サークルの出会い 14
今回のみ御堂視点です
八人はそれぞれの夜を過ごし朝食を摂り、そして宿を後にした。
帰り道が違うことから柄池、龍富、愛川、大越の組、御堂、古賀松、八雲、大空の組で別れて帰ることとなる。
御堂の組は傾斜が有り、木や草が茂る道を歩んでいた。
(道自体は大して苦でもないけど……)
御堂は緑のある道を歩きながら言葉を内側に留めた。
パソコンも入った荷物を持ちながら歩いていたが、これでも体力はそこそこあるほうなので問題はなかった。
(だが、虫が多いのは気のせいかな……)
飛んでくる虫を払いながら、御堂は心の中で呟いた。
昨日のサークル活動では気になるほどでもなかったが、今日はこの時期にしては多い方であった。
「この道は昨日も宿に行くときに通ったけど……今日は虫が多い気がするな」
古賀松も虫のことを話していると手で顔の近くに飛んで来た虫を払う。
やはり御堂の気のせいではないようだ。
古賀松は八雲の方へと視線を向けると何か気づいた様子で口を開こうとする。
「そう言えば、聖華ちゃんは虫大丈夫なの?」
古賀松は八雲に疑問を投げかけた。
八雲の方は虫のことを気にせず、本を読みながら歩いていた。
「虫のことかしら?」
八雲は古賀松に視線を送ると本を片手に納め、近くの木の方へと向かった。
その木には蜘蛛が張り付いていて八雲が蜘蛛の近くに手をかざすと、蜘蛛は八雲の手の甲へと乗った。
「この通り。平気よ」
八雲は言った通りの行動も示して御堂を含む三人に視線を送る。
蜘蛛は八雲の手の上でじっと大人しく静止していた。
「お、平気な口かい」
「おー……すげー……」
その様子に大空は評価する感想を述べ、後に古賀松は驚きを口にする。
(うわぁ……まじかよ。俺には真似出来ない……)
御堂は八雲の様子を見て、呟きを内心で留めた。
御堂は虫が苦手であのような光景を見るだけでも嫌な方で触ることはそれ以上にダメであった。
「こんなことができれば、小さな虫が飛んで来ても平気だよな」
大空は感想を言葉にした。
すると大空の言葉への返答はなく八雲は沈黙している。
「……」
沈黙というよりは視線を固定とも言えるか。
しかも八雲の視線は御堂へ向けられていた。
その視線に御堂も戸惑う。
そこで八雲はふと笑みを浮かべた。
御堂は一瞬で危機信号を感じた。
(あ、これまずい……)
何が起こるかはよく分からないが、必ず良くないことがおこると感じ
御堂は危機の察知を内側だけで留める。
八雲は木から離れるように歩き始めた。
「あ、おい」
大空の声を聞かずに八雲は歩いて行く。
御堂の方へと。
「うぉっ!」
途中で古賀松の近くを八雲が通るも、古賀松は驚きの声をあげて距離を置く。
古賀松には目もくれず素通りして行く。
「あー……あのー」
御堂はなんとかこの危機を避けるべく、言葉を出そうとしていた。
だが、実際に出る言葉は独り言にも聞こえるなんでもない言葉であった。
「これから起こることだけど……予測なんだけどさ……」
御堂の言葉をかき分けるかのように八雲は御堂の方へとそのまま向かう。
そして御堂は後ろへと歩いて距離を置きたいも八雲は歩く速度を上げていく。
「すっごい嫌な予感がするんで……その、やめてくれないかなーって……」
御堂は停止の願望を言葉にするも八雲は聞こえてないのか聞かないのか、それをもかき分けて進んで行く。
御堂は後ろに歩く速度を上げるも、八雲は更に速度を上げて御堂との距離を詰め寄る。
そして後ろを見ずに歩いていたことからついに木にぶつかって御堂は進行を止めてしまう。
(うわっ、まじでか……)
この状況の変化に御堂は内心で驚きつつ、周りを見て逃げ道の確認に移る。
左右には人の通れるところはない。
右の道は木に沿って行けば逃げ道になるかもしれないが、やはり八雲との距離は間違いなく縮めないと逃げることは出来ない。
逃げるには確実にその道を行かなければ行けない、それは八雲もわかっていることから御堂の逃げ道は塞がれていた。
「あー……俺の反応見れば……虫ダメだっていうの分かるよね?」
御堂は出来るだけ八雲の機嫌を損ねないよう爆弾を解体するかの如く、言葉を選び綴る。
少しのことで事態が急転しないようにだ
が、それでも八雲は御堂に近づこうとする。
「だから、虫を近づけられるとダメなんだけど、分かって! ねえ、分かって!?」
御堂は早い言葉で訴えようとするも八雲は通じることなく歩み寄る。
むしろ、分かってやっているようにも取れた。
「あの! なんか悪いことしたら、謝るから! ごめんなさい! 申し訳ございませんでした!」
御堂の言葉は更に早さを増していった。
ここで八雲は一歩分の距離を開けて歩みを止める。
「おーい、相当嫌がっているしここら辺で勘弁してやっても」
大空の制止の言葉が奥から聞こえて来た。
それに応じて八雲も蜘蛛の乗った手を引っ込めたのであった。
これで御堂は蜘蛛との距離が遠くなる。
御堂は状況の改善に一息をついた。
しかしであった。
「あっ……」
大空の不意の一言が響く。
八雲は手を放り投げるように御堂の方へと振るう。
蜘蛛の乗った手を蜘蛛が宙を飛び、御堂へと距離を詰める。
そして蜘蛛は御堂の服へとくっつくのであった。
「うびゃああああああああ!!!!」
御堂の悲鳴が辺りに響いた。
きたないうーちゃん




