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サークルの出会い 10

今回のみ愛川視点です

 柄池の提案から、柄池の組と古賀松の組は合流することとなり、その後、何事もなく合流となった。

 移動速度は愛川もいることもあってゆっくりではあったが、多人数であったことが功を奏することとなる。

 多人数ゆえに土のせいから発見されやすく、広い視野を抑えることができたからだ。

 その結果として龍富の話では予想以上に早く終わったとのこと。

 そして、初めての任務を終えて愛川と大越は二人並んで宿へと戻っていた。


「うわー、本当にダメだったなぁ、私」


「まあまあ、こう言うところを歩くなんて思わなかったしそんなに気にしなくても。ここら辺は土の精が出ないから焦らずにのんびり戻ろう」


 愛川は肩を落としながら言葉を吐き、大越はそれに対して慰めていた。

 任務の後は宿へと戻ることになったが愛川は疲れもあって、移動が遅く大越と二人で奥手ながら戻る道を歩んでいる。

 この場所は木々や岩も見えるが、土の精の警戒区域から離れていたので、柄池、龍富も遅れての移動を了承している。


「やっぱり、サークルは続けたいし、このまま足引っ張ることはしたくないからなぁ」


「今日みたいにこんなに歩く事は毎回あるとは限らないはずだし、気にしすぎもどうかと思うよ」


 愛川はこのままではいけないと危機感があったが、大越はそれのフォローの言葉を愛川の肩を叩くとともに送る。


(そう言えば、今は二人だけだよね……)


 愛川は心の中で周りの状況をつぶやく。

 回るには木々があり、他人の気配は大越以外はない。


「来海ちゃんさ、私の本当の姿見てなかったよね」


「ん?」


 愛川の声に大越は反応の声を出す。

 大越が愛川の本当の姿を見ていないならば、本当の姿を一度確認してもらいたいためだ。


「ああ、実はね。あなたのサキュバスの姿だけど」


 大越は本当の姿について言及する。

 しかし、愛川はすでに横回転していて、化者の姿へと変わっていたのであった。


「これが私のサキュバスの姿。本当の姿だよ」


 回転を止め、大越に向けて言葉とサキュバスの姿を送った。


「おー……ってなんで見せちゃうの? 私その姿は一度見たのよ」


「え? いつ?」


 サキュバスの姿を見た大越の反応は思ったより薄かった。

 しかも、その姿は一度見たとまで大越は語る。

 大越の薄い反応の声に愛川は自らを見た時に疑問を投げる。


「愛理栖ちゃんが逃げている時よ。逃げるように飛んで行って見えないところで人間の姿に変わったから、あなたの二つの姿を確認できたのよ」


「あー、あの時か」


 大越の話では龍富から逃げた時に両方の姿を確認できたようだ。

 愛川はあの時の大変だった時を視界を空へと向けて声とともに思い起こす。


「私さ、サキュバスの姿だけ見ても、人間の時の私と結びつけにくいと思ってこの姿を見せたの。この姿で来海ちゃんに敵だと思われたくなくて」


「確かにね、別々に見れば同一人物なんて思わないよね」


 愛川は髪を持ち上げ、服に軽く触りながら話して、大越も同調する。

 今のサキュバスの姿と人間の姿では髪や目の色、声も違い、そして服の露出度もサキュバスの時が高い状態だ。

 それで愛川の両方の姿を同一人物と判断する事は難しいだろう。


「あー、あとね。私の姿は本来は人間だけど、愛理栖ちゃんに見せた以外にももう一つ別の姿があるんだよ」


 愛川の姿の話題で大越もそれに連なった話題が出た。

 愛川もその話に興味を持った。


 その時だった。

 突然の草木が大きく揺れる音。

 愛川は音の鳴った方へと視線を向けた。

 そこには何者かが上へと飛び上がる光景を目にする。


「あ……」


 愛川の声に不味い予感が混じる。

 飛び上がってこちらに向かっていたのは刀を持った人物。

 龍富であった。

 今の愛川の姿はサキュバスの姿。

 その姿はかつて龍富に敵として見られている。

 龍富は明らかに愛川に敵意があった。


(ど、どうすれ……ば……いいの……?)


