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退魔士試験 15

大越視点

 そして大越の状況。

 大越と石動と白根、そして二匹の黒猫は赤田松と戦っていた。


「たあっ!」


 白根の声と同時の爪の攻撃。

 それは赤田松の腕に防がれてしまう。


「ちょこまかと……!」


 赤田松の振り払い攻撃は声が出ると同時に出て、白根はその攻撃を受けてしまう。

 ただ、受けたところは幸いにも悪くはなかったのか、ダメージ自体は小さいようであった。

 その証拠に受け身も手早かった。


 ただ、白根は黄菊松からのダメージが残っているのか、早さもだいぶ落ちていた。

 その攻防の傍らで、一匹の黒猫が赤田松の後ろから飛び掛かってきていた。


「てめえ……!」


 瞬時に赤田松は後ろを振り向き、猫の方を手で払った。

 黒猫は攻撃を受けて飛ばされる。


「にゃう!!」


「あぁ……」


 黒猫の悲鳴に大越は言葉を出す。

 猫自身の選択とは言え、見てはいられなかった。


「しかし、おまえらもすばしっこいだけで時間をかけていられねえからよ……」


 こん棒で地面を突き、赤田松は言葉の後に息を吸う。


「俺もこの手を使うか」


 そう言うと、赤田松は少しずつ服を含めて体を大きくさせていく。

 大越たちの攻撃は通じない以上、何も阻止の行動はできなかった。

 そして、赤田松は真上へと腕を伸ばす。


 大越から見て、赤田松の手は雲と重なるように見える。

 するとどうだ、赤田松は手を握るとそこから白いこん棒を手中に収める。

 まるで雲から武器を取り出したかのように。


「ただでさえ、こちらは手出しができない状況で大きくなったうえに両手に武器とは……」


 状況に対して石動はまずいと語る。

 先ほどまでの赤田松の大きさは石動の1.5倍であったが、今の大きさは石動の大きさの3倍に近かった。


「雲から取り出したみたいだけど、雲のように軽いってわけじゃないでしょ?」


「ほう……」


 白根の武器に対する追及に赤田松は白根の方へ見て言葉を出す。

 すると、赤田松は白根の方へと向かっていく。


「油断はダメですよ、白根。とっておきの武器かもしれませんから」


「大丈夫よ。相手は遅いわけだし、よく見ていれば」


 石動は警告をすると、問題ないと白根は話す。

 確かに今見ていても赤田松の速さが変わった様子がない。

 ならば、よく見ていれば


「え?」


 白根の言葉。

 その言葉の最中に赤田松はよそ見をしていた白根の前にいつの間にか迫っていた。

 さらに赤田松は棍棒を斜めからすでに振り下ろしてもいた。


「そがっ……?」


 白根は声と共に横薙ぎの白いこん棒攻撃を受けてしまう。

 その攻撃を受けて白根は横に飛ばされてしまった。


「そ、そんな……ここまでの速さでは?」


「なにもデカくなれば、愚鈍になるとは限らねんだよ」


 それを目にして、石動は二、三歩引いて驚きの声を出す。

 石動の言葉に対し、赤田松は石動を見て遅くなったわけでないと話す。


(もしかして、空気を取り入れて軽くなったとでもいうの? 風船のようにでもなったと?)


 よく分からない変化に対して、大越は心の中で理解をしようとしていた。

 ただし、脳内で考えられる現象をあてはめて形だけの理解ではあったが。

 その後すぐに赤田松は白いこん棒を掲げて、石動の元へ跳躍して行く。


「く、劣勢の上に劣勢を重ねられるとは……」


 その後の白いこん棒の攻撃を避けながらも石動は現状に苦言を出す。

 次はと大越の方を赤田松は見る。


「うわぁ!」


 跳躍して向かってきた赤田松に対して大越は言葉を出しつつ横に避けた。

 赤田松は白いこん棒で突きを出すが、それを大越は回避できたことになる。

 状況はかなりの不利。


 だが、大越は一つの仮定が生まれようとしていた。


(あいつの状況は変化があった。でも、もしかしたら変わってないところが……)


 その推測を大越は心の中で浮かべる。

 危ない賭けではあったが、大越がその仮定を確かなものにするしかなかった。


 その考えの中で、赤田松は今度は石動の方へと飛んで行った。

 当然のようにであろうか、白いこん棒を構えて。


「白根も心配な上に……く、今まで以上の防戦ですか……」


 そのこん棒の攻撃を石動は避けながらも苦言を出す。

 赤田松は着地をする瞬間が訪れた。


(今!)


