が入り、大越は納得をした。

 ただ、納得と言うとまだ説明不足ではあったが、説明に時間が取られそうな気はするので、妥協してそれ以上の説明は求めなかった。


「で、ここまで来て何か目的があったのよね?」


「そう、私ね。好きな人見つけて結婚してお母さんになる、その為に来たの」


 大越の疑問に愛川は目標を答えた。

 サキュバスらしい目標ではあるとも納得する。


「ああでもね。相手はしっかり考えて選ぶつもりだよ」


「しっかり考えて、相手を誘惑して堕とす……サキュバスだし相手が決まれば楽そうね」


 愛川の考えにサキュバスにしてはかなり慎重な考えをもっていると大越は関心をする。

 自由気ままに動くとサキュバスへの印象が大越にはあったもので、

 真面目な目標があると感じていた。


「あー、私が色気で楽しようと思っているでしょ?」


「え? 違うの?」


 愛川は大越の考えにある間違いを指摘する。

 大越もそこを指摘されることは不意であり、驚きの声を上げる。


「私はね、色気だけで相手に好きになってもらおうなんて、考えてないからね」


 愛川はいつもよりやや強い口調で大越に説明をする。

 口調に怒りはないが、勘違いは訂正してもらいたいと強い意志が説明に見え隠れしている。


「あぁ、そうなんだ、ごめんね。変な勘違いをして」


「あ、私は謝って欲しいから言ったわけじゃないからね。ただ誤解を解きたいだけだから、こっちこそごめんなさい」


 大越は誤解を言葉で謝ると、愛川はそこまでの対応は求めてないと逆に謝り返される。


「話を戻すと、私はね、色気関係なしに私自身を愛してくれる人を愛したいの」


 愛川は話題の軌道修正を言葉で行い、話を続けた。


「なんでかって言うとね、私のお母さんは私を産んですぐにどこかへ行っちゃったから。だから、私はお母さんのようなことはしたくないの」


「と言うことは、育ててくれたのって……」


 愛川の説明で大越はふと疑問を投げた。

 愛川の声も心で抱えたものが、見え隠れしていつもより少し重い。


「お姉ちゃんは二人いてね、二人が私を育ててくれた感じなの。お姉ちゃんにはたくさん迷惑かけたから、私はあのお母さんのようなことはやりたくないって思えて来たのよね」


 愛川は説明を続けて、大越は黙って聞いていた。


(私だけじゃないのね、抱えている物がある人は……)


 聞きながら大越は自分だけが苦労している訳ではないと、心の内側で反省もこめる。


「それで男性を、その人だけを愛して、子供も二人で育てて行きたいの。それが私のここに来た理由ってところ」


 そして愛川は心で抱えていたものを退けるようにいつもの口調に戻して自分の話を締めた。


「愛理栖ちゃんも苦労していたんだね」


「あ、私のなんか全然大したことないよ! 苦労だったらお姉ちゃん達の方がずっと重いものなんだから」


 大越は愛川に対して気遣いの言葉を送ると、愛川はそれほどではないと返す。

 先ほどの表情を見せれば、大したことがないとは言えないだろうが、敢えて隠したことは大越にも見て取れた。


「そういえば、お姉さん達が二人だけってことは、バイトはしているの?」


「それがいくつか選んでいる途中でまだ決まってなくて……」


 大越が別の話題を振ると、愛川は苦笑いを含めて答える。

 愛川が良くない状況だとみて分かったが、決まってない状況は大越は好都合であった。


「それじゃ、私のバイト先で働いてみない? 喫茶店でのバイトだけど、人手が欲しいところなのよ」


「えっ、ホント? 来海ちゃんと一緒なら大丈夫そうだし、じゃあ、そこに行こうかな」


 大越からの提案があって愛川の苦笑いを愛川自身の明るい声で晴らすことが出来た。

 大越自身もいい回答を得られたのだが、この場での回答は早いと感じていた。


「それじゃあ、決まり……と言いたいけれど、この場で即決は私も困るから、バイト先に行って考える時間もあった方がいいよね。バイト先を決めるのはそれからで」


「はーい」


 大越の再びの提案も愛川は快い声で受け入れる。

 その後、バイト先に講義終了後に行くとお互いに約束をして、この場で別れることになった。

 また、定期的に愛川の話も聞くとの提案に愛川は渋々承諾をした。

 そして、講義が終わり、愛川と大越はバイト先へと向かっている最中である。

 愛川と大越は人が行き交う一本道をまっすぐと歩きながら会話をしていた。


「店長さんも含めてスタッフはみんな女性だからきっと安心できると思うよ」


「そっか、大学からも遠くはないから場所自体もいい感じね」


 大越は愛川に店の説明をして愛川も理解の言葉で移動しながら返した。

 大越は言葉の後にバイト先に間に合うか、スマホで時刻を確認する。


(時間もまだ余裕だし後五分も歩けば着くかな)


 大越は時間の余裕を確認して、心の中で呟いた。


「店のスタッフは多いって訳ではないし悪い人はいないけど、もしも、嫌なことがあったら遠慮なく私か店長さんに言っていいからね。お客さんからってこともあり得るから」


「うん、その時は、ね」


 大越は愛川の方へ顔を向けて問題が起きた時のことを言うと、愛川は苦もなく了解の言葉を返す。

 大越は顔を進行方向へと戻して、歩みを進める。

 その時であった。

 大越は急に来た道の方へと顔を向けたのだ。

 大越に人の会話、足音、普段聞くもののそれ以外の音が耳に入ったからだ。


「え? どうしたの? 来海ちゃん」


 愛川は急な行動に驚きと疑問を投げる。


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