サークルの出会い 11
今回のみ柄池視点です
愛川を敵と間違えた件で解決まで行き柄池と龍富、そして愛川と大越と八雲は宿へと戻って行った。
なんとも言い難い雰囲気は流れていたが、それ以外には問題はなく宿へと戻ることになる。
そして、今は宿の中の大きなテーブルの近くに柄池はいた。
「おいおい、愛理栖ちゃんを斬ろうとしたんだって? こんな可愛い子によく敵意を向けられるよなー」
先に宿へと戻っていた古賀松たちは八雲が早々に話をしてしまい、龍富の失態を耳にした。
古賀松は開口一番に龍富へ言葉を放つ。
柄池はそれにすぐさま古賀松の近くに寄ることで応じる。
「あー……マッツ、この話はもうやめてくれ」
柄池は小声で古賀松に耳打ちをする。
古賀松は龍富の顔色を見ると、表情に理解が浮かび上がる。
「……悪かった。やりすぎたようだし、これで止める」
古賀松は察してくれて茶化すことをやめると言葉にする。
龍富は平常心を保とうとするも顔色は悪く、失態のことを耐えているという表情であったからだ。
(思ったより素直に受け入れてくれて助かったよ)
柄池は古賀松は先ほどの龍富の失態の話をやめるように言っても、渋ると考えていた。
だが、結果はこうで柄池は手間取ることもなく済んだことで助かったことになる。
「それじゃあ、みんなが集まったことだし……」
柄池はサークルメンバーを見渡しながら言葉を話す。
柄池を含むメンバーの8人は皆揃っている状況だ。
「今回のまとめを絡めた話をしたいからみんなそこに座って」
柄池の一声でメンバーたちはテーブルを囲う形で座る。
柄池はテーブルに手をつけて立ったままの形でだ。
「まずは……こうやってみんな協力してくれてありがとう。おかげで時間がかかることもこんなに短く済んだんだ」
「ははっ、朱鷺子のやつスゲーだろ? 土の精を一対一で倒したんだからよ」
柄池が言葉と共に頭を下げると古賀松は自分のことのように大空の功績を褒めていた。
柄池は協力してくれて、という言葉を用いたが、まだ6人は仮メンバーなので力を借りて当たり前のように聞こえる言葉を用いたくなかったためだ。
「あたしがやったのは確かだけど、そんな強調するようなことは言うなよ」
「ああ、朱鷺子さんは想像以上に頼れると分かってよかったよ」
「ありがと、褒められて悪い気はしないよ」
大空の言葉に柄池は大空への評価の言葉を送ると大空も満更ではない様子で言葉を返した。
「で、早速皆に聞きたいことがあって、これからサークルの活動を続ける意志はあるかな? これからは今以上に危険なこともあって俺やリュートが助けに行けない時もあるけど……」
柄池は重要な話題を早々と切り出す。
これからは危険なことも多くなるので、柄池からの無理強いをしたくないからだ。
(出来ればみんな続けてくれればと思うけど、そこはみんなの意思次第だから)
柄池は言葉に出したい部分を内に押し留める。
龍富自体は聞くまでもなく続けるが、柄池の言葉には眉を潜ませていた。
「私は……その、続けたいと思うかな」
最初の継続の言葉は愛川からだった。
愛川は続けて言葉を綴る。
「今回は足引っ張っちゃったけど、これからは足引っ張らないように頑張るから!」
「ありがとう、愛川さん。続けてもらえて何よりだよ」
「うん、頑張るから!」
愛川の言葉に柄池がお礼の言葉を送り、それに愛川は笑顔と言葉を返した。
「わ、私も続けたいな。愛理栖ちゃんは何するか心配だし、役に立てることは何かあると思うから」
「大越さんもありがとう」
大越は手を上げつつ続ける意志を示して、柄池は礼を言葉にする。
「あたしだって続けるつもりだよ。自分の力でどれくらい行けるか気になってきたとこだしな」
「俺もこのままこのサークル所属になるぜ。まだまだ面白いことはありそうだしな」
大空も力強く拳を握りつつ継続の意志を示し、古賀松も継続の意思を伝えた後、龍富へ視線を投げる。
「私もここにいれば、化者への知識は出せそうだし残るつもりよ」
「朱鷺子さん、マッツ、八雲さん、こう言ってくれてありがたいよ」
八雲はテーブルに置かれた本に手を置きながら意志を伝える。
御堂に限っては兄から強制されているため、柄池は敢えて聞かないことにした。
聞けば逆にかわいそうなことになるからだ。
「な?! 嘘だろ?」
龍富の口から想定外を伝える言葉が出た。
「いいじゃないか。残る意思があっての言葉を言ったんだから」
「でも、これからみんなに起こることだってどんな危険があるかも分からないだろ?」
