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サークルの出会い 8

 龍富は言葉よりも行動が先だと愛川の方へと刀を持って走った。


「愛川さん! リュートの方へ走って!」


 柄池も気付いたのか避難の要請を愛川に送りながら走った。


「え? 走るの?」


 愛川の声はまだ状況に気付いてないが、立ち上がろうとしている。

 愛川との距離は龍富が一番遠い。

 それでも土の精が愛川に迫っている状況走る他ない。

 複数の土の塊が連なり、人の形を模った土の精、それは腕の部分を振り上げ始めて愛川を殴ろうとしていた。

 対して愛川は走る体制に移って走ろうとしていた。


(間に合うか?)


 土の精が愛川に触れるか否か龍富は内で問う。


「愛川さん! 姿勢を低くして走って!方向は龍富の方でいいから」


「え? 分かった!」


 柄池の声から緊迫した状況のみは愛川に伝わったようだ。

 愛川は姿勢を低くして走り始めた。

 だが、土の精はいつ拳が振り下ろされてもいい状況。

 柄池も龍富も愛川にそれまでに近寄れるか分からない。


「間に合ってくれ!」


 龍富は言葉とともに刀を抜いて駆ける。

 そして、土の精は拳を振り下ろした。

 愛川は走っていたものの妨害がなければ、拳は愛川に触れてしまう。


「まず……い」


 その龍富の言葉の間に拳が愛川に触れようとした。

 その時


「待った!」


 柄池は言葉とともに土の精の胴へと突撃して胴を抑えていた。

 間一髪、愛川に拳は触れなかった。


「ガット! 助かった!」


 ここまでかけた龍富と土の精の距離は刀が届く範囲。

 龍富は柄池に言葉をかけ、刀を振った。

 胴を抑えられた土の精は回避が出来ず、龍富の斬撃を受けることになった。

 だが、土の精は寸のところで上半身をのけぞり、完全な直撃は免れていた。

 証拠として、すでに柄池を胴からはがして体勢を元に戻していたことも上げられる。


「すまない……俺がしっかり抑えていれば、一撃だったのにな」


「いいんだ、ガット。愛川さんが無事なら十分だ」


 柄池の謝りに龍富はフォローを入れる。

 柄池の刹那の判断と行動もあって愛川は無事だったのだ。

 そしてその愛川は頭を抑えてうつ伏せで伏せていた。

 のだが


「良かったよ。間に合って」


「えっと、よく分から……って、私危なかったんだ!」


 大越は愛川の上で安全を確認し、愛川も地に伏せたまま会話していた。

 この二人が共に倒れこみ、愛川の回避に貢献したのだ。

 大越と愛川の距離は少なくとも龍富と愛川の距離と同じだったはずだが、それでも大越は駆けつけたようだ。


「大越さんもナイス!」


「ま、まぁ、愛理栖ちゃんがあんなことになったらね」


 柄池は大越の行動を褒めて、大越も悪くない表情で返す。

 一瞬の出来事で大きく結果が変わる内容で大越の行動は龍富にとっても非常にありがたかった。


「二人とも、早く離れるんだ」


 龍富は大越と愛川に視線と言葉を向ける。

 向けられた二人はすぐに立ち上がって走り去ろうとした。

 そして、土の精はそれを許さんと体現するかのように愛川へと殴りかかろうとする。


「こいつ……先鋭体だよな」


「ああ、この周辺で見たのは俺も初めてだ」


 柄池の言葉を龍富は返して土の精の攻撃を刀で防ぐ。

 よく見る土の精は一言でいえばずんぐりむっくりの体系だ。

 しかし、この先鋭体と言われる稀にみる個体は洗練された体系を持ち、よく見る土の精とは速さと身軽さが上昇しているのだ。


「大丈夫? 早く離れよ」


 愛川へと大越は声をかけるとともに背中を押して、少しでも早く動けるようにと後押しをする。

 愛川も頷き、走り始めた。

 特に負傷した様子もないようで龍富の見た範囲では走ることに支障はないようだ。

 柄池も一旦距離を取り、自ら攻め込む機会を狙い始めていた。

 そして土の精はさらなる攻撃を仕掛けようと拳を構えていた。

 その攻撃に龍富はよく見て交わしたのちに刀での突きを同時に行う。

 その突きは土の精に身軽に交わされてしまうことになる。


(普通の土の精よりも速い先鋭体だとこうも厄介だな)