 愛川は内心で戸惑っていた。

 龍富との距離は遠かったが、この状況の打開策が思い浮かばな


「今すぐ人間に戻って!」


 思い浮かばない時に強いながら小さい声が大越から発せられる。

 愛川はなすがままに一秒も掛けずに人間の姿に戻る。

 愛川は人間に化ける時、本来なら回る必要はないのだ。


「な、何やっているのよ! 人間に対して! 愛理栖ちゃんは人間でしょ!?」


 大越の責める声は龍富に向けられる。

 すると、龍富は敵意が戸惑いの意へと変わった。


「何と見間違ったの?! 何かの敵と? 私は敵意がある人物は誰も見ていないわよ、あなた以外はね!」


 大越は更に責めの声を龍富に投げると、龍富は着地した。

 龍富の様子は自らの行動に戸惑いを感じていたことを隠せていなかった。


「え……? あ……その……嘘だろ?」


 龍富は困惑の声を上げつつ、頭を抱えて視線を右往左往させていた。


「……もう、なんでそんな間違いをしたのよ。不確定なことに焦ってこんなことをするなんてどうしてかしら」


「その……化者がいると……思って」


 大越のまくし立てる声で龍富は声まで弱くなっていた。

 対して愛川は大越の近くにより龍富を安全圏から眺めている状態だ。


(とりあえず何も言わないほうがいいよね、これ……)


 愛川は心の中で沈黙を決意していた。

 この様子だと、龍富はサキュバスの姿を大まかにしか確認しないままで攻めてきたのだろう。

 攻めてきた時に距離が遠かったこと、愛川の変身が瞬時であったこと、そして大越のフォローがあってここまで来れた事は愛川にも分かる。

 愛川が眺めていると龍富の後方から柄池が追いかけてきた。


「あれ? 何かあったか?」


「それが、龍富君が愛理栖ちゃんを敵だと思って攻めてきたのよ」


 柄池の疑問に大越が答えると、柄池は疑問の視線を龍富に向けた。


「実は……昨日のサキュバスがいただろ? そいつがいたと思って……」


「あー……でも、いきなり攻め込むのはダメだろうよ。こんなことがあるんだし」


 龍富は弁明をして柄池は理解を示して、その弁明にダメ出しをする。

 その意見に龍富は何も言えず、表情を暗くさせる。

 龍富は嘘を言ってはいないが、この場では嘘付きであってもらわないと愛川に問題が出てくる。


(ごめんなさい……今はこの状況でないとダメなの)


 龍富に申し訳なくなった愛川は心の中で謝罪をしていた。

 とここで音もなく滑るかのように龍富の後方から本を持った八雲が現れる。

 龍富と柄池はまだ八雲の存在に気づいてはいないようである。


「ともかく愛川さんに謝った? まだなら今謝ったほうがいいよ。俺も一緒に謝るからさ」


「あ、ああ……」


 柄池の催促に龍富は理不尽を感じながらも謝る気持ちは声の中で見える。

 しかし、龍富は先に八雲の存在に気付き、八雲の方へと視線を向ける。

 八雲は龍富の方をじっと見ていたからだ。


「な、何か……?」


 龍富の質問の後、八雲は沈黙と変わらない龍富への視線で応じる。

 少し沈黙が流れた後、先に口を開いた人は八雲であった。


「いーけないんだーいけないんだ。せーんせいにいってやろー」


 八雲は龍富を茶化し始めたのだ歌のようなリズムのある声で、日本にそういう煽る歌でもあるのかと愛川は思いながらも突然の八雲の行動に愛川は反応に戸惑った。


「え……あ、あのさ……その……」


「せーんせいにいってやろー」


 龍富の戸惑いの声に八雲は茶化しの声を入れ続ける。

 この人、容赦がない。

 この状況で不味いと顔に浮かべ柄池は解決に乗り込んだが、先に視線を向けたのは愛川の方だった。


「本当にごめんね、愛川さん。リュートはこれでも安全を考えて、みんなの安全を考えてああいう行動を取ったはずなんだよ。大越さんと愛川さんも含めてね……結果は裏目ではあるけど、どうにか許してくれるといいかな」


 柄池はその言葉を愛川に送った後、愛川の言葉を聞く前に龍富の方へと向かった。


「まぁ、わざとじゃ……あ……」


「八雲さん、そんなにリュートを弄らないであげてー。悪意があってのことじゃないんだからー」


 愛川の言葉を聞かないまま、柄池は八雲の方へと言葉を向けて言った。


「はんせいぶんはーなんまいだー」


 八雲が龍富に視線と言葉を向けながら本で表情を隠していた中で柄池は仲裁へと入っていく。

 これで愛川の危機は完全に去ることとなる。

 ここで大越が愛川の耳に顔を近づけて口を開く。


「これからは無闇に化ける事はダメね……」


 大越の小声に愛川は頷いた。

 愛川のことはもちろんだが、龍富の反応からすれば大越が変身したとしても味方だと認めてくれるか疑問である。

 万が一、変身して敵として戦うことになるようなことは避けておきたい。

 愛川はまだ茶化されている龍富を見て心の中でこう決めていたのだった。

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