柄池は賛成の意見で龍富は否定の意見、議論にねじれが生まれる。
この状況を変えたのは愛川であった。
「危険だとは思うけど、同じぐらい危険な目にあっている人もいるわけだから……その、出来るだけ見過ごしたくはないと思うの。だから、私は続けたいの」
「私も同じ感じ。危険な時は……まぁ、なんとかして逃げるから!」
愛川は揺るがない意志を言葉にして、大越もその言葉に続く形で意志は変わらないと告げる。
「ま、あたしは危険は慣れているもんだし、松もおんなじだろうさ」
「そんなところ」
「人とは異なる生物に近づくから危険は覚悟の上よ。私はそれでも化者に近寄れる価値はあると思うから」
大空、古賀松、八雲の順にそれぞれも残る意志を伝えた。
「そう言うわけだしな、リュート」
柄池は龍富に視線と言葉を送ると龍富は苦味を口にした顔をしていた。
「……ああ、分かった。ただしな、俺はいつでもやめるって言っても構わないからな。俺は引きとめないし、俺に言えないならガットでも言っていいから」
「俺にやめるって言っても怒らないからね。俺からは無理強いをしたくないから」
龍富から5人の加入を認める言葉を引き出し、柄池はそこに補足で言葉を付け足した。
御堂に関しては兄の存在をどうにかしないと行けないので、ここでは敢えて保留とすることにした。
「それじゃあ、正式に仲間となったところで」
柄池は周りを見回し改めて仲間となった皆を見て呟く。
「ようこそ、このサークル。退魔師同盟へ」
そして、柄池は歓迎の気持ちを言葉にて表現した。
退魔師同盟とは高校生時代の活動で使っていた名前を引き継いだものだ。
「後、今回は歓迎記念に飲み物をみんなに奢ろうと思うけど、みんな何がいいかな?」
柄池は周りに何がいいかと問うと愛川からすぐさま返答が帰って来る。
「私、牛乳がいい!」
「それじゃあ、私はコーヒーがいいな」
愛川の後に大越も返答があった。
「リュートは緑茶だよな?」
「ああ、と言うよりも退魔師同盟の名前は引き続きかよ」
柄池が確認の意の質問を送ると、龍富はサークルの名前についても追求する。
「まあね、それ以外の名前があるならそれでもいいけど、何か他の名前はありそう?」
「……いや。他にはないんで、俺もそれでいい」
柄池が聞き返すと、一考の後、龍富は同意の意を伝えた。
「悪いね、柄池。私はジンジャエールを」
「俺もお言葉に甘えて、野菜ジュースを奢ってもらおうかな」
「私はコーヒー以外ならなんでも」
続いて、大空、古賀松、八雲の順に要望を述べられた。
「俺はスーパーフレーバーエスプレッソミックスエネルギーブレンドコーヒーで」
「す、スーパーフレーバー……エスプレッソ……えねらんど……?」
「あー……っと赤と黒のパッケージのコーヒーあったよな、ここの自販機に。それが今言ったコーヒー」
御堂は注文を述べるも、柄池には長い呪文のように聞こえ、全ての言葉が届かず御堂は見た目の方で説明を試みる。
(あったけかなー?赤と黒のパッケージのコーヒー……)
柄池は御堂の言うコーヒーの存在を思い浮かべていた。
柄池は事前に自販機を見てある程度は商品を知っていたが、御堂のコーヒーはあったかどうかは思い出せないでいた。
そのため、少しの間、柄池は思考を巡らせていたのであった。
「それじゃあ俺も柄池と行くから。俺も柄池に話があるからその方がいいな」
「ああ、悪いな。それじゃあ早速」
悪いことをしたなとの表情を浮かべた。
御堂は柄池の様子から助けの言葉を出して、柄池は謝罪しながら移動を始める。
「済まない、頼む」
「よろしく~」
龍富、古賀松の順に柄池を見送る言葉が送られる。
御堂のする話というと、退魔師同盟への加入についてか柄池は早速話について切り出そうと口を開く。
「話ってもしかして……同盟への加入について?」
歩きながら柄池は斜め後ろに位置する御堂に話を振る。
「ああ、それは違うんだ。みんなの連絡でな、一つ提案があってという話なんだ」
話を振った結果、御堂は嫌な表情を見せずに提案という形で話を振り返した。
御堂は兄による強制加入であるため、この同盟の加入についてどういう感情があるか柄池は気掛かりであったのだ。
(強制という形だけど、サブローは加入については今は嫌ではないみたいでよかったよ)
柄池は内面で安堵を呟き、安心を感じていた。
「それで、連絡について何の話かな?」
そして柄池は御堂の提案について聞き始め、飲み物を買って七人に届けるまでその提案について聞いていたのだった。