 龍富は口の中で苦味が広がる思いを表情に浮かべ、内心で呟く。

 龍富は横への斬撃をさらに仕掛けるも、後ろに下がって土の精はそれを回避した。


「このままじゃ……」


 龍富はこのままの攻勢ではいけないことを思い始めていた。

 そう思いながらも攻撃は加えないとも思い、さらなる斬撃は再び回避される。

 ならば斬撃の範囲を交わされる前で水増しして攻撃をと別の手段を取る方針にした。

 思考の最中、土の精は龍富へと再び攻撃をしようとする。


「今だ! リュート!」


 突如、声と共に柄池が土の精に突っ込み、足を拘束し始めた。

 その結果、土の精は自由を奪われたのだ。

 土の精は拘束を放置せず柄池の方に手を伸ばす他ならなかった。

 その隙を龍富は逃さない龍富は攻撃範囲内で刀を横に構えていた。


「でりゃあ!!」


 辺りを裂くかの一閃。

 土の精は横の斬撃で上半身が宙に飛ばされることになる。

 飛んだ上半身は落下することで地面の上に砕け下半身も砕け始めた。


「やったな、流石リュート!」


「ああ、ガットも援護してくれて助かった」


 柄池が笑顔で龍富を讃え、龍富も柄池を評価し返す。

 そしてすぐに柄池の顔から笑顔が消えることになる。


「だが、ここら辺で先鋭体が出てくるなんてな」


「ああ、マッツの方もちょっと心配になってくるな」


 龍富は険しい表情で状況を語り、柄池も同じ表情で語る。

 龍富にとって古賀松はあまり気に入らないが、危ない目にあっていいかといえば話は別だ。

 対処が厄介な先鋭体と対面すれば、あちらはただでは済まない。


「あっちの方が心配だ、念のため合流しよう」


「そうだな、愛川さんと大越さんも行けそうかい?」


 龍富の提案に柄池も賛同しつつ、愛川たちの方へ提案を振る。


「私は大丈夫、愛理栖ちゃんは?」


「私は……走らなければいいかな」


 大越も賛同すると、愛川も一応ながら賛同する。

 休みも中途半端で突然走ることになれば無理もない話か。


「じゃあ、ゆっくりでもいいから合流しようか。急ぐ必要が出たらリュートに急いでもらうけどいいか?」


「俺はそれでいい、もしもの時があればガットに任せるぞ」


「ああ、後、マッツたちの状況も電話で確認しておこうか」


 柄池が提案をまとめて結論を出して、龍富もまた賛同した。

 その後に柄池が声を上げた後スマホを取り出した。


「後、他に敵はいないよな……」


 龍富は念のためと思い、他に敵はいないか確認を始める。

 他には敵らしい敵はいないようだ。

 他の場所に敵はいないかもう一度確認をすると、柄池が愛川と大越と二人で話を始めていた。


「リュートはとっても強いんだぞ。彼氏にいたら危ないことなんてないからな、彼氏にいると……」


「おい、いつの間に親戚のおばちゃんになった? 親戚の言うようなセリフだな?」


 柄池が龍富を推すような言葉を二人にかけることから、龍富も言葉を突っ込まざるを得なかった。


「えー、説得力ある言葉だと思うんだけど、伊達に俺は長い間守ってもらってないぜ」


「いいから、さっさと連絡してくれ」


 酸っぱいものでも口に含んだ表情で柄池は喋り、それにやや強い口調で龍富は連絡の催促をする。

 その言葉に渋々ながら柄池は連絡を始めた。

 その光景を眺めていた大越はふと笑い始め、愛川もまた表情が和らいでもいたようだ。


「マッツ、柄池だ。そっちの方は大丈夫そうか?」


 柄池は連絡がつながったようで会話を始めた。


 相手は古賀松のようで


「え!? そんなことになって? とにかく向かうから」

次は御堂たちの状況へと移ります

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