 大越は機会が来たと心で呟く。

 危ないうえにもっと確実な手段もあったか? それを考えながらも今しかないと踏んで、赤田松の斜め後ろへと飛び掛かる。

 だが、赤田松はすぐに大越の方へと振り向いた。


 その顔には驚きがあった、そしてもう一つ。


「あぁ!!」


 赤田松はすぐさま白いこん棒を振るって大越に命中させた。

 痛みの声を出した大越は飛ばされて地面に伏す。


「大越さん……! 大丈夫ですか!?」


「悪いな、こっちの白いこん棒は軽いんだ。まあ威力は落ちるが、早く動ける分こっちが適任ではあるな」


 石動の心配言葉にその後から赤田松は白いこん棒を掲げて、その解説をする。

 大越は地面に伏せたが、思ったよりも白いこん棒が軽くダメージはそれほどでもない。


 だが、痛い目にあった分の賭けは成功と言えた。


(驚きの他にもあった……間違いなく、あれは焦りの表情……!)


 大越は心の中で成果を呟く。

 赤田松は防御力も高く、大越たちの攻めにもひるまず攻撃をするほどだ。

 しかし、あの時大越の攻めに焦っていたのであれば、大越の攻撃に脅威を感じたということ。


(顔の方はそれほど防御力がない。だから、あの時に焦りを見せた)


 劣勢の中に光る太陽の如き確信、それを大越は心に宿していた。

 大越はゆっくりと立ち上がる。


「へへへ、ごめんね。油断しちゃって……」


 その時、地に伏せていた白根から弱弱しい謝罪が発せられる。


「白根……! 大丈夫か?」


「動けそうにはないけど、まあ……」


 石動は赤田松の攻撃をかわしつつ白根に心配の声を出して、白根は動けないがと話す。

 命に別状はないと分かって大越も一安心をしていた。


「それとね、私はこのままだけど、言っておきたいことがあって」


 白根は言っておくことがあると、なんとか作った苦労の染みる笑顔で話す。

 すると、黒猫が赤田松の後ろから現れる。

 それどころか大越、石動、物影のそれぞれから黒猫が続々と現れてきたのだ。


「増援、やっと来てくれたってね」


 弧の黒猫の増援が来たと白根は伝える。

 その黒猫たちは赤田松の方へと向かい始めた。


「な、なんだこの猫は……!?」


 赤田松の驚きの声。

 赤田松の周りには黒猫、しかも無数のが付きまとい始める。


「まさか、あの時……空に声を響かせたときに増援要請を……?」


「そう、あの時に島全員の黒猫をここに集めたのよ」


 石動はあのときかと確認をすると、白根は石動の言葉に肯定の返事をする。

 白根が立ち上がったときに大きな声を出した、増援要請はその時にか。


「くそ! 猫と言ってもここまで数が多いと動きが……」


 その赤田松は声からも黒猫が邪魔と感じていて、猫を払おうと白いこん棒とすでに持っていたこん棒を振り回していた。

 黒猫たちはうまくかわしてはいたもの、二匹ほどの猫は白いこん棒の攻撃を受けて飛ばされてしまう。

 大越はこの光景を苦い目でしか見れなかったが、これからもない機会であると判断した。


 距離を開けていた石動と二人で話す機会であったのだ。


「あの石動さん、二人で話したいことが……」


「はい、なんでしょうか?」


 大越は石動に近寄って話を持ち掛けて、石動は言葉でも受け入れる。

 その後、二人は手早く話を進めた。

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